北朝鮮当局が、新型駆逐艦の建造中に死亡した労働者を「忠誠の見本」として大々的に宣伝し、住民に軍需支援事業(寄付)への参加を呼び掛けていることが分かった。住民の間では「生活も苦しいのに軍需ばかり優先している」と冷ややかな反応が広がっているという。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が北朝鮮内部の消息筋の話として報じた。

RFAによると、咸鏡北道の住民消息筋は、新型駆逐艦建造に携わっていた溶接工のチョ・グムヒョク氏の死亡事例が、今月に入ってから各機関や企業所、人民班(町内会)で開かれた住民会議で繰り返し紹介されていると証言した。

当局の説明では、チョ氏は朝鮮労働党員で、新型駆逐艦の重要部分を担当する熟練溶接工だった。昨年1月、心臓病を抱えながら作業中に意識を失い、高さ約2メートルから転落。病院に搬送されて意識を回復したものの、治療を拒否し、「総書記(金正恩氏)の指示を遂行するまでは現場を離れられない」「艦を完成させてから報告し、治療を受ける」と話して職場に復帰。その後も溶接作業を続けた末、過労による心停止で死亡したと宣伝されているという。

会議では、こうした「愛国的な党員」の献身があるからこそ党は強くなり、国家の繁栄が早まるとして、住民に軍需産業への支援を求めたとされる。一方で、死亡した日時や建造現場などの詳細は明らかにされず、氏名や死亡時の状況だけが紹介されたという。

北朝鮮の新型駆逐艦は、一番艦の「崔賢」が2025年4月25日に進水。二番艦の「姜健」は同年5月21日に進水式で横転して世界の注目を集めた。「姜健」は、責任者や党幹部が拘束される緊張状態の中で復旧作業が行われ、6月13日に改めて進水式が行われた。

平安北道の別の住民消息筋もRFAに対し、「最近は労働者の死を『国家防衛のための栄光ある献身』として美化し、軍需物資の生産支援を呼び掛ける宣伝が行われている」と証言。

「新型駆逐艦建造現場で亡くなった労働者を忠誠の象徴として掲げることは、むしろ住民の反発を招いている」と語った。

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