月々の返済額が25%も減り、手が届かなかった都心の億ションも買えるかもしれない…。ついに「マンション版・残価設定型住宅ローン」が登場しました。

しかし、車の残クレ感覚で安易に飛びつくのは極めて危険です。“手を出してはいけない人の特徴”と、マイホームで賢く資産形成するための条件を解説します。(スタイルアクト代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)



返済額が「4分の1」軽減
都心の1億円物件に手が届く?



 残価設定型住宅ローンは以前、戸建用について解説したことがある。(「住宅ローンの返済額を半分に減らせるケースも!?これから本格普及しそうな“おトクな制度”とは【専門家が解説】」)今回はマンション専用で使い勝手があるので、使いたい人も多いだろうが、手を出してはいけない人もいるので注意が必要だ。



 戸建用を知ったのは、国会答弁で出てきたからだった。調べてみると、20年程たった戸建にしか使えなかった。これではいかにも使いにくいし、購入時に検討することすらできない。その実態は、税務上の耐用年数が22年とされる木造住宅の価値が減価償却の考え方においてほぼゼロになってから、資産価値が落ちにくい土地価格を担保に借り換えするものだった。それであれば、リバースモーゲージなどの代替の方法もあるので食指が伸びる人は少ないだろう。



 資産価値が落ちにくい土地なので借り換えると返済期間を長く借りることができる。そうなると、月返済額は劇的に減るが、元本の減り方が遅くなるので、金利負担が重たくなる。結果的には、定年後の返済が苦しい人向けに、実質的なローンのリスケジュールに過ぎない。これは貸す側には都合がいいが、借りる側からすると、「人の足もとを見られている」気がしてくる。



 米国では住宅ローンで利息分だけ支払うローンがある。資産がインフレしているなら、それもありだと昔から思っていた。戸建と違い、マンションの資産価値は高く、インフレしやすく、残価が残りやすい。



 今回、住信SBIネット銀行がメガバンク・ネット銀行初のマンション版残価設定ローンを商品提供し始めた。このニーズが強いようなら、他の金融機関も参入してくるかもしれない。そうなると、競争が働き、条件はさらにこなれてくるかもしれない。



 これは「ハイブリッド型の住宅ローン」と称し、通常返済と期日一括返済を組み合わせた新たなローンスタイルとなる。ターゲット層は住み替え前提でマンションを購入する人で、売却時に全額ローン元本を返済してもらうことを前提にしている。売却するまでの一時的な借り入れならば、資産価値の高い物件は残価を設定してその分は元本を返済しなくていいという仕組みになっている。



 トヨタのアルファードが人気車種ゆえに、残価設定クレジット(以降、残クレ)で購入すると、月返済額が軽減される仕組みがあるが、今回はそれと似ている。それだけ、マンションの資産価値は車同様にリセールバリューが予想できるようになったということだ。



 ただし、車両の場合は条件つきで将来の残価が保証されているが、住宅ローンのケースは将来の売却価格を保証するものではなく、リセールバリューを借り手自身もより慎重に見極める必要がある点で注意が必要だ。



 その残価設定額は、担保価値の半額とされている。担保評価額の50%にあたる金額が期日一括返済部分となり、毎月元本返済する対象は残りの半額分になる。金利は元本全額にかかるので、返済はおおよそ1/4ほど軽減される。1億円の借入を35年返済なら、月28万9000円の返済が21万5000円になるので7万4000円下がる。



毎月の返済は減るけれど…
「利息400万増」のカラクリ



こうなると、年収に対する月返済額の返済比率が下がるので、限界の返済比率まで購入価格を上げることが計算上可能になる。そうなると、通常ローンより約34%高い物件が買える計算になる。



 購入価格が上がると資産性の高い物件を買えるようになる。都心寄りで駅近にある物件やタワーや大規模物件も買いやすくなる。このことは、銀行側も熟知していて、残価設定ローンの取扱エリアは東京23区、横浜市、川崎市、大阪市に限定されている。つまり、値下がりしにくい資産性がある場所ということになる。



 都区部のマンション価格の平均下落率は1.2%で、横浜市は2.2%となる。これに対して、このローンの元本返済は年1.2%ほどしか減らない。つまり、実際は都区部の中でも相対的に資産性があるところでしか使えず、横浜市では横浜駅からみなとみらい線沿線などの一部のエリアしか使えないと思われる。

川崎市なら、武蔵小杉や川崎駅など一部に限定されるだろう。



 なぜなら、上記のエリア別の下落率は相場変動が無い場合の数字であり、相場価格が下がると上記以上に売却価格が下がることになる。そうなると、売却しても残債を全額返済できない可能性が出てくる。こう考えると、OKエリアは意外と狭く、NGエリアは広域に存在すると想定される。



 また、対象物件は担保評価額1億円以上の新築・中古マンションとされているので、投資用のワンルームなどは対象外になる。1億円以上となると、立地としてはかなりいいところになる。



 このため、対象者も年収1000万円以上の人に限定されている。信用が高くないと使えないので、上場企業の会社員などは絶好のターゲットになるだろう。



 とはいえ、残価設定ローンはマンションの資産性に着目し、高額になったマンションの購入者にはありがたい商品であることは間違いない。特に資産性に着目して資産インフレの波に乗りたい人にとっては格好の住宅ローンになるだろう。この住宅ローンに通る物件は資産性があると銀行も認識しているということになる。



 しかし、この住宅ローンはいいことばかりではない。

金利上乗せ型となっており、通常のローンより0.35%金利が高い。通常金利が1.15%なら、1.5%となる。金利が高く、元本の返済が進まない分、金利総額が高くなる。では、この金利で実際のローン返済の試算をしてみて、どの程度の負担となるか見てみよう



 この残価設定ローンで1億円を借入したとしよう。



 通常の35年ローンで金利が1.15%で借りた場合を(1)、残価設定ローンを金利1.5%で借りた場合を(2)とする。



 10年後の利息返済額は、(1)より(2)のほうが約400万円増額となる。借入額が1億円なので、10年で4%の差となり、年0.4%相当の差となる。それだけ支払いが増えても、それ以上の資産性がある(値上がりが期待できる)物件を買えばいいことになる。



 年間で0.4%の差というのは、もっと都心寄りで物件を購入すればこの金利負担以上の資産価値を生み出すことができる。



 具体的には、練馬区ではなく豊島区に住むとか、江戸川区ではなく江東区に住むとか、足立区ではなく台東区に住むことで、それは実現できるのだ。筆者主宰のマンション格付けサイト「住まいサーフィン」では新築・中古物件の資産価値を数値化しているので、容易に判断できると思う。



マンション版の残クレ
手を出してはいけない人の特徴



 ちなみに、この残価設定ローンを35年間で返済すると、金利負担は1900万円増額されるので、得策ではないことが分かる。

逆に、10年と言わず5年で住み替えるなら、金利負担は188万円の増額で済む。



 マイホームの値上がり益に対する税金は1人3000万円まで無税であるし、それを超えても6年目からは税率が約半分に下がる。これらを勘案すると、5~10年で住み替えを考えている人にはおススメのローンということになるが、そうでない人は単に金利負担が重くなるだけなので手を出さないほうがいいと考える。



 最後にまとめておこう。残価設定ローンのメリットは、返済額が25%減少し、毎月のキャッシュフローは楽になる。その楽になった分だけ、都心寄りに資産性のあるマンションを買えることになる。



 デメリットは金利の高さだが、短期で売却する人には金利負担が少ないのでそこまで不利にはならない。このローンを利用するなら、マンションの資産価値を正確に把握する必要があろう。適正価格で買うことと毎年何%下落するかを知ることでほぼ事足りる。



 そうした学習をした人は、日々の生活を我慢することなく、資産形成することができるようになるのだ。自宅で資産形成を目指すなら、高額化したマンションを購入するこれまでにない手段として、残価設定ローンを覚えておいたほうがいいだろう。

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