「友達がいない」と悩む46歳の筆者は、孤独な老後を避けるヒントを探そうと、コミケ会場で中高年の男性コスプレイヤーたちを取材した。趣味を通じて仲間を増やした人がいる一方、コスプレ仲間がいなくても寂しくないという人もいた。

友達がいないことと、孤独であることは同じなのか。48歳の男性コスプレイヤーが語った「一番孤独を感じた瞬間」とは。(ライター 徳重龍徳)



飲みにも遊びにも誘われない…
中年の孤独をどう克服するか?



「友達がいない」



 現在46歳。フリーライターとして働く私の目下の悩みだ。仕事は取材以外は自宅で行っており、気づけば人間よりChatGPTとコミュニケーションする時間の方が長くなってしまった。



 きょうの人とのまともな会話は、コンビニで「箸は大丈夫です」と断った一回だけ。運良く家庭は持てたが、家族以外とはもう何日もまともに話していない。



 以前は新聞社、ウェブメディア、テレビ局で会社員として働いていた。同僚や後輩がいて、雑談があって、飲み会があった。けれど会社を辞めた途端、それらは「関係」ではなく「環境」だったのだと気づいた。離職と同時に、驚くほどあっさり同僚との関係は切れた。



 最後に人から飲みや遊びに誘われたのはいつだっただろうか。思い出せないほどだ。

パソコン作業をしていると、年老いた自分が孤独にたたずむ姿が頭に浮かび怖くなった。



 私はいま、人生における「友人」という貯蓄が残高ゼロになりかけている。46歳をすぎて友達を作るなんて手遅れかもしれない。それでも孤独な老後を避けるには、人間関係の“積み立て”を始めるしかない。



 私は未来のために友人を増やすことを「心のNISA」と呼んでいる。お金と同じように人間関係も動けるうちからコツコツ積み立てていかなければ、後からでは取り返しがつかない。



 では、どうすれば中年になってからでも友人を作れるのか。



 よく同じ趣味だと友人になりやすいと言われる。本当に趣味は中年の孤独を救うのだろうか。実際に趣味に生きる人たちに話を聞いてみたいと思った。



 そこで8月15日、16日に東京ビッグサイトで開催された「コミックマーケット108」で、コスプレを楽しむ中高年男性たちを取材した。



コミケで出会った
孤独を感じないレイヤーたち



 最初に話を聞いたのは、47歳の製造業勤務のがちさん。コスプレを始めたのは遅く、39歳の頃で『シティーハンター』の映画イベントをきっかけに海坊主のコスプレをしたところ、写真を撮られる楽しさにハマったという。



48歳のコスプレイヤーが“一番孤独を感じた瞬間”がド正論すぎてぐうの音も出ない
がちさん1 撮影=筆者


 がちさんはコスプレを始めて一番大きかったことに友人が増えたことを挙げる。



「同じコスプレイベントで何度も会って顔見知りになったり、知り合った人の友達を紹介してもらったり。気づいたらコスプレ仲間がどんどん増えていました。イベントが終わったあとに一緒にご飯を食べたり、飲みに行ったりすることもあります。同じ趣味があるので話も合いますし、会社や地元とはまた別の人間関係ができました」



「マンダロリアン」のコスプレをしたヴォルフガング土方さんは17歳頃から約23年間コスプレを続けている。サバイバルゲームも趣味で、友人の多くはそうした趣味の場で知り合った人たちだ。



48歳のコスプレイヤーが“一番孤独を感じた瞬間”がド正論すぎてぐうの音も出ない
ヴォルフガング土方さん 撮影=筆者


「僕は趣味が同じだったら、年齢はあまり関係ないタイプなんです。干支が一回り下の友達もいます。それこそ一昨日も、友達が仕事を辞めるというので、『じゃあみんなで行こう』となって、コスプレやサバゲーの仲間で上野まで駆けつけて飲みましたし、今の妻とは趣味の場で知り合いました」



 ヴォルフガング土方さんは中年の孤独を避けるために「誰かと楽しめるもの」を持つことが大事だと話す。



「誰かと一緒に遊べる楽しみを持つことは大事だと思います。もちろん、人と関わること自体が苦痛な人もいるので、すべての人に勧めるわけではありません。でも、電子の世界でも現実の世界でも、誰かと一緒に何かを楽しめれば、いずれそこから縁ができるんじゃないかなと思います」



 これといった趣味はなく、休日も一人サウナに行っている私にとってはなんとも耳が痛い話だ。



「龍が如く」桐生一馬のコスプレをした39歳のウルトラFさんはコスプレ歴は約1年3カ月ほどと短いが、コスプレを通じて友人がどんどん増えている。



48歳のコスプレイヤーが“一番孤独を感じた瞬間”がド正論すぎてぐうの音も出ない
ウルトラFさん 撮影=筆者


「孤独はあまり感じないですね。特にコスプレを始めてからは仲間や知り合いがどんどん増えました。同年代だけでなく、若い友達も増えましたし、『若い子たちに負けないように頑張ろう』『もう少し若さを保とう』と思うようになりました」



 ウルトラFさんは自分で動くことが中年の孤独を避けるには大事ではないかと語る。



「年齢を重ねると、人とのつながりってどんどん減っていくと思うんです。だから、自分から積極的につながりを作っていくことが、これから孤独にならないための予防策になるのかなと思っています」



 ただ、取材を続けるうちに、私のように「中年の孤独」を感じていない人にも出会った。



48歳のコスプレイヤーが“一番孤独を感じた瞬間”がド正論すぎてぐうの音も出ない
Kazumiさん 撮影=筆者


「ゴールデンカムイ」土方歳三のコスプレをしていたKazumiさんは、今年還暦を迎え、コスプレ歴30年以上。コスプレを通じて友達はたくさんできたという一方で、こう話す。



「僕は一人が好きなんです。一人でいるほうが楽なので、孤独を感じることはありません。そもそも友達を作るためにコスプレをしているわけではない。楽しいから続けていたら、結果的に友達ができたということです。

コスプレについても衣装や小道具を自分で作るのが楽しいからやっているし、だから30年以上も続けられるんです」



48歳、男性コスプレイヤーが
“一番孤独を感じた”瞬間



 さらに「千と千尋の神隠し」のカオナシに扮した48歳の田中さん(仮名)は、コスプレ仲間と呼べる友達は特にいないと話す。それでも孤独は感じていない。



「コスプレを始めたのは8年前。コミックマーケットを歩いていたら、コスプレをしている人がたくさんいて、自分にもできそうなものはないかなと思って探し始めたのがきっかけです。コスプレ仲間と呼べるような友達は特にいませんが、寂しいとは感じません。イベントに参加して、写真を撮ってもらったりすること自体が楽しいんです」



48歳のコスプレイヤーが“一番孤独を感じた瞬間”がド正論すぎてぐうの音も出ない
田中さん(仮) 撮影=筆者


 田中さん(仮)の言葉で強く刺さったものがある。



「一時期、何をやっていいのかわからないときがあって、そのときが一番孤独を感じました。でもコスプレをやるならどうすればいいんだろうと調べ始めたら、だんだん楽しくなってきたんです」



 コミケでコスプレイヤーさんたちの話を聞いて感じたのは、趣味を通じると年齢問わず友人ができやすいこと。そして、誰かと友人になることだけが、中年の孤独から抜け出す方法ではないということだった。



 コミケからの帰り道、戦利品を持って駅に向かう参加者の顔には充実した表情が浮かんでいた。その顔を横目に「もしかすると私に足りないのは、友達だけではなく、仕事以外に夢中になれる何かなのかもしれない」と考えていた。

編集部おすすめ