中学時代からの友情が、ガラガラと音を立てて壊れてゆくーー。現在放送中のドラマ『ラストノート』(フジテレビ系)は、年の差恋愛を描いた大人の純愛ストーリーだが、見どころはそれだけではない。
作中には心をざわつかせる人間関係が数多く描かれており、中でもひときわ不穏な空気を漂わせているのが、葵と優子の関係だ。

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主人公の一瀬葵(内田有紀)は、香料メーカーで働く49歳女性。絵に描いたような「自立した大人の女性」の生活を送りながら、その裏では結婚や離婚、仕事への挫折など思い通りにならない出来事を幾度となく経験してきた。中でも調香師を夢見てきた葵にとって、花の香りだけが分からなくなる"嗅覚障害"に見舞われたことは、人生を大きく左右する出来事だったに違いない。

そんな彼女と中学時代から友情を育んできたのが、親友の佐川優子(坂井真紀)だった。優子もまた長年父親の介護に追われ、多くを諦めてきたひとり。それでもふたりが苦しい時期を乗り越えられたのは、互いに支え合ってきたからなのだろう。

だが彼女たちの友情は、優子がロマンス詐欺(デート商法)に引っかかっている疑惑が浮上したことをきっかけに、どこか歪なものとして映り始める。

優子はマッチングアプリで知り合った年下男性から160万円の絵画を購入させられており、傍から見れば騙されている可能性が極めて高い状況だった。葵もその危うさに気付いていたようだが、強く問いただすことはない。恋人との"これから"に胸を躍らせる優子を、ただ心配そうな表情で見つめるだけだった。

長年結婚を夢見てきた優子が、ようやく幸せへの一歩を踏み出した瞬間に「それ、騙されてない?」と水を差すことができなかったのかもしれない。
その後のモノローグでは、あの場で何も言えなかった理由について「優子が眩しすぎて……」と語っていた。

だからといって葵が何もしなかったわけではない。優子からお金をだまし取っていた男ーー樋口澄晴(寺西拓人)に接近し、詐欺の証拠を掴もうとする。ただ、その企みは途中でバレてしまい、結局奪われたお金を取り戻せなかった。そこで彼女は、被害額と同じ160万円を自ら用意し、優子に手渡す。そのうえで「(澄晴が)優子に返してほしいって。反省してた」と、事実とは異なる説明をした。

これ以上優子を傷つけまいとする葵の優しさから出た行動ということは理解できるが、いささか行きすぎではないだろうか。少なくとも、まずは事実をすべて打ち明け、優子自身が現実と向き合う時間を与えるべきだった。金銭的な助けを差し伸べるのは、その後でも遅くなかったはずである。

そう考えると、葵の優しさにはどこか拭いきれない危うさが漂う。優子を「親友」として対等に見ているというよりも、守ってあげなければならない存在として扱っているようにも映るのだ。
それは友情というより、時に憐れみに近い感情なのではないだろうかーー。

葵の言動のそこかしこに見え隠れする違和感の正体は、まさにそこにあるのかもしれない。

もっとも、葵にとって優子が大切な存在であることは間違いない。では、優子にとっての葵はどうなのだろうか。付き合いこそ長いものの、ふたりの生き方や抱いてきた夢はまるで対照的。葵は香料メーカーで働き、綺麗なマンションで一人暮らしを謳歌している。160万円もの大金を立て替えられるあたり、経済面にもある程度の余裕がありそうだ。

一方の優子は、クリーニング店のパートだけでは生活が厳しく、スナックのバイトを掛け持ち。その暮らしぶりから見ても、葵とは大きく異なる環境に身を置いていることがうかがえる。

また葵には「調香師になる」という明確な夢があるが、優子は結婚以外にやりたいことがない。親の介護に長く時間を費やしたことで、いざ自分の時間ができても「やるべきこともやりたいことも何もなかった」と語っている。

もちろん葵の人生も決して平坦ではないが、それでも優子の目には仕事や夢と向き合い、結婚も経験してきた親友の姿が「自分にはないものを持つ人」と映っていたはず。
ましてや優子は学生時代、クラスのマドンナ的存在としてもてはやされていた過去がある。それだけに、現在の自分と葵の姿を比べる中で、羨望や劣等感、あるいは嫉妬にも似た感情を抱いていたとしても不思議ではないだろう。

そうした満たされなさが影響しているのか、近頃の優子は恋愛にのめり込み、次第に歯止めが利かなくなっている。澄晴のことをいつまでも諦めきれず、自宅にまで押しかけて「澄晴くんが好き!」と告白。さらに「好きな人がいる」と聞けば、今度は澄晴の友人の職場を訪ね、「教えてくれない? 澄晴くんの好きな人」と悪びれる様子もなく尋ねていた。回を追うごとにその行動はエスカレートし、ネット上では「優子劇場」と呼ばれるほど大きな話題になっている。

そんな優子の変化を、葵はまだ知らない。一方で葵もまた、澄晴と会い続けていることを優子に打ち明けていない。しかし、先日放送された第4話の終盤では、ついに優子が、葵と澄晴がいまだに連絡を取り合っている事実を知ることになる。

果たして、ふたりの関係はこのまま修復不可能なところまで壊れてしまうのか。恋の行方以上に、葵と優子の関係がどう着地するのか気になって仕方がない。

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