アメリカの高校では、アメリカン・フットボールは秋、バスケットボールは冬、野球は春と、スポーツごとに活動する季節が決まっています。さらに、部員を代表・2軍・1年生チームに分け、入部にもテストを設ける学校が少なくありません。
大学入試とも深く結びつくアメリカの部活事情を、『世界の一流は「子ども」に何を教えているのか』(冷泉彰彦/クロスメディア・パブリッシング)から抜粋してご紹介します。
○アメリカの部活事情はこうなっている
アメリカの大学受験の合否を分ける基準として、スポーツ活動の質・量というのは大きな要素になります。
このスポーツというのは、1年や2年で成果が出るものではありません。では、アメリカの中学生や高校生は、どのようにしてスポーツ活動を積み上げていくのでしょうか?
それをお話しする前に、大学受験におけるスポーツ活動の評価基準を確認しておくことにします。まず、国際大会、あるいは国内の全国大会、その前段階の州大会といったレベルで相当に上位の成績であれば、高く評価されます。個人競技の場合もそうですが、団体競技の場合でも同じです。そのために、何に属するのがいいかというと、学校外の「クラブ」というのでも構わないのですが、多くの高校生にとっては高校の部活の運動部で活躍するということになります。
この運動部ですが、2つ大きな特徴があります。
まず、アメリカの高校の場合は、1学年を3つに分けて、「秋のスポーツ」「冬のスポーツ」「春のスポーツ」という3シーズン制を取っています。そして、それぞれのスポーツは、基本的にこの中の1シーズンしかないということです。
そのシーズンとスポーツの関係ですが、全米で共通なのは、たとえば高校の花形スポーツの場合であれば、「アメリカン・フットボールは秋」「バスケットボールは冬」「野球は春」と決まっています。
アメリカでフットボールと野球の「かけ持ち選手」が多いのはこのためです。
もうひとつの特徴は、高校の中に段階別のチームがあるということです。
たとえばフットボールや野球の場合だと、高校の代表チームが1つあって、そのほかの部員は補欠というシステムにはなっていません。多くの場合は、チームが3段階に分かれているのです。
いちばん強い代表チームのことを「ヴァーシティ」と呼び、その次の2年生以上の2軍が「JV(ジュニア・ヴァーシティ)」、そしてそのほかに、1年生だけで編成された「フレッシュマン・チーム」というのがあります。そのような3段階構成になっているのが普通です。
この中で「ヴァーシティ」に入っているというのは、高校の中でも「偉い」ということになるし、実際問題として大学受験の際の評価ポイントは高くなります。コモンアップ(全国統一の大学出願サイト)の中にも、高校でのスポーツ履歴を入力する場所に、「ヴァーシティ」であるか「JV」であるかを記入する欄があります。
では、その「ヴァーシティ」に入るにはどうしたらいいのか? これはスポーツの種類にもよりますし、地域特性もありますが、通常は入部テストに合格するか、フレッシュマンのチーム、あるいはJVで実績を上げるしかありません。そのためには相当に学年が低いうちから、そのスポーツに親しむことが必要になってきます。
野球の場合であれば、5歳時の「ティーボール」に始まって、リトルリーグを経て中学の野球部に入っていくことになります。アメリカンフットボールやサッカーも同様ですし、同じくアメリカの花形スポーツであるバスケットボールやアイスホッケーも同様です。
小学生のレベルまでは地域のチームに属して練習し、中学になれば学校の部活が始まるので、そこに入るという流れになります。テニスやゴルフなどの個人競技も同様です。
もちろん、その中でも特に優秀な選手は、スポーツ奨学生の枠を狙うとか、その延長で大学スポーツからプロという道も視野に入れていくということになるわけです。
ですが、多くの場合は、あくまでスポーツを真剣にやるのは高校の部活までであり、その高校の部活で活躍するために、幼稚園から小学校をスタート地点として、野球、サッカー、フットボール、ラクロス、バスケットボールなどの種目で鍛えていくことになるのです。
ちなみに、あるスポーツで頑張ってきたものの、どうしても「ヴァーシティ」のレベルには到達できなかった場合はどうしたらいいのでしょう?
その場合は、「JV」レベルであっても、そしてシーズンごとにスポーツの種目を変えながら、とにかく各シーズンずっと「空白期間」のないように、部活に参加し続けるのがよいとされています。
そうは言っても、テニスや水泳などは施設のキャパシティがあるので、部員の定員には限りがあるし、野球やバスケなどのチームスポーツの場合は、あまり補欠を多く取るわけにもいきません。
また、野球やアイスホッケーなどのスポーツは、ある程度の素養がないと、いきなりプレーするというのは危険でもあります。
そうした理由から、各スポーツには、仮に「JV」のレベルでも「入部テスト」があり、そこで合格しないとそもそも入部することができないのです。
ただ、学校にもよりますが、陸上部というのは、少し特別な位置づけになっています。陸上のスペシャリストを養成するという活動以外に、多くの高校生に基礎的な運動の機会を与えるという趣旨で、「JVに関してはフリーパスで入部を許可する」のです。
また陸上部の場合は、季節ごとに「秋はクロスカントリー」「冬はインドアトラック競技」「春はアウトドアトラック競技」と名称も活動も変わるものの、通年で活動しているケースが多々あります。ですから、どうしても特定のスポーツで活躍できない場合は、陸上部に4年間在籍してコツコツと体力づくりとタイムの向上に励むというのは、大学から見てもきちんと評価されるのです。
アメリカの大学生や社会人の間に、ジョギング文化というのが深く根を下ろしているのには、この「開かれた陸上部」の存在があるのかもしれません。
○『世界の一流は「子ども」に何を教えているのか』(冷泉彰彦/クロスメディア・パブリッシング)
AIが初級の知的労働を次々と置き換えていき、グローバル化がさらに進んでいく時代。一握りの天才だけでなく、「第2グループ」と呼ぶべき、自己管理力と実行力を備えた若者こそが今後ますます求められることになります。では、そうした人を育てるために、親や学校、周りの大人たちは、子どもに何を伝えればよいのでしょうか? 本書の著者は、米国東部のニュージャージー州プリンストンに30年以上暮らし、作家・ジャーナリストとして活動しつつ、現地で3人の子育てを経験。その傍ら、プリンストン日本語学校高等部で、数多くの日本人・日系人の高校生を指導し、アメリカの名門大学に送り出してきた教育者でもあります。そうした経験なども基に、アメリカの大学が思い描く「期待される18歳の人物像」を出発点として、幼児期から思春期に至るまで、年齢に応じてどんなメッセージを子どもに伝えるべきかを具体的にお話しします。
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