レビュー

「今の仕事に大きな不満があるわけではない。でも、毎日幸せに働けているかと聞かれると、自信を持って『はい』とは答えられない」。

そんな人が本書を読めば、自分の中にある漠然とした違和感の正体が見えてくるだろう。
著者の前野隆司氏は、幸福学研究の第一人者である。本書では、その豊富な知見をもとに「幸せに働くとはどういうことか」を科学的に探究している。
特に興味深かったのは、「幸せであること」と「不幸せでないこと」は別物だという指摘である。私たちはつい、長時間労働やハラスメントが減れば幸せに働けると考えがちだ。しかし本書によれば、不幸せの原因を取り除くことと、幸せを生み出すことはまったく別の話だという。4634人を対象に行われた調査からは、「不幸せではないが、幸せでもない」という人が少なくないことが明らかになった。
本書ではその前提のもと、働く幸せを構成する7つの因子と、働く不幸せを構成する7つの因子が提示されている。読み進めるうちに、自分でも気づいていなかった働きづらさや満たされなさが言語化されていることに驚くはずだ。
そして本書のメッセージは、個人の幸福にとどまらない。「自分の幸せよりも組織の利益を優先するべきだ」という価値観が根強く残る日本社会に対し、本書は真逆の視点を提示する。個人が幸せに働こうとすることは、決して利己的な振る舞いではない。
むしろ、その幸せは周囲に伝わり、組織の活力や生産性を高め、社会全体にとっても望ましい結果をもたらすのだ。
「なんとなく満たされない」と感じている人に、ぜひ一読を勧めたい。本書を読み終える頃には、自分がより幸せに働くために何をすればいいのか、そのヒントが見つかるはずである。

本書の要点

・幸せに働くためには、不幸せの解消と幸せの創出の両方が必要だ。
・働く幸せは、成長実感や他者との良好な関係、自分らしく働ける環境などによって高まる。一方、不幸せは理不尽な扱いや過重労働、孤立感などによって生まれる。
・自分の幸せを追求することは利己的な振る舞いではない。むしろ長い目で見れば、最も利他的な選択とも言える。



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