レビュー

遅ればせながら外山滋比古氏の本を初めて読んだ要約者は、『新版 空気の教育』で展開される「外山節」に驚いた。初版の刊行年を見ると1983年(2013年に再編集)とある。

時代背景の違いを意識しながら、いわば「古典」とも呼べる本書を、価値観がやや異なる現代にどう読めばいいのか。はじめは手探りだった。それがいつしか引き込まれ、こどもへの接し方にまで影響するのだから、恐るべし外山節である。
この現代性の理由は何だろうと、ロングセラー『思考の整理学』にも手を伸ばすと、同書の単行本も1983年初版と知って膝を打った。二冊には共通する著者の問題意識があった。つまり、一部の能力で人間をしのぐコンピューターが出現するなか、コンピューターにない能力を人間はどう伸ばすかという問いだ。
同じことはAIが浸透する現代にも問われている。『新版 空気の教育』の中には、現代ではそのまま受け入れにくい部分もあるかもしれない。それでも全体としてじわりと心に響いてくるのは、時代環境に左右されない、人間の根源的な部分に根づいた教えだからだろう。
ふと外山氏が存命なら、いまも同じことを書けただろうかと考える。彼ならば現在の「空気」に忖度せず、きっと同じことを書いたのではないか。そう思う程度には、にわかの外山節ファンになってしまっている。

本書の要点

・木の葉が寒暖差によって美しく色づき、ブドウが糖分を蓄えるように、人も若いうちの苦労や人生の浮き沈みを通じて成長し、深みを増す。
・ことばは歴史的に人間教育の基礎とされてきた。身近な大人が使うことばは、こどもの人格形成にも大きな影響を与える。
・こどもを真に育てるのは、家風や校風といった「空気」である。それは「形式×繰り返し×時間」によってつくられる根源的な教育となる。



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