【再発見 ちょうど10年前のテレビ】#12


 ちょうど10年前の2016年7月、深夜に放送されていたのが、ドラマ「OLですが、キャバ嬢はじめました」(毎日放送TBS系)だ。


 主人公の小泉菜奈子(倉持明日香)は25歳。

中規模の広告代理店に勤務するOLだ。彼氏はいるが、貯金はない。高級マンションに住んでいるとか、高級ブランド品を買いあさるといった様子もないのに、料金滞納で電気を止められるほどの貧困状態に陥っている。


 そんな中、ふと目にしたのが「時給4000円以上」というキャバクラの求人広告だ。会社帰りの3時間でも結構な副収入になる。菜奈子は未知なる世界にトライしてみることにした。


 キャバクラが舞台のドラマといえば、この作品以前にも「嬢王」シリーズ(テレビ東京系)や「黒服物語」(テレビ朝日系)などがあった。ヒロインの多くはナンバーワンのキャバ嬢を目指したものだが、このドラマは「OLの副業」というところがミソだ。


 菜奈子はあくまでも「なんちゃってキャバ嬢」であり、ここには女同士のどろどろの対決や深刻な恋愛問題もない。いわば気楽に見られるキャバ嬢物語である。元AKB48の倉持は、これがドラマ初主演。キャバ嬢としては「ダサくて、イモっぽい」菜奈子がやけに似合っていた。


 彼女が働きだした「クラブ プロポーション」には、「神7」と呼ばれるキャバ嬢たちがいる。売り上げトップに君臨するのは姫乃。クールな美人だが、時々見せる笑顔が客にはたまらない。演じていたのは元「モーニング娘。」の石川梨華だ。他には入店して1週間で「神7」入りしたツワモノで、シングルマザーのカズミも見る側の目を引く。筧美和子、堂々のハマリ役だった。


 視聴者は、新人である菜奈子の“学び”を通じて、キャバクラの世界を垣間見ることができる。ママがいないことをはじめ、指名や給料のシステムもいわゆるクラブとは大違いだ。たとえば、ヘルプに付いた女の子は客に名刺を渡すなどの営業行為は禁止されている。また、客との親密な会話はキャバ嬢の武器だが、タブーともいうべき話題が3つ。「政治」「野球」そして「宗教」だ。意見や信条の違い、微妙なファン心理などにより、場の雰囲気が悪くなることが多いからだ。


 夜の仕事を通じて、菜奈子も少しずつ変化していく。元々は金だけが目的だったが、一人前のキャバ嬢になる=女に磨きをかけることだと気づく。以前より愛想がよくなり、周囲への気配りも自然にできるようになった。メンタル含め、社会で生きる強さが身についてきたようだ。昼はOL、夜はキャバ嬢。全4話が終わる頃には、菜奈子が目指す“大人の女性”への入り口に立っていた。


 あれから10年。倉持の新たな主演ドラマを見ることはなかった。だが、リラックスできるB級感が魅力の「キャバ嬢ドラマ」として、今も記憶に残る一本となった。


(碓井広義/メディア文化評論家)


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