【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#114


『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』(1968年11月22日発売)⑭


  ◇  ◇  ◇


■『セクシー・セディ』


 この連載では詳しく触れてこなかったが、『ホワイト・アルバム』の録音前、ビートルズの4人はインドに行っている。


 今でいう「自分探し」のような目的で、インドにいる超越瞑想運動の創始者=マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー(我々世代は「マハリシ・ヨギ」として記憶している)に会いに行ったのだ。


 ジョンが、そのマハリシを痛烈に批判したのがこの曲だ。「あんたはみんなを騙したんだよ」。歌詞の中では具体的に書かれていないが、この曲をきっかけに「マハリシ=ビートルズを騙した女狂いのペテン師」というイメージが広がったのである。


 私自身もそう信じて生きてきたのだが、4年前にNHK・BS1で放送された『ビートルズとインド』を見て驚いた。まったくまっとうな人物で、先のイメージとは遠いのだ。


 ちょっと調べたら、先のイメージは、ジョンがインドへ傾倒するのを食い止めるために、ジョンの側近がついた嘘が発端となったものだというではないか。


 とても驚いた。そして世界的な風評被害に遭ったマハリシに大いに同情した。


 この曲に関しては、以上の話が重要なのであって、音楽的には、何ということはない。


■『クライ・ベイビー・クライ』


 こちらもジョンの曲。


 不思議な曲である。まず歌詞がよく分からない。

イギリスの童謡が基になっているらしいが、そんなもの、よく知らないから困ってしまう。


 ただサウンド的には人懐っこい。構成はシンプルだし、日本人が好きな半音下降進行(クリシェ、視聴リンク再生時間「0:11~0:17」他)が使われるなど、コード進行ものみ込みやすい。


 ギョッとするのは「2:34」から突然、ポールの歌う、まったく別の曲が現れることだ。【オリジナル記事で試聴する


 何となく不気味な感じのする曲で、その不気味さをイントロとして、あの忌まわしき(と言ってしまおう)次曲の『レボリューション9』が始まるのだ。


 最後に「クライ・ベイビー・クライごっこ」を紹介したい。「A・B・A」構造となっているフレーズをひたすら言っていくという遊びだ。


 西城秀樹『ブルースカイブルー』(78年)や、映画『ラン・ローラ・ラン』(98年)、芸人の「バイク川崎バイク」などが当てはまるが、阪神ファンが繰り出したコレには大いに笑った──「遠山・葛西・遠山」。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。

日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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