【2026年上半期 ネット炎上事件簿】#4


 前回(第3回)のような「警察事案」は非難も称賛も偏りやすいだけに、訴えたいことがあったとしても、慎重さが欠かせない。


 一方で、事前に前置きをして慎重に行動したにもかかわらず、炎上してしまったケースもあった。


 2月、キンタロー。は自らも「ペアで社交ダンサーだった」ことから「自分の事のように嬉しかった」と、ミラノ・コルティナ五輪フィギュアスケートペアで金メダルを獲得した「りくりゅう」に触れた。


「魔法のように足並みバッチリ」と競技ダンス経験者らしく演技への賛辞を贈り、そのうえで「私も祝福をさせてください心からの敬意をこめまして」と、感動の場面を再現するものまねを披露した画像を公開した。炎上するのを気にしてか、かなり慎重に前置きをしていたことがうかがえる。


 この投稿には、翌日までに1万を超えるいいね!が寄せられた。だが、前置きをカットして画像だけが切り取られて拡散し、同じくらい非難の声も寄せられてしまう。


 このさなか、キンタロー。は「お願いです」として、「温かい目で見て」「絶対に叩かないで」とSNSに書き込み、「私も人の子です ちゃんと傷つきます」と吐露した。ところが、この「言い訳」が余計に反発を生んだ。先の前置きも予防線だったと受け取られ、かえって狡猾だと思われたようだ。


「だって今じゃないよね」「リスペクトがない」「見当違いだ」といった批判が、「ビミョーに似ている」「この微妙さが持ち味」など賛同の声を上回り、好意的に報じたネット記事さえ燃料となって炎上が続いた。芸、笑いではなく、バカにしている、哄笑していると受け止められたわけだ。


 そもそも、ものまねにデフォルメは付きもので、その微妙さ加減との隙間に笑いや共感が生まれる。親しみや距離感の近さがあるからこそ、デフォルメしたものまねをしたという経験は、だれしもがあるのではないか。


 勝手な基準で、気に入らない、そぐわない、不適切と断じ排除するというのは、SNSはじめネット上でも問題視されるキャンセルカルチャーそのものだ。


 炎上によくあるように、ただ暇つぶしがしたいと思っていたら、たまたま拡散されてきたキンタロー。の画像が目に留まり、賛否の多い方に同調しただけのユーザーが大半なのかもしれない。しかし、誰かを叩いて留飲が下がった気がしても、たいていは束の間のことでしかない。


 はなからいじめたりバカにしようとしてする猿まねは慎むべきだ。しかし、芸を見せて笑って一緒に祝ってもらおうとしているのを、深読みや曲解までして叩くのは、お互いの精神衛生上も避けるが吉だろう。


(井上トシユキ/ITジャーナリスト)


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