2026年7月21日、インドネシア西ジャワ州バンドン地方裁判所は、同国からシンガポールへ乳幼児を不正に売買・密輸していた人身売買組織の被告19人全員に対し、人身取引防止法違反などの罪で禁錮3年4か月から7年の実刑判決を言い渡した。シンガポール主要紙「ザ・ストレイツ・タイムズ」や「チャンネル・ニュース・アジア(CNA)」の報道によれば、この裁判は2022年から2025年にかけて少なくとも34人の赤ちゃんが犠牲となった大規模な国際密売事件を対象としたものだ。


その他の写真:イメージ

 判決では、事件の主犯格とされる70歳の女に最高刑となる禁錮7年が言い渡されたほか、乳幼児の勧誘役や身元証明書類の偽造に関与した幹部グループに禁錮6年7か月、乳母や世話役を務めた14人に禁錮3年4か月が科された。検察側は当初、主犯格らに禁錮10年を求刑していたが、裁判所は被告らが公判で一部の事実関係を認め、反省の態度を示したことなどを考慮して量刑を決定した。

 犯行の手口についても現地報道で詳細が明らかになっている。犯罪グループは主にソーシャルメディア上の養子縁組グループを巡回し、経済的に困窮した若い親や未婚の母親を探し出していた。組織は実の親に対し、出産費用や謝礼金として900万~1500万ルピア(約8万~13万円)を支払って乳幼児を譲り受けていた。保護された赤ちゃんは一度、ジャカルタや西カリマンタン州ポンティアナックの隠れ家に運ばれ、偽造された家族カードや出生証明書を用いて不正にパスポートが発行され、正規の渡航手続きを装ってシンガポールへ移送された。

 シンガポールでは、合法的な養子縁組を希望しながらも手続きの停滞や厳しい要件に直面していた裕福な夫婦に対し、赤ちゃん1人あたり2億~2億5000万ルピア(1万4400~1万8000シンガポールドル=約165万~207万円)という高額で転売していた。判決によると、被害にあった34人のうち少なくとも12人が実際にシンガポール国内へ渡ったとみられている。

 東南アジア地域における国境を越えた人身売買の深刻な構造と、SNSを悪用した現代的な犯罪手法の拡大を浮き彫りにした。近年、格差の拡大や経済的困窮を背景に、子供を持てない富裕層と貧困層の間を不法に取り持つ闇ネットワークが問題視されている。今回の事件では、公的な養子縁組制度の厳格化や手続きの遅延が背景にあり、正規の手続きを迂回しようとする需要が犯罪組織の温床となったと分析されている。
【編集:af】
編集部おすすめ