タイ有数のリゾート地パタヤの静かな線路脇で、異臭を放つ黒いスーツケースから17歳のタイ人少女、トゥンチャノック・ドノムラさんの全裸遺体が見つかるという戦慄の事件が起きた。タイの大手新聞社タイラット(Thairath)やカオソット(Khaosod)の報道によると、被害者は友人を頼ってパタヤへやって来てわずか1週間で、悪魔のような男の手にかかった。
現地防犯カメラには、45歳のオーストラリア人、サイモン・ピーター・カーマン容疑者が少女とマンションに入り、数時間後に遺体を詰めた巨大なスーツケースをバイクに乗せて運ぶ凄惨な姿が記録されている。バンコク・ポスト(Bangkok Post)によれば、警察は空港でオーストラリアへ高飛びを図ろうとしていた同容疑者の身柄を拘束。取り調べで「包丁を出されて揉み合った」と見苦しい自己防衛を主張する男だが、遺体を捨てるや知人に「疲れたからプールで泳ぐ」と連絡していた冷血ぶりだ。自分の欲望のために尊い命を弄び、何食わぬ顔でプールへ向かうその鬼畜な本性には、開いた口が塞がらない。

その他の写真:パタヤ イメージ

 だが、この惨惨たる事件は、単一の殺人劇にとどまらない底知れぬ暗雲を漂わせている。タイの有力紙デイリー・ニュース(Daily News)などが一斉に報じたのは、過去2年間に同地域周辺で発生している2件の未解決スーツケース遺棄事件とカーマン容疑者との不気味な暗合である。

 捜査当局がこの男を単なる殺人犯ではなく、容赦なきシリアルキラー(連続殺人鬼)として警戒を強める最大の理由は、犯行の手口、すなわち専門用語で「モダス・オペランディ」と呼ばれる行動パターンに見られる異様な共通点にほかならない。過去2年間に同地域で発覚した2つの未解決事件でも、被害者はいずれも全裸で大型スーツケースに押し込められ、着用していた衣類や所持品ごと丸ごと打ち捨てられていた。人間を単なるゴミのように扱うこの異常きわまりない遺棄の手法は、人の心を持たない冷酷非道な犯人が抱く偏執的な性的好みや凶暴な執着を色濃く物語っている。

 犠牲となった女性たちの生前の境遇も、あまりに切なく胸を締め付ける。過去の未解決2事件の被害者もまた、歓楽街や夜の性風俗産業で懸命に生きていた女性たちだった。華やかなリゾートの陰で必死に生きる彼女たちは、密室で外国人の客と2人きりになるリスクを日常的に抱えている。
鬼畜な犯人は、そうした身元の特定や発覚が遅れがちな弱みに付け込み、反撃の恐れが少ないターゲットとして残忍な毒牙を向けた可能性が高いのだ。

 さらに、遺体の遺棄場所に選ばれた地域も実に不気味な一致を見せている。現場はいずれもパタヤと同じチョンブリー県のフワイヤイ地区や、隣接するラヨーン県バンチャン地区などの郊外だ。観光地の喧騒から離れた人影のない静けさは、獲物を食い散らかした冷酷な怪物にとって遺体を隠す格好の暗闇だったのだろう。

 このおぞましい一致をさらに決定づけたのが、タイ出入国管理当局の膨大な渡航データだ。カーマン容疑者のタイへの入出国記録や滞在履歴を精査したところ、過去の未解決事件の発生時期と完全に重なり合っていたのである。手口、被害者の属性、遺棄場所、そして滞在期間。これほど多くの要素が完璧に合致するのは決して偶然などではない。タイ警察が合同捜査本部を立ち上げ、男の隠された余罪追及に狂奔するのも当然と言えよう。

 もちろん、鬼畜な男を過去の事件の犯人として立件するには、慎重な科学的検証という大きな壁が立ちはだかる。今回の犠牲者が17歳だったのに対し、過去の未解決事件の被害者は20代から30代の成熟した女性とみられ、ターゲットの年齢層に若干の違いが見られる点もその1つだ。また、過去の2事件では遺体発見までに長い時間が経過しており、熱帯特有の気候によって激しい腐敗が進んでいた。
そのため、死因や身元の特定すら困難を極め、事件は暗闇の中に葬られかけていた背景があるのだ。

 現在、タイ警察の鑑識チームは、過去の現場に残されたわずかなDNA検体や指紋、さらに押収した男のスマートフォンから位置情報履歴を抽出し、当時の行動ルートを秒単位で再構成している。自分を正当化し、見苦しい言い訳を重ねる冷血な容疑者の仮面を剥ぎ取り、南国の街を恐怖に陥れた怪物の全貌を暴くことができるのか。遺族たちの血の滲むような悲痛な叫びとともに、国際社会がこの惨劇の結末を注視している。
【編集:af】
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