世界では、運動不足が社会全体で向き合う健康課題になっている。世界保健機関(WHO)が2024年に公表した最新の世界推計では、2022年時点で成人の31%、約18億人が推奨される身体活動量を満たしていなかった。
スポーツ庁が2026年3月に公表した2025年調査でも、日本の20歳以上で週1日以上運動・スポーツを行う人は51.7%だった。運動できる場所を増やすだけでなく、初心者が一歩を踏み出し、無理なく続けられる環境まで整える必要がある。

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ところが、運動できる場所が増えるだけで、続けやすい環境になるわけではない。指導技術に加え、集客、教育、店舗運営、顧客との関係が一つの仕組みとして動かなければ、優れたトレーナーも経営やマーケティングに時間を取られ、顧客へ向き合う余力を失う。競争の進む日本のパーソナルジム市場では、現場の質を守りながら組織を広げられるかが、長く支持される条件になっている。

指導の質と経営の仕組みを切り離さずに広げてきたのが、First fit株式会社の「THE PERSONAL GYM」だ。同社は2021年3月5日に設立され、同年6月1日に1号店となる新宿御苑店を開業した。そこから直営とフランチャイズの双方へ事業を広げ、2026年8月20日時点で直営21店舗、FC36店舗の計57店舗を展開している。

共同代表の田中健斗氏と林幸希氏は、競技者・指導者として互いの姿勢を認め合い、トレーニングや将来について語り合う中で、共同で事業を始めるに至った。

二人が創業時から共有していたのは、一店舗を自分たちだけで運営する未来ではなかった。「パーソナルジムといえばTHE PERSONAL GYM」と思い出してもらえる存在になり、フィットネスへ触れる入口を全国へ広げる。その構想があったからこそ、当初から店舗展開を視野に入れていたという。


ただし、大きな構想があっても、トレーナーとして結果を出す力と会社を経営する力は同じではない。創業当初は、SEOやMEO、Webマーケティング、採用、教育の仕組みを一から学ばなければならなかった。顧客が来るのを待つのではなく、新宿駅周辺や新宿御苑、錦糸町などへ自ら出向き、許可を取ってチラシを配りながら通行する人へ声を掛けた。反応を確かめ、伝え方を直す。現在の全国展開は、デジタル施策だけでなく、こうした地道な接点から始まっている。

未知だった経営を学ぶ一方、二人には最初から揺らがない強みがあった。身体を変えるために何が必要かを、競技と指導の双方から理解していたことである。公式サイトでは、両氏が日本大会で複数回の優勝経験を持つトレーナーとして紹介されている。経営手法を身につける過程でも、サービスの中心を顧客の身体と生活から離さなかった。その現場性が、集客だけを先行させず、提供価値を磨きながら事業を広げる支えとなった。

店舗が増え始めると、二人の経験だけで会社を動かす段階から、役割を組織へ渡す段階へ進んだ。創業期には少人数で人事、営業、顧客管理などを横断していたが、仕事を分け、マーケティング、採用、教育、FC支援を担うメンバーを育てていった。
各部門を担う人の多くがトレーナー経験を持ち、現在も現場感覚を失わない形で専門性を高めている。広告や教育を机上だけで考えず、顧客との会話や店舗の課題から改善できる体制である。

組織化の目的は、店舗数を増やすことだけではない。顧客がフィットネスを始める場所を広げると同時に、働く人へ店長、エリアマネージャー、SV、教育、マーケティングといった次の役割を生み出す。田中氏と林氏が目指すのは、自分たちだけが一、二店舗を運営して収益を得る形ではなく、スタッフがTHE PERSONAL GYMへ関わることで、収入とキャリアの選択肢を広げられる組織だ。

約5年で全国57店舗へ広がった背景をたどると、著名なトレーナー二人の人気だけでは説明できない。街頭で顧客との接点を探した創業期の行動、現場から学んだマーケティング、そして役割を任せながら専門家を育てた組織化が、一つの流れとしてつながっている。個人の技量を会社の仕組みへ変えたことに、同社の成長を支える本質がある。

取材を通じ、THE PERSONAL GYMの創業は、完成した経営モデルを持つ二人が始めた成功物語ではなく、トレーナーとしての強みを土台に、必要な経営能力を一つずつ身につけた歩みだと感じた。路上で顧客との接点を探した二人が、全国の店舗で同じ理念をどこまで再現していくのか。その歩みを追いたい。

【取材/執筆:Y.U】
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