連日の停電に見舞われ、島全体が漆黒の闇に包まれているフィリピン・セブ州マクタン島。南国の熱帯夜、エアコンや扇風機が止まった室内は耐えがたい暑さとなり、住民たちが涼を求めて路上へ這い出してくる夜が続いている。


その他の写真:「アクティブシニア・マクタン島木曜会」尾田慎二さん撮影

だが、そんな暗闇の街で、くっきりと明暗を分ける光景が広がっていた。

現地で暮らす「アクティブシニア・マクタン島木曜会」の尾田慎二さんは停電下の過酷な日常を物語る。静まり返った台所の中、食卓の上にポツンと置かれた小さな懐中電灯だけが、白い皿やコップを寂しく照らしている。電気を奪われた家々は、文字通り漆黒の闇に飲み込まれ、不便と暑さに耐えるしかない。

ところが、そのすぐ隣の家から聞こえてきたのは、歓声と賑やかな音楽だった。

尾田さんのお隣さん宅では、島内全域が停電していることなどまるで他人事のように、賑やかな誕生日パーティが繰り広げられていた。軒先には色鮮やかな風船や飾りが踊り、眩いほどの電飾と照明が輝く。大型スピーカーからは音楽が響き渡り、集まった人々や子供たちが明かりの下で笑顔を弾ませている。

この圧倒的な「光と影」の格差を生み出した正体こそが、近年現地で急速に普及している「ソーラー蓄電システム」だ。

「新築の家は、ほとんどソーラーを入れていますね」と尾田さんは語る。日本で太陽光発電や蓄電システムと言えば数百万円単位の高額投資というイメージが強いが、ここマクタン島で出回っている中国製のフルセットは、なんと6万円から10万円程度と極めてリーズナブルだという。

もちろん、この価格帯でのバッテリー容量では、消費電力の大きなセパレートエアコンを動かすような芸当は難しい。
しかし、照明を灯し、扇風機を回し、パーティ用のスピーカーやスマホを充電するには十分すぎる性能を備えている。

インフラの整備が追いつかず、いつ切れるか分からない電力供給に怯える日々。そんな中で誕生した「自前で光を買い、日常を守る」という庶民の知恵と自衛策。

暗闇に包まれたマクタン島の夜、一皿の料理を懐中電灯で照らす家と、10万円の太陽光で輝く不夜城のような誕生日会。未熟なインフラが生んだ過酷な停電劇は、島の人々の暮らしに「光を買える者と買えない者」の切実なドラマを描き出している。
【編集:eula】
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