再捜査刑事・片岡悠介10「死を呼ぶお忍び旅行!?妻と愛人を同伴する男」

2010年に「土曜ワイド劇場」でスタートしたシリーズで、寺島進主演の人気シリーズ第10弾・再捜査刑事・片岡悠介10「死を呼ぶお忍び旅行!?妻と愛人を同伴する男」が放送される。本作で寺島が演じるのは、警視庁再捜査班の刑事・片岡悠介。

10年前に事故死として処理された病院長の転落死と、新たに発生した週刊誌記者殺害事件。過去に封じ込められていた疑惑が、現在の事件とつながっていく中で、片岡が歳月を超えて真相に迫っていく。

寺島といえば、北野武監督作品をはじめ、数々の映画やドラマで強烈な印象を残してきた俳優だ。鋭い眼差し、低く響く声、相手との距離を一瞬で詰めるような圧。画面に現れた瞬間に空気が変わるあの存在感は、寺島進という俳優を語るうえで欠かせない。荒っぽく、口が悪く、近寄りがたい。そんな男たちを演じながら、寺島はその奥にある照れや情の深さまで見せてきた。

なかでも「交渉人 真下正義」、そしてスピンオフ「逃亡者 木島丈一郎」の木島丈一郎役は、寺島の魅力を印象づけた役柄のひとつだろう。威圧感があり、言葉も荒い。それでも、刑事としての勘の鋭さや現場で生きてきた男の矜持が、物語の中で徐々に浮かび上がってくる。『アンフェア』シリーズの山路哲夫にも通じる、怖さと愛嬌、乱暴さと繊細さが同じ人物の中にある感覚。そのバランスこそ、寺島が演じる人物に独特の説得力を与えてきた。

「再捜査刑事・片岡悠介」の片岡は、寺島がこれまで演じてきた強面の男たちとは少し違う魅力を持っている。鋭い眼差しや低い声が生む迫力はありながら、どこか人懐っこく、親しみやすい。美人に弱く、つい調子のいいことを言ってしまう一方で、事件となれば小さな違和感を見逃さず、相手の言葉の奥まで踏み込んでいく。母には頭が上がらず、少し抜けたところもある。そんな隙がチャーミングに映るのは、寺島の持つ怖さと人のよさが、同じ人物の中で自然に重なっているからだ。

第10作の面白さは、そんな片岡の人のよさが、かなりいびつな事件に巻き込まれていくところにある。発端は、母・美知恵が健康診断で世話になった看護師・川越明日香からの相談。片岡は、かわいらしい看護師だと聞いて下心を抱きながら病院へ向かうが、そこで明日香から、病院長・北林麻弥子の濡れ衣を晴らしてほしいと頼まれる。片岡の少しだらしない一面から始まった依頼が、10年前の死と現在の殺人事件へつながっていく導入に、このシリーズらしい軽さと不穏さが同居している。

10年前、麻弥子の夫で前病院長の昭一郎は、河口湖近くの崖から転落して亡くなった。当時は事故死として処理されたが、ここへきて病院内では「麻弥子が夫を殺したのではないか」という噂が広がり始める。昭一郎の母で理事長の美鈴のもとには、差出人不明の手紙が届いていた。

そこには、息子は妻に殺されたという告発が記され、血痕らしきものが付着した"岩"を撮影した写真まで添えられている。さらに、週刊誌記者の殺害事件が起き、過去の事故死は一気に現在の事件として立ち上がっていく。

ここで寺島が見せるのは、地道に人へ向き合う刑事の姿だ。片岡は相手の話を聞き、小さな違和感を拾い、納得できるまで足を動かす。声を荒らげる場面にも、相手の心の奥へ踏み込もうとする切実さがある。疑うべきところは鋭く見つめながら、その向こう側にある痛みまで見ようとする。事件の真相を追う刑事としての執念と、"再捜査の鬼"と呼ばれる一面を持ちながらも誰かを放っておけない人間臭さが、寺島の表情に同時に宿る。

特に本作では、片岡の"軽さ"が事件の重さを受け止めるための重要な要素になっている。看護師に会いに行く前の下心、母に振り回される情けなさ、捜査の合間に見せる調子のよさ。そうした隙があるからこそ、彼がふと真顔になった瞬間の迫力が際立つのだ。

考えてみれば、寺島が演じてきた多くの人物は、いつも怖さの奥に情を抱えていた。荒々しい言葉の裏に照れがあり、怒りの裏に守りたいものがある。

片岡悠介は、その魅力をより親しみやすい形で見せるキャラクターだ。美人に弱く、少し間が抜けていて、それでも事件の前では目の色が変わる。そんな片岡の姿には、寺島が長年かけて演じてきた男たちの面影がある。

「再捜査刑事・片岡悠介10」は、過去の事件をもう一度見つめ直す物語であると同時に、寺島進という俳優の持ち味を改めて味わえる作品でもある。お忍び旅行をめぐる男女のもつれ、病院内に広がる噂、差出人不明の手紙、そして現在の殺人事件。いくつもの疑念が重なっていく中で、片岡は過去に取り残された声を拾い上げるように事件へ近づいていく。その不器用で、泥臭く、どこか憎めない姿には、寺島だからこそ出せる人間味が詰まっている。

文=川崎龍也

放送情報

再捜査刑事・片岡悠介10「死を呼ぶお忍び旅行!?妻と愛人を同伴する男」
放送日時:2026年7月11日(土)12:00~
チャンネル:テレ朝チャンネル2(スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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