SNSをきっかけにした投資詐欺の被害が、過去最悪を更新しました。警察庁によると、2025年のSNS型投資詐欺の認知件数は9,523件、被害額はおよそ1,288億円にのぼり、いずれも前年から5割近く増えています(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」)。
被害が目立つのは、実は高齢者だけではありません。SNS型投資詐欺では50代の被害が最も多く、働き盛りの世代こそ狙われているのが実態です。夏のボーナスが入り、「このお金を少しでも増やせないか」と考えるいまの時期は、特に注意が必要です。
メーカーに勤めるAさん(53歳)は、SNSで著名な投資家を名乗る人物の広告を目にしました。誘われるまま投資グループのチャットに参加すると、毎日のように「利益が出た」という報告が流れてきます。試しに少額を入金すると、画面上では確かに利益が出ていて、出金もできました。信用して定期預金の解約まで考え始めたころ、さらに追加入金を求められました。ふと不安になって調べてみて、ようやく詐欺だと気づいたといいます。
結論はシンプルです。SNSで知った「もうかる話」は、まず詐欺を疑ってください。警察庁の集計では、被害者が最初に詐欺と接触したきっかけは、SNS上の広告とダイレクトメッセージで全体の約8割を占めます。向こうから届く「うまい話」は、ほぼ例外なく入口が仕組まれています。
なぜ、働き盛りの世代が狙われるのでしょうか。理由は単純で、この世代にお金があるからです。住宅ローンを抱えながらも、退職金や教育資金、老後への備えなど、まとまったお金が動く年代です。加えて、新NISAの広がりで投資そのものが身近になり、「投資の話を聞くこと」への警戒心が下がっています。投資が日常になった時代は、詐欺がまぎれ込みやすい時代でもあるのです。
手口には共通の型があります。著名人や大手企業をかたって信用させる。グループチャットで「もうかっている人たち」を演出する。最初は少額の利益を見せ、出金にも応じて安心させたうえで、大きな入金を促してくる。そして、まとまったお金が入った途端、出金できなくなる。この流れを知っているだけで、途中で立ち止まれる可能性は大きく上がります。
見抜くための確認点は3つです。
あわせて知っておきたいのは、正規の投資であってもリスクはある、ということです。詐欺でなければ安心、ではありません。理解できない商品には手を出さない。生活に必要なお金と、減っても暮らしが壊れないお金を分ける。この基本は、どんな投資にも共通します。
もし入金してしまった、あるいは怪しいと感じたら、ためらわずに警察相談専用電話#9110に相談してください。
ボーナスや退職金は、長く働いてきた時間の結晶です。それを増やしたいと考えること自体は、まったく悪いことではありません。だからこそ、お金の置き先は、SNSの広告ではなく、自分で調べて納得した正規の窓口から選ぶこと。怪しい儲け話を断る力も、立派な資産防衛です。家族とも、こうした手口があることを一度話しておいてください。その会話が、いざというときの防波堤になります。
(新井 一/起業コンサルタント)
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