不況や物価高、そして副業解禁する会社も増え、いまブームとなっている“スキマバイト”。ライター歴15年、40代主婦の筆者は、この物価高の中、生活費の足しにとスキマバイトに手を出すことにしました。

半年以上やっていると、馴染みの現場もできてきましたが、フリーランスの性なのか、数回続けるとどこか飽きがきてしまいます。新規開拓がしたい、そんな思いで何気なくタイミーを開いたある朝、車で30分ほどの生鮮市場(八百屋さん)から当日の募集が新規で出てきました。

当日募集、2時間のみ。奇特な募集に来る人は…

八百屋で遭った「タイミーさん」にビックリ! 高級外車に高級ダ...の画像はこちら >>
詳細を見ると、未経験可で「野菜の計量と袋詰め」なる軽作業ということですが、勤務時間は2時間ほどで報酬は交通費込み約3000円です。緊急募集という点、稼ぎの少なさと家から遠い勤務地ということで尻込みし、すぐにスマホを閉じようとしました。

しかし、「数時間後に開始の当日募集など本当に集まるのか……?」という疑問がわきます。 幸い本日身体は空いている上に、車通勤も可能です。しかも、複数名募集。まだ誰も集まっていないようですが、「この募集に急きょ参戦してくるのはどんな人だろう」という興味が勝ち、エイヤと申込をすることにしました。

大急ぎで軽自動車をとばし、就業先である生鮮市場の待機場所に行ってみると、すでに同年代(40代)くらいの男性が待っていました。

高級外車に高級ダウン、一体何者?

てっきり暇な近所のご老人か主婦、切羽詰まった様子の方がくるのかと予想していましたが、大外れです。その方は、休日公園で子どもを遊ばせていそうな穏やかなパパさんという感じの、シュッとした清潔感ある男性でした。「この人はなぜここに……?」いっそう興味がわいてきました。


さらに驚いたのが、待機場所から現場まで移動する時のことです。冷蔵庫内での作業となるため、自前のダウンジャケット用意が必須だったのですが、その日は暑い日でもあったので「車にダウンを置いてある」とその方は取りに戻ることに。

八百屋で遭った「タイミーさん」にビックリ! 高級外車に高級ダウン…スポットバイトを楽しむ“謎の40代男性”は何者?
すると、なんということでしょう。彼が向かったのは重厚な雰囲気の高級外車・BMWでした。そして戻ってきて着用していたダウンの肩のあたりには、高級ダウン・カナダグースのマークがついていたのです。

二人きりの検品作業 男性と会話してみると…

作業は広い冷蔵機能のある倉庫の作業場で、ジャガイモの検品と袋詰め、トマトのパック詰めなどの作業でした。ジャガイモの検品は、まず段ボール箱に入っている大量のジャガイモの芽をひたすら剝く&見た目が悪いものを弾く作業です。

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現場に管理者や他のスタッフはおらず、体力も頭も使う作業でないので、自然と件の男性と会話をする流れになりました。本来はタイミーという身分をわきまえて黙々と作業をすべきなのでしょうが、ウルトラライトダウンを着ている私からしたら現場はかじかむような寒さ。

現代の東京での高級ダウン不要論を常々唱えている身ですが、彼の着ているカナダグースが心から羨ましくてたまりません。黙っていたらそのまま凍りついてしまいそうなので、会話で気分を紛らわせてでもいなければ、やってられません。

「寒いですね」と私が彼に言うと、適当な相槌と共に「この現場は初めてですか?」と返ってきました。タイミー同士の初対面の会話は、大体これから始まります。


金稼ぎではなく道楽? 滲み出るエンジョイ感

「初めてです」
「僕もです。ここは会社が近かったので申し込んだんですよ。他の現場にも入られているんですか?」
「ああ、ちょこちょこと」
「なにか面白いところないですかね?」
「最近は総菜バイトにハマっていますね。あと、パン工場とか」
「パン工場、僕はムリでしたね。そういえばこの前、花見のキッチンカーで募集があったんですよ、普段なかなかできない体験で――」

……そんな他愛もない会話の中で、言葉の端々からわかったのは、どうやら彼は正業があり、タイミーは完全に副業であること、その正業は何かしらの自営業であることでした。

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そして、仕事を選ぶ基準は時給や勤務地より「おもしろさ」と社会勉強性を優先していることです。収入を得る手段としてではなく、道楽としてやっている、いわばエンジョイ勢。でなければ、時給も低く短時間作業、しかも緊急募集などで来るはずありません。

こうやって記事のネタにしている私自身も人のことは言えませんが、色々な人がいるのだと目からウロコでした。そんなこんなで作業をしていたら、2時間はすぐすぎていきました。正直、働いた気がせず、個人的には不完全燃焼の現場でした。

芸能人や株主もスポットバイトを楽しむ時代

先日、お笑いコンビ・アインシュタインの河井ゆずるさんが、昨年末・飲食店でタイミーをしたとテレビ番組で報告をしていました。タイミーではありませんが、スポットバイトという点から言うと、少し前にオードリーの若林正恭さんがUberの配達員をしたということをテレビやラジオで話していましたね。

スレッズでも「才能の無駄遣い」と称して、吹奏楽曲の著名な作曲家が全国のコンビニでタイミーをする様子を報告するのが話題になっています。


思い出せば、先日勤務したスーパーで一緒になった常連のタイミーさんは、実はそのスーパーの株主なのだそうです。そのスーパーのファンで、百万単位で投資しているといっており、「時折タイミーに入って会社の信頼性をチェックしている」のだそう。

もはや「社不」だけの仕事じゃない

スポットワーカーは、「どんな職場にも就職できない社会不適合者」「日々の生活が苦しい貧困者」というレッテルを貼られているように思えます。

しかし、実際に働いてみて感じるのは、今回のようなスポットワークを、趣味のように楽しんでいたり、成功者が社会勉強で入っていたり、正規で就業するほど生活に困っていない人が結構いることです。

八百屋で遭った「タイミーさん」にビックリ! 高級外車に高級ダウン…スポットバイトを楽しむ“謎の40代男性”は何者?
「パート先で雑な対応をしていた高齢タイミーさんが、実は夫の会社の社長だった!?」そんなスカッと系漫画のような展開が、もしかしたら日本のどこかで実際に起こっているかもしれませんね。

<文/小政りょう>

【小政りょう】
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦
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