BLドラマは人材の宝庫である。作品のフラッグシップになる主演俳優はもちろん、助演俳優にとっても活躍できるチャンスがあり、活路になり得るジャンルだからだ。


 堀海登と佐藤友祐W主演のBLドラマ『フェイクファクトリップス』(BSフジ、毎週木曜24時放送)では、財津一郎の孫として知られる財津優太郎が、確実に見せ場を作っている。

 本作で財津優太郎はキャリアを前進させる。“イケメン研究家”加賀谷健が解説する。

案内役というポジションを得た財津優太郎

 開放的なオフィスでいつものように小競り合いが始まる。場所は営業2課。営業部成績トップである1課の四ツ谷良(堀海登)が「志藤」と連呼しながらやってくる。デスクに向かう志藤全(佐藤友祐)がムッとする。

 二人は高校時代の同級生で、何かと勝負に明け暮れてきた間柄だ。同じ会社に入社してからは専ら営業成績で競っている。でもいつも勝つのは四ツ谷で、彼は志藤をからかうことを楽しみにしている。お互いスイッチが入ると手がつけられない。

 2課に配属された新入社員・東野翔太(天野旭陽)が、志藤は2課では成績トップだとフォローを入れても聞いちゃいない。状況がつかめない東野が近くにいた先輩社員・大西悠真(財津優太郎)にすがると、大西が「おぉ、今季も盛り上がってるなぁ」と実況しながら、さらに「二人の勝負は営業部の名物だから」と解説する。


『フェイクファクトリップス』第1話冒頭のこの場面で、物語導入の案内役というポジションを得た財津優太郎がなかなかいい表情をする。

キャリアを前進させるBLドラマ出演

 本作公式ホームページ上のキャラクター紹介には、大西役について「明るく人懐こい性格で、職場の空気を和ませる存在」と書いてある。財津優太郎は役柄の設定をうまくまとめ上げ、コンパクトな演技に徹している。

 四ツ谷と志藤が身をほてらせるセクシャルな場面を見た後で、オフィス場面に大西がいるのを見ると何だかホッとする。財津優太郎が作り上げる大西役は、主人公たちによる濃密な緊張感をうまくほぐす役割にもなっている。

 本作は深夜枠であるため、放送尺、脚本の制約、予算の都合上、登場人物が少ない。その分、助演俳優でも出番は多くなり、見せ場を作りやすい。さらに近年のBLドラマは若手俳優がスキルを磨く活路でもあり、本作は財津優太郎にとってキャリアを前進させる格好の舞台だ。

読書家としての一面

 本作以前は、確実に見せ場を作ることができる出演作が必ずしもあったわけではない。WOWOWドラマ『ドラフトキング』(2023年)、菅生新樹や小林虎之介など若手俳優が実力を伸ばしたTBS日曜劇場『下剋上球児』(2023年)といった野球ドラマでの、ほんの端役出演に過ぎなかった。

 若手がきらめく試金石のような作品に出演できたことは、もちろんキャリアのプラスにはなった。さらに名フレーズ「ピアノ売ってちょーだい!」が耳に残る、タケモトピアノのCMで有名な財津一郎の孫であるという話題性もあった。

 後は然るべき出演作を待つのみといったところに、今回のBLドラマ出演がきた。


 着実な歩みであるだけに日々の努力も怠らない。読書家としての一面もあり、Instagram上では読破した書籍を紹介している。特に目を見張るのが2025年8月13日の投稿。

 読んだのはポール・オースターが1985~86年にかけて出版した、ニューヨーク三部作の一つ『幽霊たち』。

「本を読んでる内にこの退屈だがスリリングな世界に引き摺り込まれた気がした」というキャプションが、なかなかの名文。滋味深いポテンシャルを秘めた才能だ。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
イケメン研究家 / (株)KKミュージック取締役
“イケメン研究家”として大学時代からイケメン俳優に関するコラムを多くの媒体で執筆。アーティストマネジメント、ダイナマイトボートレース等のCM作品やコンサートでのクラシック音楽監修、大手ディベロッパーの映像キャスティング・演出、アジア映画宣伝プロデュースを手掛ける。他に、LDHアーティストのオフィシャルレポート担当や特典映像の聞き手など。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。
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