「老後のお金はどれだけあればいい?」「親の介護はどうしよう」「もしも病気になったら……」――。
そんな私たちに、「不安は、正体をはっきりさせて一つずつ片づければいい」と語るのが、今年59歳を迎えたメンタルコーチで作家のワタナベ薫さん。そうすれば、「残りの人生は遊園地で遊んでいるようなもの」と話します。
自身も離婚を経験し、おひとりさまとして人生を楽しむワタナベさんに、不安との向き合い方から、人とのつながり、年齢を重ねることの意味など、新刊『おひとりさまの生存戦略 人生100年時代をご機嫌に生きるスキル』に込めた思いとともに、未来への不安を楽しみに変えるヒントを伺いました。
実は「おひとりさま」ってめちゃくちゃ楽しい
――「人生100年時代のおひとりさま」をテーマに本を書こうと思ったきっかけを教えてください。ワタナベ薫さん(以下、ワタナベ):直接のきっかけは、同じような時期に4人の編集者さんから「将来に不安を持つ独身女性たちのための本を書いてみませんか」とお話をいただいたことです。
私自身、10年前に離婚しておひとりさまになったとき、いろいろ不安になることがありました。それこそ、「経済的にやっていけるだろうか」とか「親の介護や看取りはどうしよう」から、「瓶の蓋が開かないときにどうしよう」まで(笑)。そこから少しずつ将来に備えることを始めたのですが、終わってみれば「おひとりさまって、すごく気楽でめちゃくちゃ楽しい!」となりました。
そんな経験があって、4人からお話もきたということは、やっぱり皆さん不安なんだなと。それで、「いやいや、ちゃんと楽しい人生が待っているよ」ということを伝えたくて本にしました。
ワタナベ:将来の不安って、すごく漠然としていますよね。漠然としているから妄想がどんどん膨らんで、事実と向き合えなくなる。ダイエットしなくちゃいけないと思いつつ、怖くて体重計に乗れないのと同じです。
でも、例えば「老後資金」と「孤独感」が問題なんだと分かれば、自分には対処すべき二つの問題があるという事実だけになり、わけの分からない妄想に悩まされることはなくなります。そして、問題に対処ができれば、残りの人生はもう遊園地で遊んでいるようなものです。そうなるための方法について、すごく具体的に書きました。
漠然とした不安からは「書くこと」で抜け出せる
――遊園地の人生を送るため、まずは問題をはっきりさせて対処してしまおうと。ワタナベ:そうなんです。人が悩むのは、思考が止まっているときだそうです。思考が止まり、次に何をして良いか分からず行動が止ってしまう。不安も同じで、漠然としているから先へ進めなくなるのです。
逆にいえば、何が不安かはっきりさせることができれば、じゃあこれを解決するには……となる。そのようにして最初の一歩を踏み出すことができれば、あとは慣性の法則で、どんどん進んでいきます。
――とはいえ、自分の問題に向き合うのはちょっと勇気が要ります。
ワタナベ:そこは頑張っていただいて(笑)。私が行っているコーチングでも、「頭では分かっているんだけど、でも……」と言って動けない人がよくいますが、そんなとき私は、「じゃあ、そこでずっと居てもらって良いですよ」と言っています。厳しいようですが、動かなければ何も変わりません。
――最初の一歩は、具体的にどこから始めれば良いですか?
ワタナベ:まずは書くことです。自分は何が不安なのか、気づいたことを手帳などにそのつど書いていきましょう。スマホのメモ機能や録音機能を使っても良いと思います。これなら5分10分でできるので、あまり負担にならずに始められると思います。
不安を文字にして視覚化すれば、自分の現在地点が分かり、ゴールに到達するための方法も見えてきます。その方法はひとつではないはずなので、思いつく限りの方法を挙げていく。そして、「これがダメなら次はこっち」というように一つずつ実行していくことで、少しずつ対処ができて、不安も減っていきます。具体的にどう対処していくかは、お金、孤独感、健康、介護や看取りなど、テーマごとに詳しく本に書いてありますので、読んでみてください。
母親の看取りが教えてくれた「準備する勇気」
ワタナベ:両親の介護や看取りですね。父はまだ存命ですが、母はがんで亡くなっています。母のがんが発覚したとき、完治すると信じていたので、最初は何も聞きませんでした。しかし、どんどん弱っていく母を見て、入院した場合に備えて通帳を預けてくれないかとお願いし、万一末期になったときにどういう治療法を望むのか、父のことはどうするかなど、勇気を出して話し合うことにしたのです。
そのおかげで、母が望むかたちに近い看取りができました。たった一つ、遺影を撮ることができなかったのは後悔しています。母に自分の死を連想させたくなくて、「写真を撮ろう!」と切り出せなかったんですよね。
一方で父のときは、病で倒れて入院し、退院後は施設に入りましたが、その間に認知症になってしまいました。それで印鑑がどこにあるか忘れてしまったのですが、私が盗んだと思い込んで責められました。父の変わりようにショックはありましたが、認知症についての知識はあったので、「こういう症状なんだ」と冷静に受け止めることもできました。
ただ、遺影については母のときの経験を生かし、機会を見て撮影しました。
――ご両親がそんなことになるとは、思ってもみなかったのでは?
ワタナベ:父が認知症になるのも想定外だったし、母がこんなに早く亡くなるのも想定外でした。でも、介護や看取りは私にとって「いつか必ずやってくるもの」。だからこそ、早いうちに話し合っておくことが大事なんだと実感しました。人によっては、実家の整理や墓じまいなんかもそうですね。言い出しにくいことではありますが、最期まで親の尊厳を守るためにも、元気なうちに話し合っておくことを強くおすすめします。
<文/宇津井恵子 撮影/門嶋淳矢>
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