いつの世も、カス男・クズ男との恋にハマる女性は少なくない。その“あやまち”はなぜ起こるのか? 歪んだ愛憎劇の名手で、新刊『恋のカスと愛のクズ』が話題の漫画家にくまん子氏と、数々の恋愛相談に応じてきた人気YouTuber佐伯ポインティ氏がその答えに迫る

私が恥ずかしい過去の恋を掘り返して漫画に描く理由

「自虐は褒められ待ちと同じ」クズ男と“嫌われるおじさん”が無...の画像はこちら >>
 女性がカスクズ男たちとの泥沼恋愛にハマってしまう理由は、心の闇やトラウマにあらず……? 恋愛や性愛のリアルを見つめてきた2人が語り合う後編では、クズ男をあえて面白がる女性の存在に触れつつ、彼らを反面教師におじさんが嫌われないためのヒントを探ってもらった。

佐伯ポインティ(以下、佐伯):女性がクズ男と付き合っていると、「過去に恋愛で傷ついたんでしょ?」「親子関係にトラウマがあるのでは?」と深読みされることが多い。
でも、世間からはいないことにされがちですが、単に悪趣味なエンタメとしてクズ男と関わっている女性も意外といると僕は思っていて。

にくまん子(以下、まん子):わかります! ネットで毛穴から角栓を押し出す動画をつい見てしまうのと一緒。「うわ、何こいつ、ウケる!」みたいな感覚で、カスのような男たちと会ってしまうだけだったりするんですよね。

「自虐は褒められ待ちと同じ」クズ男と“嫌われるおじさん”が無意識にやっている「マウントの正体」
マッチングアプリで出会ったカスクズ男と、週末をぶん回す、主人公しずみ。
佐伯:虫がいるのはわかっているのにレンガの裏をめくっちゃう、みたいな。

まん子:昔、いい人がいなくて行き詰まっていた頃、女友達3人で夜な夜な相席系居酒屋をハシゴしていて。初対面の男たちとゲラゲラ笑いながら罵詈雑言を吐き合っていたら、「他のお客様がおびえるので」とお店の人から退店を促されました(笑)。

佐伯:山賊の宴みたいな(笑)。

まん子:あれも深読みする人からは「自傷行為だ」と言われるかもしれないけど、恋愛の駆け引きとかを抜きにして、単に「男とタイマン張りたい」みたいな野蛮な欲求を発散していただけなんです。

クズ男と嫌われおじさん、共通点は「マウント欲」

「自虐は褒められ待ちと同じ」クズ男と“嫌われるおじさん”が無意識にやっている「マウントの正体」
“カスクズ恋愛沼”に自ら投じるのか……。ポインティ氏は「あるあるですねー!」と笑いながら指摘
――カスクズ恋愛にハマる女性の特徴として、終わった恋を“なかったこと”にする人も多くないですか?

佐伯:失恋すると、痛々しかった自分を認めたくないあまり、過去の記憶まで都合よく書き換えて、「よく考えたら、そんなに好きじゃなかった」と言う人はいますよね。LINEの履歴から、思い出の品まで抹消したりして。

まん子:私は逆に、恥ずかしい過去を掘り返して漫画にしているようなところがあります。捨てる前のゴミ袋をもう一度開けて、「ほら、こんなに汚いのあったよ」と言って笑いたいんです。

佐伯:でも、そうやって消したい過去を作品に昇華するのは、すごく健全な供養の仕方だと思いますよ。


まん子:黒歴史にフタをせずに受け入れることで、過去の自分に「よくやった」と言ってあげられる気がして。それに、そうやって経験値が上がると、若い頃なら「ミステリアスで素敵♥」と感じていた男性が、ただ素性を隠して関係性を曖昧にしているクズ男であることに気づけたりもするんですよ。

佐伯:すごい! クズ男に対する耐性がつくんだ(笑)。経験を積むのも捨てたもんじゃないですね。

――ポインティさんは著書『嫌われおじさん 愛されおじさん』の中で、おじさんのどんな振る舞いが嫌われ、どんな行動が愛されるのかをやさしく言語化しています。クズ男と「嫌われおじさん」には、共通点がありますか?

佐伯:どちらも根っこには「相手より優位に立ちたい」というマウント欲がある気がします。ただ、先生の『恋のカスと愛のクズ』に出てくる春斗のようなクズ男は、自分の特性が性癖に刺さる“顧客”となる女性を見極めている。相手の合意の上でナメた態度を取るので、営業として優秀だと言えると思います。

まん子:確かに、人たらし型のクズ男は「この女は俺の魔法にかかる」というのを無意識に見定めていそう。

佐伯:一方、嫌われおじさんは顧客じゃない相手にも全方位にマウント営業をかけてしまい、失敗するケースは多そうですね。

自虐は自画自賛と同じくらい傲慢

「自虐は褒められ待ちと同じ」クズ男と“嫌われるおじさん”が無意識にやっている「マウントの正体」
過去を作品に昇華するにくまん子氏。はたして、この言葉責め男は実在したのか?
――『恋のカスと愛のクズ』には、ピロートークで「俺の言葉攻めエグいっしょ」と自画自賛する男が出てきますが、彼は典型的な“嫌われおじさん”のタイプですね。

佐伯:これって結局、「俺ってすごいよね」という承認を強要する行為。
自分の不安を相手に処理してもらっているから冷めるんですよね。

まん子:それなら、「うわ、おっぱい気持ちいい!」って素直に喜んでいる男のほうが、取り繕っていなくて100倍かわいいです(笑)。あと、おじさんに多いのが「俺なんてもうハゲてきちゃってさ~」と自虐しながらチラチラ見てくる人。こちらにフォローを強要してくる圧を感じて疲れます。

佐伯:自虐って、へりくだっているようで、実は褒められ待ちと同じぐらい、相手に感情労働を要求している言動ですよね。アゲもサゲも相手に同調を求めると疲れさせちゃう……。

――では、年を重ねて“愛されるおじさん”になる人は、何が違うと思いますか?

佐伯:今の若い世代は人との距離感の目盛りがすごく細かくて、インスタのストーリーズに「いいね」を押すだけでも、人によって慎重に対応を変えている。でも、おじさんは「コミュニケーションは多ければ多いほどいい」という大雑把な感覚で踏み込みがち。そこで「ちょっと重いですよ」と指摘されたときに、「今はそうなんだ」と素直に学べる人は、愛される側に回れる気がします。

まん子:あとは、自分で自分の機嫌を取れる人。ハゲを自虐してフォローを求めるのではなく、自分で笑い飛ばせるくらい“陽のオーラ”がある人は愛されると思います。

佐伯:周囲に自分の不快や不安を処理させず、自分で自分を楽しませて勝手にご機嫌でいられること。
自分も含め難しいですが、目指す意味はあると思います。

「自虐は褒められ待ちと同じ」クズ男と“嫌われるおじさん”が無意識にやっている「マウントの正体」
『恋のカスと愛のクズ』は「マンガSPA!」で連載中
【にくまん子氏】
漫画家。『泥の女通信』『恋煮込み愛つゆだく大盛り』など、現代のリアルな恋愛模様を描いた作品が多くの女性から圧倒的な共感を集める。新刊『恋のカスと愛のクズ①』が発売中

【佐伯ポインティ氏】
1993年生まれ。猥談系YouTuber。性愛や日常の悩みをフラットに語るスタイルがZ世代を中心に支持されている。著書に『嫌われおじさん愛されおじさん』などがある

<取材・文/福田フクスケ 撮影/杉原洋平>
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