アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコで、ヨガスタジオに侵入した泥棒が、逃走車として自動運転タクシーのWaymoを使用した。
当初はすぐに犯人の身元が割れるものと思われたが、事件発生から半年が過ぎても、犯人に結びつく手がかりはまだない。
このような「新しい種類の逃走手段」は、当局はもちろん、自動運転タクシーを運営する側も想定していなかったらしい。
窃盗犯が犯行後に自動運転タクシーで逃走
事件が起きたのは2026年1月、舞台はサンフランシスコのマリーナ地区にあるヨガスタジオ「Hot 8 Yoga[https://www.hot8yoga.com/studio/san-francisco-marina]」である。
捜査当局によると、1人の男が夜間にスタジオ内に侵入し、男性用のショートパンツを両腕に抱えて外へ出た。犯行にかかった時間は3分未満だったという。
Hot 8 Yogaのマネージャー、ファラー・イッサさんによると、防犯カメラの映像には、店の外に白いジャガーのWaymo車両が停車している様子が写っていた。
Waymoとは、Googleの親会社であるアルファベット社傘下の企業が運営する自動運転タクシー(ロボタクシー)サービスである。
男は盗んだ品をWaymoのトランクに詰め込むと、そのまま車内へ乗り込んだ。するとWaymo車は無人のまま走り出し、男を乗せて現場を離れていった。
防犯カメラの映像では、犯人が薄い色のパーカーを着ている姿までは確認できたが、残念ながら顔は写っていなかったという。
車載カメラもアカウント情報も捜査の役には立たなかった
この事件で逃走に使われたのは、Waymoの自動運転車両「Jaguar I-Pace」である。下がサンフランシスコを走る、犯行に使われたのと同じタイプの車両だ。
通常なら、逃走に使われた車両は捜査の重要な手がかりになるはずだ。もちろん、運転手がいれば証言も得られるだろうし、タクシーや配車サービスなら乗車記録も確認できる。
今回使われたWaymoの自動運転タクシーには、確かに運転手はいなかった。
Waymo社によると、この車両には29台の高解像度カメラが搭載されており、レーダーやLiDAR(レーザー測距装置)と組み合わせて、周囲の状況を把握するようになっているそうだ。
また、利用にはクレジットカードなどと紐づけたアカウント登録も必要だし、乗降地点の記録も残る。犯人を特定するのは時間の問題だと思われた。
捜査を担当するサンフランシスコ市警(SFPD)のティム・フェイ巡査部長も、「Waymoなら簡単に解決できると思ったんです」と語っている。
だが、なぜか捜査はまったく進展しなかった。事件発生から半年が過ぎた6月になっても、いまだに犯人の目星はついていないのである。
プライバシー保護が裏目に出たか
もちろん、SFPDはWaymoに対して捜索令状を出し、逃走に使われた車両について、配車を依頼したアカウント情報や映像の提出を求めた。
だが、アカウント情報は容疑者の特定にはつながらなかった。警察によると、盗まれた個人情報や使い捨ての携帯電話が使われた可能性もあるという。
せっかくの車載カメラの映像も、犯人の手がかりにはならなかった。警察が4月に捜査令状を発行した時点で、Waymo側はすでに当時の車内映像のデータを破棄してしまっており、犯人に繋がる情報は何も残っていなかったのだ。
Waymo側は、撮影した映像をどのくらいの期間保存しているかについて、一切公表していないという。
車外カメラもあるのだが、映っている人物の顔はプライバシー保護のためにぼかされていて、犯人の特定には使えなかった。
また、同社では人物を特定するための顔認識や生体認証といった技術は、一切使っていないとのことだ。
万引きが軽視されがちなサンフランシスコ事情
半年たっても犯人が見つかっていないという現状は、現地のメディアなどで改めて報道され、警察当局を揶揄するコメントも寄せられていた。
- すごいな! コンピューターが走らせている車の追跡もできないし、誰がその車を呼んだのかもわからないのか
- たぶん、そもそも捜査する気すらないんだろう
- サンフランシスコは万引き犯の聖域都市だと思っていたよ
- 法律は変わった。正確には住民が変えた。でも本気で執行したいと思っているかはわからない
- どうせすぐ釈放される万引き犯を探すなんて、警察の労力の無駄だよね
- サンフランシスコの警察官だったら、必死になって万引き犯を探すわけないだろう? どうせ18時間も拘置されずに釈放されるし、保釈金もなし、おそらく罰金すら科されないんだから
- ルーリー市長の功績と言ってもいいけど、サンフランシスコは小売店犯罪への対応を180度転換した。まだ道のりは長いだろうが、少なくとも今は常習的な万引き犯を逮捕し、起訴するようになっている
- 俺は驚かないね。1か月前、Waymoにフェニックスのヤバい地区を無駄にぐるっと回らされたし。共犯になるのもプログラムの一部なんじゃないか
- 南カリフォルニアで起きた環境保護を訴えるデモでは、複数のWaymo車両を呼び出してから火を付けていたぞ
- 環境保護運動家は、地球温暖化や大気汚染、資源の持続可能性なんて本当は気にしていないってことかよ
- 驚きだよな。まるで自分たちが他人に説教していることを、本当は信じていないみたいだ
- アメリカの都市に住んでいる身からすると、警察がWaymoに問い合わせた可能性なんて0%だね。令状を取ったなんてなおさら信じられない
- 要するに警察は3か月以上も何もしないでいて、ようやく令状を取った頃には車内映像が消えていたってことか。盗みを働くような人間は、間違いなく他でもやっている。どの街でも犯罪の大半は、ごく少数の常習犯が引き起こしているものだからな
- 最近は万引き犯もWaymoで逃げる時代なんだな
- 文字通り説得も脅しも通じない逃走ドライバーか。
ぶっ飛んでるよ
コメント欄では「万引き犯の聖地が今さら」という声も多かった。
実はサンフランシスコでは、万引きや小売店を狙った窃盗への対応が大きく揺れ動いている。
2014年、カリフォルニア州では刑務所の過密化問題解決のため法律が見直され、被害額950ドル(約15万円)未満の窃盗は軽犯罪として扱われるようになった。
その結果、常習的な万引き犯にも厳しい処罰を下すのが難しくなったとして批判が高まり、小売店側からも「犯罪者に甘すぎる」との不満が噴出した。
そこで2024年に方針が見直され、常習犯や組織的な窃盗グループに対しては、より重い罪で立件しやすくなるよう、制度変更が行われた経緯がある。
現在は警察や検察も、小売店を狙った窃盗への取り締まりを強化する方向へ転換しているそうだ。
課題の多い自動運転タクシーと犯罪捜査
自動運転タクシーが犯罪の逃走に使われる例は、まだ多くない。SFPDは今回の事件が、サンフランシスコで初めて確認された「自動運転車を逃走車として使った犯罪」の可能性が高いとしている。
ただし、似たような例は過去にもある。2025年にはロサンゼルスで、食料品店を襲ったとされる容疑者がWaymoに乗り込んで逃走した。
この時は警察が車を追跡し、緊急灯を点灯させたところ、Waymoは自ら路肩に停止したという。
下がその時の映像である。
一方、Waymoをめぐっては、犯罪そのものではなく緊急現場への対応をめぐるトラブルも報じられている。
2025年11月には、ロサンゼルスで警察が容疑者を取り押さえていた現場に、Waymoの車両が乗客を乗せたまま進入。
下の映像を見るとわかるが、警官の指示には一切反応せず、地面に伏せた容疑者のすぐそばを通過していったのだ。
自動運転タクシー・ロボタクシーは、アメリカや中国、中東など、世界各地で実用化が進められている。
日常的に使われている地域はまだ限られているとはいえ、自動運転車はすでに未来の技術ではなく、現実の交通手段になり始めているのだ。
だがその一方で、法整備が技術の進歩に追い付いていない面も指摘されている。カラパイアでもお伝えしたように、カリフォルニア州では先日、自動運転タクシーの交通違反が、警察の取り締まり対象になったばかりだったりする。
今後は交通違反や犯罪への対策、プライバシーの扱いなど、法執行機関はもちろん、運営する側にも明確な判断や説明責任が求められることになるだろう。
References: Police can’t find shoplifter who fled in self-driving Waymo[https://www.popsci.com/technology/shoplifter-waymo-crime/]











