人類の祖先の体格は、長い進化の歴史の中で、徐々に大きくなったわけではなかった。
イギリスのレディング大学とオックスフォード大学の研究チームの最新研究によると、約200万年前に進化の分岐が起き、ヒト属の中の一部の種では体重が平均40kgから60kg超へと急激に大型化した一方、まったく別の道を歩み、小柄なままにとどまった種も存在していたという。
この研究成果は『PNAS[https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2521732123]』誌(2026年6月22日付)に掲載された。
人類の先祖の体はどのような過程を経て大きくなったのか?
人類の祖先の体格がどのように変化してきたかについては、長年にわたり研究者の間で意見が分かれていた。
「時間をかけて徐々に大きくなった」と結論づける研究もあれば、「ある時点で急激に大きくなった」とする研究もあり、統一した見解が得られていなかった。
研究ごとに異なる時代の化石を使い、異なる骨の部位から体重を推定していたうえ、種の系統関係も十分に考慮されていなかったことが、結論のばらつきを生んでいた。
今回、レディング大学とオックスフォード大学の研究チームは、人間と絶滅した人類の近縁種をまとめたグループであるホミニン21種から得た386点の化石の体重を分析した。
ベイズ統計モデル(不確かさを確率で表しながら情報を更新していく統計手法)を用い、1,000通りの系統樹(生物の進化の歴史をあらわした家系図のようなもの)で検証することで、化石記録の不完全さによる誤差を最小限に抑えた。
筆頭著者のジェイコブ・ガードナー博士(レディング大学)はこう語る。
みんながより大きなパズルの、少しずつ異なるピースを見ていただけだったのです。すべての化石をまとめ、複数の考え方を検証し、種の系統関係を考慮して初めて、より明確な像が見えてきました
約200万年前に分岐点、ホモ・エレクトスの体重が一気に増加
分析の結果、人類の祖先の体重は初期の段階から緩やかに増加していたが、約200万~250万年前に大きな転換点が訪れたことがわかった。
ホモ・エレクトスやホモ・エルガステル(アフリカの化石を中心に分類されるヒト属の一種で、ホモ・エレクトスの別種とも亜種とも位置づけられる)が登場したこの時期、ヒト属の体重は一気に60kgを超える水準に達した。
それ以前の代表的な祖先であるアウストラロピテクスは平均体重わずか40kg、身長も現代の子どもほどしかなかった。
アウストラロピテクスは約400万~200万年前に生息したヒト族の一属で、ヒト属とは別に分類される。
体が大きくなった時期に生活の変化
体の大型化は、生活様式の転換と時期が重なっている。
この時代の祖先たちは以前よりも効率的な二足歩行を獲得し、肉食の比率を高め、食料を求めてより広大な範囲を移動するようになっていた。
大きな体が長距離移動を助け、多様な食物への対応力を高めたと研究チームは指摘する。
共著者のトーマス・プシェル博士(オックスフォード大学)はこう述べている。
この変化は、祖先たちが景観を移動し、環境を活用する方法における広範な変化と同時に起きており、体格と生態学的・行動的転換との密接な関係を示しています
進化の分岐で小柄なままにとどまった種も存在した
約200万年前の転換点で大型化した種がいた一方、まったく異なる道を歩んだ種も存在した。
インドネシアのフローレス島で発見され、「ホビット」の愛称で知られるホモ・フローレシエンシス(Homo floresiensis)は身長約1mの小柄な絶滅種で、ヒト属の中の大型化した種の傾向に反して小柄なままだった。
南アフリカで発見されたホモ・ナレディ(Homo naledi)も小柄な絶滅種で、同様に大型化の流れとは異なる道を歩んだ。
また、ヒト属最古参とされ石器を使ったことで知られるホモ・ハビリス(Homo habilis)も他の種と体格のパターンが一致せず、そもそもヒト属に含めるべきかどうか議論が続いている。
なぜこれらの種が大型化の流れから外れたのかは、いまだ十分にはわかっていない。
人類の進化は一本道ではなく枝分かれしていた
今回の研究が明らかにしたのは、人類の大型化が単純な右肩上がりではなかったという事実だ。
約200万年前の分岐を境に、大型化して広大な土地を移動しながら生き延びた種と、小柄なまま独自の生存戦略をとった種に枝分かれした。
ガードナー博士はこう語る。
人間の物語は、単なる絶え間ない成長の物語ではありません。後になって私たち自身のヒト属の中で大きな変化が起きた。そして家系の中には、驚くほど小柄なまま独自の道を歩んだ枝もあるのです
枝分かれした進化の道筋をたどった末に、今日の私たちホモ・サピエンスが存在しているのだ。
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まとめ
この研究でわかったこと
- 人類の祖先の体格は徐々に大きくなったのではなく、約200万年前に急激に大型化した
- 大型化した時期は、二足歩行の効率化・肉食の増加・長距離移動の開始と重なっていた
- 同じヒト属の中でも、大型化した種と小柄なままにとどまった種に枝分かれした
まだわかっていないこと
- ホモ・フローレシエンシスやホモ・ナレディがなぜ大型化しなかったのかは解明されていない
References: DOI.10.1073/pnas.2521732123[https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2521732123] / Bigger bodies were a late addition for humans | EurekAlert![https://www.eurekalert.org/news-releases/1132751]











