博物館で脊椎動物の骨格標本をつくるのに必要なのが、骨だけを残し肉を完全に除去する作業だ。
これまで、埋葬、酵素消化、化学処理、カツオブシムシなど、様々な手法で行われてきたが、新たに最適なお掃除役が見つかった。
ペットの爬虫類や鳥などの餌としておなじみのゴミムシダマシ科の幼虫「スーパーワーム」は、数時間から数日で肉だけを食べ、傷つけずきれいな骨格に仕上げてくれることを、イランのフェルドウスィー・マシュハド大学の研究チームが発見した。
この研究成果は『PLOS One[https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0349669]』誌(2026年7月1日付)に掲載された。
骨格標本づくりに最適なお掃除役を発見
今回、骨格標本のお掃除役として期待が持たれているのは、ミールワームに似た、ゴミムシダマシ科の甲虫の幼虫(Zophobas morio)で、スーパーワームと呼ばれている。
成長すると体長は50~60mmほどになり、同じゴミムシダマシ科のミールワームをひとまわり大きくしたような姿で、体の末端が黒っぽい色をしている。
ペットの爬虫類や鳥の餌としても良く知られている。
本来は植物を中心に食べる雑食性だが、しばらく餌を与えずにおくと動物の肉もよく食べるようになる、
体が大きくあごの力も強いので、骨についた肉をしっかり取り除くことができる。
イランのフェルドウスィー・マシュハド大学の研究チームは、スーパーワームが動物の骨格標本から肉を効率よく取り除き、きれいな骨格に仕上げられることを実験で証明した。
従来の骨格標本の清掃方法の問題点
肉をきれいに取り除いた動物の骨格標本は、科学研究や教育にとって貴重な資料となる。
骨に付いた肉を取り除く方法は、これまで、土に埋めて微生物に分解させる方法、酵素で肉を溶かす方法、化学薬品で処理する方法、カツオブシムシという甲虫に肉を食べさせる方法などが使われてきた。
カツオブシムシは死骸や乾物を食べる虫で、ロンドン自然史博物館をはじめ世界の主要な博物館で骨格標本づくりに用いられている。
だが従来の方法には、壊れやすい骨が傷ついてしまったり、化学薬品などの危険な物質が作業する人に害を及ぼす危険があった。
カツオブシムシを使う方法にも弱点があり、成虫が逃げ出したり、気づかないうちに卵を産みつけたりして、博物館の収蔵品そのものを食い荒らす恐れがあった。
そこで研究チームは、これらの欠点を補う新しい方法として、スーパーワームに注目したのだ。
8種の動物の骨で検証、最適な割合が導き出される
研究チームは、密閉した容器に入れた8種類の動物標本に、数を変えながらスーパーワームを投入した。
標本の大きさはさまざまで、9gのエジプトルーセットオオコウモリ(アフリカや中東にすむ果実を食べるコウモリ)から、4.2kgのオオカミまでが用意された。
数時間から数日のうちに、幼虫は骨格の内側も外側も、肉だけを効率よく食べていった。
実験の結果、動物標本1gあたり幼虫を10~15匹分の割合で使うと、肉を取り除く時間を短く抑えながら、骨を傷つけずにすむことがわかった。
幼虫が多すぎると壊れやすい骨まで食べられて傷つき、少なすぎると時間がかかりすぎてしまう。ちょうどよい数を導き出したのだ。
この割合であれば、幼虫は壊れやすい鳥の頭骨でさえ、傷ひとつつけずにきれいに仕上げることができた。
害虫の心配が少なく入手も簡単、実用的な新しい選択肢
研究チームは、スーパーワームが従来の方法に代わる実用的な選択肢になると述べている。
危険な化学物質を使わずに済むので作業する人にとって安全である。
しかもスーパーワームは密集した状態では蛹(さなぎ)にならず幼虫のままでいるため、カツオブシムシのように成虫が大量発生して逃げ出す心配がはるかに少ない。
幼虫でいられる期間はおよそ10~12週間と、カツオブシムシの5~7週間より長く、その間ずっと肉を取り除く作業に使えるのも利点である。
さらに、ペットの餌用に販売している繁殖業者から簡単に手に入るので、特別な準備もいらない。
今後、骨格標本のお掃除係はスーパーワームにとってかわられる日が来るかもしれない。
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References: Superworms might be the future of skeleton cleaning | EurekAlert![https://www.eurekalert.org/news-releases/1133459]











