ギリシャの神が創造したとされるタロスは、人工生命という点において、現代のロボットの概念に通じるものがある。
今から2500年ほど前、古代ギリシャの人々は、青銅の体を持ち、自分の力で動き回る番人タロス(タロース)の物語を語り継いでいた。
タロスはクレタ島のまわりを1日に3周して走り、近づく船を見つけると岩を投げつけて追い払う役目を担っていた。
体の中には血管が1本だけ通っていて、足首の留め具を抜かれると中身が流れ出して動かなくなる。壊れる仕組みまで考えられていたのだ。
ギリシャの神が創造した青銅の番人タロス
タロスは、ギリシャ神話に出てくる青銅でできた番人であり、いわば自動人形で、現代のロボット、ヒューマノイドにあたるものだ。
タロスは、地中海に浮かぶギリシャ最大の島クレタ島のまわりを1日に3回走って見回り、近づいてくる船を見つけると岩を投げつけて追い払う役目を担っていた。
上陸してきた者に対しては、自分の体を赤くなるまで熱し、抱きついて焼き殺したと伝えられている。
タロスを作ったのは、鍛冶と金属加工をつかさどる神「ヘーパイストス(ヘパイストス)」で、古くは火山の神だったが、ギリシャ神話ではキュクロープスらを従え、自分の工房で様々な武器や道具、宝を作っていたとされている。
ヘパイストスはできあがったタロスをクレタ島の王ミノスに与え、ミノス王がタロスに島の見張りを任せたという。
体に1本だけ通る血管と、抜けば死ぬ足首の留め具
タロスの体には血管が1本しか通っていない。首から足首まで一直線に伸びていて、その中を流れているのは、人の血ではなくイコルと呼ばれる神々の体液だ。
血管の終わりにあたる足首には、イコルが漏れ出さないよう青銅の留め具が差しこまれていた。
青銅の体はどこを叩いても傷つかないが、足首の留め具を抜かれると、イコルがすべて流れ出して動かなくなる。
古代ギリシャの人々は、タロスがどうすれば動きをやめるのかまで、細かく語り継いでいたのだ。
魔法を使う王女メデイアが足首の留め具を抜く
タロスの最期は、ギリシャ神話の英雄イアソンたちが乗るアルゴー船の冒険物語の中で語られる。
長い航海の帰り道、イアソン一行がクレタ島に立ち寄ろうとすると、タロスは岩を投げつけて船を寄せつけなかった。
船には魔法を使う王女メデイアが乗っていて、話し合いをしようとタロスに近づいた。
メデイアは不死にしてやると持ちかけてタロスを信じこませ、足首の留め具を抜き取った。イコルは残らず流れ出し、タロスは動かなくなった。
2400年前から存在したロボットの概念
タロスの物語は、どれくらい古くから語られていたのだろう?
タロスが倒れる場面を描いた壺が、紀元前400年ごろのものを中心に3点見つかっている。
今から2400年ほど前で、この物語を詩に書き残した紀元前3世紀の詩人アポロニオスよりも100年以上早い。
タロスは詩人が考え出した登場人物ではなく、当時の人々のあいだで広く知られ、語り継がれてきた存在だったのだ。
ロボットにも命が宿る?現代のSFに通じる発想
タロスの物語には、もう一つ考えさせられるところがある。
メデイアがタロスをだませたのは、タロスが不死になりたいと望んだからだ。
青銅でできた体を持ちながら、タロスは死をおそれ、いつまでも生き続けたいと願っていた。
古代ギリシャの人々は、現代人がSF作品で描く「人工生命に心が宿る」という発想をすでに持ち合わせていたようだ。
そして現代、我々もAIと会話していると、まるで心を持っているように感じることがある。
人が作ったものに心が宿るという発想は、タロスの時代から変わっていないのかもしれない。
References: TALOS - Bronze Cretan Giant of Greek Mythology[https://www.ruvosistemamuseale.it/] / Ancient Greece Had a Giant Bronze Robot—And His Story Sounds Like Science Fiction[https://www.mentalfloss.com/history/ancient-greek-bronze-robot-talos]











