大繁殖した外来種のカニを食い止めろ!15万匹のタコがイタリアの海に投入
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 イタリア北東部のアドリア海沿岸で、外来種のカニが異常繁殖し、地元の漁業に壊滅的な被害をもたらしている。

 この危機を救うため、ボローニャ大学の研究チームが天敵を使った作戦に打って出た。

令和のタコカニ合戦である。

 カニを好んで食べるタコの赤ちゃんを、2026年6月から8月にかけて約15万匹も海に放ったのだ。

 人間の手に負えなくなった外来種を、生き物どうしの保障関係を使って食い止めようという試みが動き出している。

イタリアの海を占拠する外来種ブルークラブの猛威

 イタリア北東部のアドリア海沿岸で、外来種の「ブルークラブ(アオガニ:Callinectes sapidus)」が異常繁殖し、大きな問題となっている。

 ブルークラブはワタリガニの仲間で、もともとは北アメリカの大西洋岸に生息するカニだ。

 数十年前、大型船のバラスト水(船のバランスを保つために積み込む海水)に紛れ込み、地中海へ運ばれたと考えられている。

 長らく目立った影響はなかったが、海水温の上昇や気候変動を背景に、近年になって数が急激に増えた。

 青みがかった鋭いハサミを持つブルークラブは、貝殻をこじ開ける能力に非常に長けている。

 ヨーロッパ有数のアサリの産地であるイタリア北東部の漁業に、壊滅的な打撃を与え始めたのだ。

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被害総額は約370億円に及ぶカニの脅威

 エミリア=ロマーニャ州の当局によれば、2022年以降だけで、この地域の被害額は約1700万ユーロ(約31億円)にのぼる。

 イタリアの農業・漁業団体「コルディレッティ」の試算では、北部のヴェネト州などを含めたイタリア全土の被害額は、約2億ユーロ(約370億円)に達する。

 州の農業・漁業担当委員アレッシオ・マンミ氏は、ブルークラブが稚貝を食い尽くし、一部の海域では出荷できる大きさのアサリの生産量が70%以上も減ったと説明している。

 イタリア・ボローニャ大学のプロジェクトに協力している漁師で、ムール貝の養殖業者でもあるダヴィデ・サヌッリさん(64歳)は、このカニの貪欲さを目の当たりにしてきた。

 ポー川がアドリア海へ注ぐデルタ地帯の沖合にあるラグーン(海と砂州で仕切られた浅い水域)では、ブルークラブによって壊滅的な被害が起きているとサヌッリさんは語る。

 海底にいるアサリの稚貝を含め、手当たり次第に何でも食べてしまうという。

 泳ぎが得意で、体重が最大1kgにもなるブルークラブには、自然界に天敵がほとんどいない。そのことが大繁殖に拍車をかけている。

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約15万匹のタコを海へ放つ作戦

 人間による駆除が追いつかない中、エミリア=ロマーニャ州の資金提供を受け、2024年に立ち上げられたのが「オクト・ブルー(Octo-Blu)」プロジェクトだ。

 硬い甲羅を持つブルークラブを減らすため、チチュウカイマダコの数を増やして対抗する作戦である。

 チチュウカイマダコ(Octopus vulgaris)は、地中海や大西洋に生息するタコで、日本で食べられているマダコによく似た近い仲間だ。肉食で、なかでもカニなどの甲殻類を好んで食べる。

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 ボローニャ大学の研究チームは約2年をかけ、チチュウカイマダコを人工的な環境で繁殖させる技術を確立し、港町チェゼナーティコにある研究所の白い水槽で何千匹もの稚ダコを育ててきた。

 放流できる段階まで育つと、稚ダコは大きなビニール袋にすくい上げられ、サヌッリさんの頑丈な青い漁船などに乗せて海へ運ばれる。

 最初の放流は6月11日と17日、リッチョーネ沖で行われた。

 放流場所に選ばれたのは、海岸が削られるのを防ぐため、以前に海底へ沈められたコンクリート製の人工構造物の周辺だ。

 長い年月をかけて多くの生き物が棲みつき、若いタコが定着しやすい環境になっている。

 研究チームは、タコが隠れ家として利用できるよう、セメントと粘土で作った人工の巣も海底に用意した。

 放流は8月24日まで続けられ、放たれた稚ダコの数は合計で約15万匹に達した。

 ボローニャ大学の研究者アントニオ・カサリーニ氏は、海岸の近くにタコの小さな群れを定着させ、ブルークラブの拡散を抑えるのが狙いだと説明している。

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課題を抱えながら生態系を守る取り組み

 ただし、この試みにも課題がある。

 チチュウカイマダコは、ブルークラブが最も猛威を振るっているラグーンのような、暖かく砂地の多い海域には生息しにくい。

 そのため、被害の中心地では効果がごくわずかにとどまる可能性があり、研究者たちもその点を十分に認識している。

 専門家の中には、ヨーロッパスズキ(ニシウミスズキ)の方がブルークラブを減らすには効果的だという意見も出ており、ボローニャ大学の研究チームはタコの働きを補うため、カニの卵を好んで食べるウナギの活用も検討している。

 放流された稚ダコのうち、成体まで育つのはごく一部にすぎない。それでも研究チームは、何匹かが大きく育つことに期待を寄せている。

 プロジェクトを率いるボローニャ大学のオリヴィエロ・モルデンティ教授は、タコは数の多い生き物を抑える捕食者であり、海の食物連鎖のバランスを保つ上で重要な役割を果たすと語っている。

 ボローニャ大学の研究者ピエトロ・エマヌエーレ氏は、メスのカニ1匹が数百万個の卵を産み、そのほとんどが孵化するほどの驚異的な繁殖力を持っていると指摘する。

 孵化したカニのうち成体まで育つのは一部とはいえ、放流されたタコがメスのカニを1匹でも捕食すれば、それだけで状況を大きく変える一歩になるのだ。

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食材として利用しても大繁殖には追いつかない

 ブルークラブは、脱皮したばかりで殻がやわらかい状態のものが「ソフトシェルクラブ」と呼ばれ、殻ごと唐揚げなどにして食べられている。

 世界で最も多く漁獲されている甲殻類の一つで、アメリカのメリーランド州では名物料理として親しまれている。

 イタリアでも、捕獲したブルークラブを食用として販売する取り組みが進められており、エミリア=ロマーニャ州は駆除したカニの回収や商品化にも予算を投じている。

 それでも増える速さに追いつかないため、タコの力を借りることになったのだ。

 本来の生息地であるアメリカのチェサピーク湾では、乱獲によってブルークラブの数が減り、資源を守るための管理計画が実施されている。

 同じカニでも、生息する海が変われば、守る対象にも駆除する対象にもなるのだ。

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References: Lotta al granchio blu, rilasciati in mare polpi di pochi giorni di età e una femmina nell'ambito del progetto sperimentale Octo-Blu - Agricoltura, caccia e pesca[https://agricoltura.regione.emilia-romagna.it/novita/notizie/primo-piano/lotta-granchio-blu-rilasciati-in-mare-polpi-progetto-sperimentale-octo-blu] / Riminitoday[https://www.riminitoday.it/cronaca/polpi-granchio-blu-rilascio-mare-riccione-cesenatico-progetto-octoblu.html] / PHYS[https://phys.org/news/2026-08-italian-scientists-octopus-crab-invasion.html]

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