株式会社 明治(代表取締役社長:八尾 文二郎)と東海大学医学部付属八王子病院(病院長:鈴木 孝良)の共同研究グループは、明治保有の乳酸菌「Lactobacillus paragasseri OLL2716株※1」を含むヨーグルト(以下、OLL2716株を含むヨーグルト)の継続摂取が、胃酸分泌抑制薬(以下、ASAs)※2や低用量アスピリン(以下、LDA)※3服用者の腸内フローラの乱れを改善する可能性を示しました。当研究成果は、2026年6月23日に国際学術誌「Digestion」に掲載されました(doi:10.1159/000552916)。
研究成果の概要
ASAs服用者(以下、ASAs群)、ASAsとLDA服用者(以下、ASAs+LDA群)、両剤非服用者(以下、対照群)を対象に、OLL2716株を含むヨーグルト摂取前後の便中の腸内フローラを調べました。また、LDAによる小腸粘膜傷害との関連を検討するため、摂取前における小腸の腸内フローラも解析しました。
便中の腸内フローラでは、ASAs群あるいはASAs+LDA群の腸内フローラは対照群の腸内フローラと有意に異なっていた一方、OLL2716株を含むヨーグルトを継続摂取後の3群の腸内フローラに有意な差は認められませんでした。OLL2716株を含むヨーグルトはASAs群あるいはASAs+LDA群の腸内フローラを改善する可能性が示唆されました。
小腸の腸内フローラでは、Enterobacteriaceae(腸内細菌科細菌)※4の相対存在量が多いことが認められました。また、OLL2716株を含むヨーグルトを継続摂取した結果、ASAs群において便中のEnterobacteriaceaeの相対存在量が有意に減少することが示されました。
研究成果の活用
本研究成果は、OLL2716株を含むヨーグルトが、Enterobacteriaceaeの増加に代表される腸内フローラの乱れを改善する可能性を示すものです。今回の研究成果をさらに発展させ、商品設計に活かせるよう今後もさらなる研究を進めていきます。
研究の目的】
LDAは脳血管疾患や心血管疾患の予防に広く用いられていますが、胃や小腸の粘膜傷害を引き起こすことがあります。そのため、胃粘膜傷害の予防を目的にASAsが併用されることがあります。一方、小腸粘膜傷害には胃酸以外の要因も関与すると考えられており、その一つとして腸内フローラの乱れが関わっている可能性があります。
本研究では、そのメカニズムの一端としてOLL2716株を含むヨーグルトの摂取が腸内フローラの乱れを改善している可能性を検証するため、便中および小腸の腸内フローラを解析しました。
※1 Lactobacillus paragasseri OLL2716株:Lactobacillus gasseri OLL2716株と同じ乳酸菌ですが、国際的な分類再編により菌種名が変更になりました。
※2 胃酸分泌抑制薬:胃内において胃酸の分泌を抑える薬のことです。
※3 アスピリン:解熱鎮痛作用や抗血栓作用を有する薬で、広く使われています。
※4 Enterobacteriaceae:腸内細菌科とも呼ばれ、大腸菌や赤痢菌、サルモネラ菌などを含む細菌群を示します。
論文内容
タイトル
低用量アスピリンおよび胃酸分泌抑制薬服用患者における、プロバイオティクス Lactobacillus paragasseri OLL2716株による腸内フローラの乱れの改善
(Restoration of gut microbiota dysbiosis by a probiotic Lactobacillus paragasseri OLL2716 in patients being treated with low-dose aspirin and acid-suppressive agents)
方法
ASAs服用者(ASAs群)、ASAsとLDA服用者(ASAs+LDA群)、両剤非服用者(対照群)を対象に、OLL2716株を含むヨーグルト112 mLを6週間毎日2本摂取していただきました。摂取前後で便を採取し、便中の腸内フローラ解析を行いました。また、摂取前についてのみ内視鏡により小腸の洗浄液を採取し、小腸の腸内フローラ解析を行いました。
結果
対照群18例、ASAs群17例、ASAs+LDA群16例を便の腸内フローラの解析対象としました。その内、ASAs+LDA群の2例を除き、小腸の腸内フローラの解析対象としました。
・便中の腸内フローラについてBray-Curtis非類似度に基づく主座標分析の結果、OLL2716株を含むヨーグルト摂取前は対照群とASAs群、対照群とASAs+LDA群で腸内フローラの構成に有意な差が認められました。
・OLL2716株を含むヨーグルトの継続摂取により、ASAs群において便中のEnterobacteriaceaeの相対存在量が有意に減少することが示されました(図2)。
・小腸の腸内フローラでは、Enterobacteriaceaeの相対存在量が多いことが認められました(図3)。ASAs+LDA群でのEnterobacteriaceaeの相対存在量の中央値は、25.45%であり、対照群(7.74%)やASAs群(9.10%)よりも大きい値を示しました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202607102381-O12-a56ddjbw】
図1. OLL2716株を含むヨーグルト摂取前後でのBray-Curtis非類似度に基づく便中の腸内フローラの主座標分析
**p < 0.01; ns, 有意差なし
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202607102381-O13-kO3IRFp2】
図2. OLL2716株を含むヨーグルト摂取前後での便中のEnterobacteriaceaeの相対存在量の変化
*p < 0.05; ns, 有意差なし
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202607102381-O14-itsddA56】
図3. 小腸のEnterobacteriaceaeの相対存在量
考察
本研究の結果は、OLL2716株を含むヨーグルトがEnterobacteriaceaeの増加に代表される腸内フローラの乱れを改善する可能性を示唆するものです。本菌に代表されるグラム陰性細菌が、アスピリン起因性の小腸粘膜傷害の増悪因子のひとつと考えられています。今後、これらの知見を基にLDA起因性の小腸粘膜傷害に対する新たな予防・軽減策の開発が期待されます。