あらゆるポピュラー音楽ジャンルを1シリーズに詰め込む菅野よう...の画像はこちら >>

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電脳化が進んだ近未来、公安9課が事件と社会の闇を追う『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズ。サイバーパンクの硬質な世界に人情ドラマの体温を吹き込んだのが、菅野よう子のサウンドトラックだ。

シリーズや関連作を含めた6枚のアルバムがあるが、2026年7月から8月にかけてTVシリーズと企画盤『be Human』の合計5枚がアナログ盤としてリリースされる。4つ打ちのダンスビート、多国籍ボーカル、ジャズ、エレクトロニカなど、1つのシリーズ作品としてあまりにも豪華な楽曲群を擁する音楽たち。今回は16曲のプレイリストを用意。シリーズ入門に向けた作品解説と共にお届けする。

TEXT BY 日詰明嘉

『攻殻機動隊』を誰もが知る人気作に押し上げた『S.A.C.』

1989年に原作が描かれた当時は“近未来”とされていた2026年、『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』がTVアニメ化されるとあって、またも注目を集めている。この作品以外にも、原作刊行から35年以上の時間が経過するなかで、様々な形で映像化されてきた『攻殻機動隊』の諸作品(設定やストーリーがパラレルになっているため、あえてシリーズとは言わない)はそれだけで日本のアニメの歴史の一部を占めていると言って過言ではない。

最初の映像化でいきなりの金字塔を立てたのは押井 守監督の長編映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』で、日本での劇場公開後にビデオ化されたパッケージが、米ビルボードチャートで1位を記録し、日本では凱旋的に話題となった。沸き立つ流れを受けて企画されたのが、神山健治監督による『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(以下、『S.A.C.』)だ。2002年にまずPPV(ペイパービュー/毎話ごとに課金する放送形式で、アニメでは非常に珍しい)で放送されたのち、日本テレビ系で全国的に放送されると、このIPをたちまちポピュラーなものに押し上げた。
電脳化が進んだ近未来、警視庁公安9課を率いる草薙素子たちが、ネット犯罪と社会の闇を追っていくスタイルは他シリーズと同様だが、本作はいわゆるサイバーパンクの様式美であるクールでハードボイルドな作風に耽溺せず、そこに人間味のあるドラマをふんだんに盛り込んでいるのが特徴だ。ネットと個、群衆と孤独、人間と機械の境目を、刑事ドラマや人情ドラマの肌触りで描いていく。そしてその「肌触り」を実際に決定づけているのが、菅野よう子のサウンドトラックだ。

「サイバーパンクに人情を」菅野よう子の『S.A.C.』解釈

菅野よう子は早稲田大学在学中にバンド・てつ100%でキーボード奏者としてデビュー。その後、著名歌手への楽曲提供や演奏の仕事や1000曲を超えるほどのCM音楽を手掛けるという、多彩の一言では済まされないほどの音楽の引き出しを持った人物だ。

アニメでは『マクロスプラス』(1994)や、その後の『カウボーイビバップ』(1998)で大きな知名度を獲得し、さらに『地球少女アルジュナ』や『∀ガンダム』などを経て『S.A.C.』へ参加するに至る。
海外向けのインタビューで菅野は本作を「草薙素子は女性サイボーグで、『人間なのか、それともロボットなのか?』という哲学的な問いを投げかけます」と読み解いたことを話し、楽曲制作のコンセプトについて「私が自分で考え出した根底にあるテーマは『be human=人間らしくあれ』でした」と語る。また、マスコット的に登場する多脚戦車のタチコマを好み、これらの登場シーンの楽曲を集めた企画盤『be Human』を後にリリースした。

『S.A.C.』のスコアを語るうえで、見落とせない発言がある。 「4つ打ちは大っ嫌いだった」という菅野が、「でも『攻殻』って4つ打ちなんだよね。作品毎に大体リズムを決めるんだけど、『攻殻』はどうみても4つ打ちだな~と」と、翻意を示している点だ。
第1話の冒頭を飾る『スタミナ・ローズ』は、まさにその宣言として書かれた4つ打ちのダンスミュージックで、ボーカルはガブリエラ・ロビンが担っている(後に菅野自身だと明かされた)。第1話の音楽は当初、原作や映画の印象にのっとり、落ち着いたクールな音楽が予定されていたが、菅野は「この作品はエンターテインメントのはずであって、最初にキャッチーなもの、視聴者の心を掴むものにしないとダメ」と主張し、この形になった経緯がある。
また、脚本家・佐藤 大との対談で菅野は、「run rabbit junk」 を、「警察無線で隠語まじりに世間話するノリ。『○○ダイナーでコーヒー飲む?』みたいな」と説明し、「ヤキトリ」については、「素子が荒巻さんやバトーを後ろから肩を抱えて『よ~し、飲みに行くぜ~』、その向こうに赤ちょうちんが見えてる」という昭和刑事ドラマ的なイメージから書いたと語っている。ともすれば角ばって生真面目な作品になりがちなところを音楽の力で人間味溢れるものに引き上げるというのが、『S.A.C.』第1期の音楽の基本設計だ。

多国籍なボーカル布陣と多彩な音楽性を叩き込んだ続編シリーズたち

『S.A.C.』のサウンドのもう1つの特徴は、多彩なボーカリストの起用にある。オリガによる主題歌「inner universe」(第1期OP主題歌)、「rise」(『2nd GIG』OPテーマ)を筆頭に 、スコット・マシューによる壊れそうな男声バラード「lithium flower」「be human」、イラリア・グラツィアーノによる退廃と艶を抱えた「velveteen」や、静謐なピアノ曲の「i do」、jillmaxのラップで疾走するファンキーな「GET9」など、これほどまで多国籍な歌モノを1つのシリーズ作品に投入する例はTVアニメでは珍しい。


「ミュージック・マガジン」2009年7月号の菅野よう子特集で、評者・宗像明将は『S.A.C. 』 シリーズ全体のサウンドを「ハードロック、アフロ、アンビエント、R&B、エレクトロ・ジャズ、コブシのきいた架空のトラッドが交錯する」と評し、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.3』収録の「トルキア」 での強烈なポリフォニーの炸裂、そして 『Solid State Society』 におけるラップ、テクノ、エレクトロニカ、ジャズ、ロックの混淆を、「菅野よう子という作家のある種の匿名性と、高度なアイデアが結実した作品」と位置づけている。
『2nd GIG』の後に作られた長編OVA作品『Solid State Society』ではさらに突き抜けていく。『S.A.C.』にはほとんどなかったシーンに合わせた音楽の発注が行われた本作の中では、作中のドラマに合わせ丹念に感情を追うことでミスリード演出の一部を担った劇伴の『Solid State Society』が白眉。また歌モノではヒップホップ畑のHeartsdales を迎えたOrigaの「player」、イラリア・グラツィアーノによるウィスパーが心地良いトランスの「replica」、そしてエレクトロニカが前景化したOriga の『date of rebirth』でエンディングを締める。ボーカル曲は色をさらに濃くし、ポリフォニーとノイズの融合、フリーフォームなロックの登場まで起きている。『S.A.C.』の音は、第1期の「赤ちょうちん」から、電脳社会の夜景そのものへ変貌した。

従来見えていた、いかにもな菅野節ではなく、まるでその世界に元からあったかのように鳴っているように聴かせるほどの多彩な音楽性は、彼女のそれまでのキャリアなくしてこの形にはならなかっただろう。たとえ『S.A.C.』を観ていなくても、このプレイリストだけでこの世界の夜景が浮かび上がる――菅野よう子という作曲家の最も凄みのある部分が現れた作品たちだ。

<プレイリスト>
01. スタミナ・ローズ(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.+』)
02. run rabbit junk(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.+』)
03. inner universe(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.+』)
04. ヤキトリ(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.+』)
05. lithium flower(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.+』)
06. velveteen(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.+』)
07. be human(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX be Human』)
08. bang bang banquet(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX be Human』)
M09. Rise(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T. 2』)
10. GET9(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T. 2』)
11. i do(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T. 2』)
12. トルキア(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T. 3』)
13. player(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society O.S.T.』)
14. replica(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society O.S.T.』)
15. Solid State Society(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society O.S.T.』)
16. date of rebirth(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society O.S.T.』)

※プレイリストは下記にて公開中
https://open.spotify.com/playlist/13CMKEBkmctFUJqf2NuQfk

●リリース情報
『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.+』

7月22日発売

品番:VTJL-42~43
価格:¥6,600(税込)

[Disc 1]
01. run rabbit junk / HIDE
02. ヤキトリ / 菅野よう子
03. スタミナ・ローズ / Gabriela Robin
04. surf / 菅野よう子

01. where does this ocean go? / Ilaria Graziano
02. train search / 菅野よう子
03. シベリアン・ドール・ハウス / 菅野よう子
04. velveteen / Ilaria Graziano
05. lithium flower / Scott Matthew

[Disc 2]
01. home stay / 菅野よう子
02. inner universe / Origa
03. fish ~ silent cruise / 菅野よう子
04. some other time / Gabriela Robin

01. beauty is within us / Scott Matthew
02. we’re the great / 菅野よう子
03. モノクローム / Ilaria Graziano
04. GET9[TV size] / jillmax
05. rise[TV size] / origa

『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T. 2』

7月22日発売

品番:VTJL-44~45
価格:¥6,600(税込)

[Disc 1]
01. サイバーバード / Gabriela Robin
02. rise / origa
03. ride on technology / 菅野よう子
04. アイドリング / 菅野よう子

01.i can’t be cool / Ilaria Graziano
02. 3tops / 菅野よう子
03. gonna rice / 菅野よう子
04. GET9 / jillmax

[Disc 2]
01. Go DA DA / 菅野よう子
02. サイケデリックソウル / Scott Matthew
03. what’s it for / emily curtisliving inside the shell / steve conte / shanti snyder[reading]
04. ペットフード / 菅野よう子

01. security off / 菅野よう子
02. to tell the truth / 菅野よう子
03. i do / Ilaria Graziano
04. we can’t be cool / 菅野よう子

『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T. be Human』

7月22日発売

品番:VTJL-46
価格:¥4,950(税込)

01. be human / Scott Matthew
02. trip city / Scott Matthew
03. patch me / 菅野よう子
04. タチコマの家出 / 菅野よう子
05. お散歩タチコマ / 菅野よう子
06. bang bang banquet / 菅野よう子
07, FAX me / 菅野よう子
08. ロッキーはどこ? / 菅野よう子

01. spotter / 菅野よう子
02. let’s oil / 菅野よう子
03. cream / HIDEspider bites / 菅野よう子
04. good by my master / 菅野よう子
05. piece by ten / 菅野よう子
06. what can I say? / SUNNY
07. Hi! / 菅野よう子
08. I’m not straight / 菅野よう子
09. AI 戦隊タチコマンズ / Tamagawa Sakiko
10. プロボウラータチコマ / 菅野よう子
11. don’t sponge me / 菅野よう子
12. po’d pod / 菅野よう子
13. ciao! / 菅野よう子

『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T. 3』

8月26日発売

品番:VTJL-50~51
価格:¥6,600(税込)

[Disc 1]
01. the end of all you’ll know / Scott Matthew
02. トルキア / Gabriela Robin
03. know your enemy / 菅野よう子
04. レーザーシーカー / 菅野よう子

01. break through / 菅野よう子
02. flying low / 菅野よう子
03. エウロペ / 菅野よう子
04. 半島の東 / 菅野よう子
05. 未完成ラブストーリー / 菅野よう子

[Disc 2]
01. CHRisTmas in the SiLenT ForeSt / Ilaria Graziano
02. access all areas / 菅野よう子
03. sacred terrorist / 菅野よう子
04. dear john / Scott Matthew

01. 35.7℃ / 菅野よう子
02. スマイル / 菅野よう子
03. flashback memory plug / Origa / benedict Delmaestro
04. dew / Ilaria Graziano

『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society O.S.T.』

8月26日発売

品番:VTJL-52~53
価格:¥6,600(税込)

[Disc 1]
01. player / Origa with Heartsdales
02. replica / Ilaria Graziano
03. zero signal / 菅野よう子

01. solid state society / 菅野よう子
02. tempest / 菅野よう子
03. born stubborn / 菅野よう子
04. she is / Gabriela Robin

[Disc 2]
01. from the roof top ~ somewhere in the silence[sniper’s theme] / Ilaria Graziano
02. undivided / 菅野よう子
03. blues in the Net / 菅野よう子
04. human step~aramaki’s theme / 菅野よう子

01. date of rebirth / Origa
02. take a little hand / Gabriela Robin
03. remedium / 菅野よう子

●作品情報
TVアニメーション『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』

カンテレ・フジテレビ系 全国ネット毎週火曜よる11:00~“火アニバル!!”枠にて放送中

【スタッフ】
原作:士郎正宗「攻殻機動隊」(講談社 KCデラックス刊)
監督:モコちゃん
シリーズ構成・脚本:円城 塔
キャラクターデザイン・総作画監督:半田修平
美術監督:片野坂恵美
美術監修:増山 修
色彩設計:橋本 賢
撮影監督:伊藤ひかり
編集:廣瀬清志
音響監督:丹下雄二
音響効果:八十正太
録音:太田泰明
音楽監督・音楽:岩崎太整
音楽:小西 遼、YUKI KANESAKA
音楽制作:フライングドッグ
エンディングテーマ:「Blue」MILLENNIUM PARADE
アニメーション制作:サイエンスSARU
製作:THE GHOST IN THE SHELL COMMITTEE

©2026 Shirow Masamune/KODANSHA/THE GHOST IN THE SHELL COMMITTEE

関連リンク

『攻殻機動隊』公式グローバルサイト
https://theghostintheshell.jp

『攻殻機動隊』公式X
https://x.com/thegitsofficial

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