いつまでシラを切り続けるつもりなのか。高市首相陣営による誹謗中傷動画問題で、「週刊文春」(文藝春秋)が数々の証拠を突きつけているにもかかわらず、相変わらず高市首相は「知らない」「確認できない」と繰り返し言い張るだけ。
昨年2025年10月の自民党総裁選と今年2月の衆院選で、高市早苗首相の陣営が小泉進次郎氏と林芳正氏といった総裁選のライバル候補や安住淳氏や岡田克也氏ら野党候補者の“ネガキャン動画”を作成・拡散していたという問題。
「週刊文春」は、動画を作成したとされる男性の証言のみならず、男性と秘書との打ち合わせの音声、メッセージのやりとりなど、数々の客観的証拠を突きつけている。
にもかかわらず、高市首相は客観的な証拠を示したり、まともな調査をすることもなく、「秘書を信じる」「私も秘書も会ったことない」「知らない」「やりとり確認できない」とただただシラを切り続けているのだ。
たとえば、5月26日の参院内閣委員会でも、立憲民主党の杉尾秀哉・参院議員に「オンライン会議をしたのか」と問われた高市首相は、「これはインターネット上の莫大な数のやりとりがあった中で、そういったやりとりの一つ一つを確認することは困難ですが、週刊誌の記事にあったような内容は確認できないということでございます」と答弁。
「やりとりの一つ一つを確認することは困難」などというの、誤魔化しもいいところだ。動画作成者の男性にヒアリングするなり情報提供してもらえれば確認することはそう難しくないし、秘書がデータを消去していたとしてもフジテレビ中居問題の第三者委員会のように復元することだって可能だ。
ましてや“週刊誌ネタ”などと言って矮小化するなどもってのほかだろう。
いずれにしても、これは政権与党のトップが正体を隠して、世論を誘導したという問題なのだ。
選挙中の誹謗中傷動画といえば、兵庫県知事選をめぐりNHK党の立花孝志氏によるデマや誹謗中傷が、民主主義を破壊する行為として大きな問題になったが、その意味で高市陣営のやったことは立花氏と本質的に変わらない。単に「知らない」「確認できない」と言い張るだけで済ませていい問題ではない。
しかし、この高市陣営による誹謗中傷動画問題ではもうひとつ指摘しておきたいことがある。それは、この“ステマ手法”、野党や政敵・政権批判者を攻撃する卑劣な情報工作が、「自民党のお家芸」であるということだ。
たとえば、2013年の参院選を前にニコニコ動画で生中継された党首討論会では、当時自民党のネットメディア局長を務めていた平井卓也・初代デジタル大臣が、社民党・福島瑞穂党首の発言中に「黙れ、ばばあ!」、安倍晋三首相の発言に「あべぴょん、がんばれ」などと書き込んでいたことが発覚している。
自民党内の足の引っ張り合いならまだしも、国政選挙を控えて実施された党首討論で、野党の党首に対して「黙れ、ばばあ!」などと誹謗中傷コメントを書き込む──。しかも、自民党政権はこのような“前科持ち”を後に初代デジタル大臣に抜擢しているのである。
さらに言えば、やはりデジタル大臣を務めたことのある平将明氏も、自民党ネットメディア局長時代、自民支持者にネガティブキャンペーンを推進した過去がある。
自民党は2017年の衆院選公示直前に、自民党の公認組織で他党や政敵へのネガティブキャンペーンをおこなう“ステマ部隊”として使っているといわれてきた「自民党ネットサポーターズクラブ(J-NSC)」の緊急総会を開催。そこでは「ネトサポ」と呼ばれる会員から「“従軍慰安婦像の辻元清美”や“手榴弾を投げる人民解放軍姿の志位和夫”の画像は誹謗中傷になるか?」といった質問が飛び出したのだが、当時ネットメディア局長としてJ-NSCを統括していた平氏は「あの、個人のご判断だと思います、はい」と笑いながら返答し、容認したのだ。
野党議員に対する悪質なコラ画像による投稿を容認することは事実上、公党としてネガキャンを実行させているようなもの。こうした卑劣なネット戦略を推進させてきたのが、自民党の正体なのだ。
自民党による世論誘導・情報操作の実例はまだまだある。とくに忘れてはならないのが、「Dappi」問題だ。
「Dappi」とは安倍政権下の2015年秋、Twitter(現・X)に現れたネトウヨ匿名アカウント(開設時期は凍結処分前も含む)。
なかでも象徴的なのが2020年10月の投稿だ。森友公文書改ざん問題で自殺した近畿財務局の赤木俊夫さんについて、Dappiは立憲民主党の小西洋之参院議員と杉尾秀哉参院議員が〈1時間吊るしあげた翌日に自殺〉と投稿。だが、小西・杉尾両議員が近畿財務局の職員と面談した事実はなく、完全なデマだった。
しかし、その後、衝撃の事実が明らかになる。小西・杉尾両議員が発信者情報の開示請求をおこなったところ、Dappiの発信元が個人ではなくウェブ・広告の制作会社であるワンズクエスト社であることが判明。しかも、このワンズクエスト社の社長が、なんと「陰の自民党幹事長」とも称される自民党の事務総長である元宿仁氏の親族であることが発覚したのだ。
小西・杉尾両議員がワンズクエスト社を提訴した裁判では、東京地裁が2023年10月、会社側に計220万円の支払いと問題の投稿の削除を命じたが、この判決で東京地裁は「投稿は会社の業務として、社長の指示の下、ワンズクエスト社の従業員あるいは社長によって行われた」と認定。さらに、投稿者についても「社長の可能性は相応にある」としている。つまり、自民党本部の事務方トップである元宿事務総長が、デマやフェイクによって野党やリベラルメディアを貶める世論工作をおこなうために、自身の親族にアカウントを運営させていた、と見られているのである。
このDappiと自民党の関係については、テレビをはじめとする大手メディアが大きく扱われなかったために周知されていないのが実情だが、本来なら自民党の解党に値するようなとんでもない問題だ。
また、自民党による組織的な情報操作として有名なのが、電通からの提案で始まったとされる自民党のネット対策の特別チーム「Truth Team」(T2)プロジェクトだ。
安倍政権下の2013年参院選挙時、自民党は「T2」を立ち上げ、専門の業者に委託するかたちでツイッターやブログの書き込みなどを24時間監視。自民党に不利な情報があれば管理人に削除要請したり、スキャンダルなどネガティブな情報が検索エンジンに引っかかりにくくさせるための「逆SEO」までおこなった。
「T2」はその後も選挙や対立する政治課題が持ち上がったときに特別な指示を出し、SNS監視や対策を電通にやらせていたといわれており、本サイトの取材では、「2018年の沖縄県知事選挙でも、電通が請け負って子会社の電通デジタルなどがSNS対策をやっていた。あのときは、玉城デニー知事をめぐってさまざまなデマ情報が拡散したが、これらのなかにも電通が仕掛けたものがいくつもある」(自民党関係者)という情報を得ている。
さらに自民党関係者がネトウヨ向けサイトを運営していた疑惑もある。有名なのが、「政治知新」なるネトウヨ向けサイト。共産党の吉良よし子参院議員の不倫デマや沖縄県知事のさなかに玉城デニー氏のたい麻吸引というデマを流したのをはじめ、フェイクやデマを交えてしょっちゅう野党や政権批判者を攻撃してきたことで知られる。
2019年、このサイト「政治知新」のドメイン情報から、登録されている運営者が菅義偉官房長官(当時)の息のかかった自民党神奈川県議の弟であることが発覚。さらに、その運営者とされる本人はなんと、2019年4月に開催された安倍首相主催の「桜を見る会」に招待されていたことを、自らFacebookで報告していた。
また、2019年7月の参院選前には、正体不明の発行元による“野党&メディア攻撃”まとめ本を、自民党本部が所属国会議員にバラまいていたことが判明。『フェイク情報が蝕むニッポン トンデモ野党とメディアの非常識』なるタイトルの冊子は150ページもあり、たとえば「トンデモ野党のご乱心」なる第一章では、「立憲民主・枝野代表の無責任を嗤う」と題して〈辺野古移設への反対活動には過激派も入り込んでいます。
冊子の奥付には「terrace PRESS」なる聞きなじみのないウェブサイトの名称が記されており、そのサイトからピックアップされた記事を〈見出しを含め、加筆、修正したものを掲載〉しているとのことだった。しかし、この「terracePRESS」は検索エンジンにかけても、まったくヒットせず、収入源となるはずのウェブ広告の類も一切なかった。そうしたことから、同サイトの本を所属議員に配布した自民党の関係者がこのサイトの運営に関与し、身内だけで密かに“野党叩きの作戦指南サイト”として利用している可能性が指摘された。
さらに、昨年2025年の自民党総裁選では、高市氏の対抗馬だった小泉進次郎氏の“ステマ”も発覚している。
小泉陣営で「総務・広報班」班長を務めていた牧島かれん・元デジタル大臣が、小泉陣営関係者に対して「ニコニコ動画でポジティブなコメントを書いて欲しい」と依頼していたことを「週刊文春」(文藝春秋)がスクープし、小泉陣営も事実関係を認めた。
書き込みを依頼したメールでは〈ようやく真打ち登場!〉〈総裁まちがいなし〉〈去年より渋みが増したか〉〈泥臭い仕事もこなして一皮むけたのね〉などというコメント例まで提示。こんな恥ずかしい称賛コメントをやらせで仕込もうとはダサすぎて言葉もないが、〈ビジネスエセ保守に負けるな〉という高市氏を揶揄したようなコメント例もあった。
このように挙げだすとキリがないほどだが、自民党ではこうしたネットやSNSを使った謀略が日常化している。フェイクやデマ、誹謗中傷、罵詈雑言を駆使して野党や批判者らを貶め、自分たちに有利にはたらくように世論誘導してきた。
そして、この体質の延長線上に起きたのが、今回の高市陣営による誹謗中傷動画だったのである。
そういう意味では、高市自民党が行ってきたステマ、世論操作は今回、「週刊文春」が暴露したものだけなのか、という疑念もある。
2月の衆院選では、立憲民主党出身の安住淳氏や岡田克也氏らに対して、デマやフェイク情報がネット上で大量に飛び交っていた。それが選挙にも大きな影響を及ぼしたとも指摘されている。高市陣営に限らず、こうした動画に自民党の関与はなかったのか。合わせて検証されるべきだろう。
森友問題や加計問題、桜を見る会問題のときのように、野党は合同で検証チームを立ち上げて徹底追及すべきだし、本来なら、参考人招致や証人喚問をすべき案件である。
しかし、ここまで野党が弱体化してしまったいまの国会では、これ以上の追及は難しいかもしれない。だからこそ、新聞やテレビなどのメディアは、もっとこの高市首相陣営・自民党による情報工作問題を真正面から追及し、実態を明らかにしなくてはならない。

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