2026年度沖縄タイムス伝統芸能選考会の胡弓部門で、両方の目が不自由な三刀屋(みとや)美鈴(27)がグランプリに輝いた。2021年度の新人賞から優秀賞、最高賞と歩みを重ね、グランプリは初挑戦で合格した。
「えっ、うそ、うそ、と2、3秒固まりました。まるで『かぎやで風』のように、つぼんでいた花が朝露を受けてぱっと開いたような喜びでした」と声を弾ませた。(社会部・真栄里泰球)
 曲の習得はほぼ耳が頼りだ。森田夏子師匠の演奏を録音して聴き、旋律を覚え、三線で確かめてから胡弓へ移す。手や姿勢は師匠の腕や手の動きに触れて「体で覚えた」。県立芸術大学で学んだ古典音楽の理論も振り返り、課題曲の構造を改めて勉強した。
 三刀屋はグランプリの審査では緊張で手が震えたという。しかし「もしお客さまがいたら震えも伝わってしまう。それは演奏家としてどうなんだろう」と自らに厳しく問いかけて演奏した。自己採点では「ぎりぎり」だっただけに「すごくほっとした」という。
 努力と成長を間近で見てきた師匠は「指導する側にとっても試行錯誤の連続だったが、ハンディがあっても遠慮なく教えていいんだと、私も教えられた」と振り返った。
 賞を重ねるにつれ、胡弓への考え方も変わってきたという。
優秀賞までは、まず曲を覚えて弾くことに意識が向いていた。最高賞以降、師匠から求められたのは「寄り添う」演奏だった。以前は胡弓そのものを強く響かせようとしていたが、歌や三線を聴き、その良さを引き出すために自分の音をどう置くかを考えるようになった。
 東京と沖縄の2拠点で活動を続ける。東京ではまだ沖縄の胡弓を知らない人も多く、楽器や音色の魅力を伝えることにも力を入れる。
 三刀屋はグランプリへの挑戦を「エベレストを登っているような緊張感があった」と振り返る。難関を越えた今、目指す演奏家像も明確になっている。
 「三線や箏、笛、太鼓などとの音の調和、マリアージュを大切にしたい。お客さまが『もっとこの舞台を見たい』と思ってくれる演奏をしたい」
(写図説明)沖縄タイムス伝統芸能選考会の胡弓部門でグランプリを獲得した三刀屋美鈴=8月19日、沖縄タイムス社
(写図説明)師匠の森田夏子(左)と演奏会に臨む三刀屋美鈴=2025年8月、名護中央公民館(提供)
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[タイムス伝統芸能選考会]三刀屋、胡弓でグランプリ 「寄り添う」演奏意識 両目の不自由越え
師匠の森田夏子(左)と演奏会に臨む三刀屋美鈴=2025年8月、名護中央公民館(提供)
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