市場で買った魚、調べてみたら世界2例目の稀種だった 琉球大が...の画像はこちら >>


 魚市場には、ときに学術的な発見まで並んでいるようです。


 那覇市内の鮮魚流通販売施設「泊いゆまち」で研究用に購入された魚が、日本では初めての記録となる珍しい種だったことが分かりました。


 琉球大学が9月4日に発表したもので、確認されたのはヒメジ科ウミヒゴイ属の「Parupeneus moffitti」。研究チームは、新たな標準和名として「コトウヒメジ」を提唱しています。


■ 市場で珍しい魚に気づき、研究用に購入

 研究のきっかけは、2025年8月のこと。当時、琉球大学の大学院生だった金子哲平さんが、泊いゆまちで鮮やかな赤い体と2本のあごひげをもつ珍しい魚が販売されているのに気づき、研究用に購入しました。魚は大学に持ち帰られ、標本にされたといいます。


 その標本に注目したのが、ヒメジ科ウミヒゴイ属を研究していた大学院生の篠田将太郎さんです。ひれやひげの長さ、えらの内側にある突起の数、体の色などが、これまで日本から知られている同属の魚とは異なっていました。


 そこで、世界で知られているウミヒゴイ属35種と比較したところ、Parupeneus moffittiであることが判明しました。


 この種は、マリアナ諸島で採集された3標本をもとに、1993年に学名が付けられた魚。それ以降、新たな採集記録が確認されておらず、今回が世界で2例目、標本としては4点目となります。つまり、「新種の発見」ではなく、すでに知られていた非常に珍しい種が、日本の海から初めて記録されたということです。

■ 仕入れと競りの記録から、魚を捕った漁師までたどる

 ただし、購入した場所は那覇市の市場。そこに並んでいたからといって、近くの海で捕れた魚とは限りません。


 研究チームは魚の正体だけでなく、どこから運ばれてきたのかについても調査しました。

購入店の仕入れ記録とイマイユ市場の競りの記録をたどり、魚を捕った漁師を特定。本人への聞き取りから、漁獲場所と水深を確かめたといいます。


 こうして分かったのが、北大東島の北東沖、水深180メートルで漁獲された魚だったということ。市場で見つけた珍しい1匹について、流通経路をさかのぼり、海のどこにいたのかまで突き止めたわけです。

■ 「コトウ」は「孤島」から 離れた島々を知る手がかりに

 新たな和名「コトウヒメジ」の「コトウ」は、「孤島」に由来します。これまでに記録された大東諸島とマリアナ諸島が、いずれも主要な陸地から遠く離れた孤島であることにちなんでいます。


 また、研究ではこの種の遺伝子を初めて解析。ハワイに生息する姿の似た「Parupeneus chrysonemus」との近縁関係が示唆される一方、両者が別種であることを裏付ける遺伝的な違いも確認されました。


 研究チームは今回の発見について、大東諸島とマリアナ諸島などの海洋島との間に生物地理学的なつながりがあるという従来の仮説を、さらに裏付けるものとしています。珍しい魚が見つかったというだけでなく、遠く離れた島々でどのような魚が暮らしているのかを考えるうえでも、貴重な記録となりました。


 研究は篠田さん、金子さん、琉球大学理学部の小枝圭太助教によるもので、成果をまとめた論文は9月3日、動物分類学の学術誌「Species Diversity」で公開されています。


<参考・引用>
琉球大学「市場で買った魚は世界で2例目の稀種だった!~北大東島で漁獲された日本初記録のヒメジ科魚類~」(2026年9月4日発表)
篠田将太郎・金子哲平・小枝圭太「First Japanese Record of Parupeneus moffitti (Teleostei: Mullidae) from Kitadaito Island」『Species Diversity』31巻2号、263–269ページ(2026年9月3日公開)。

DOI:10.12782/specdiv.31.263。

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By おたくま編集部 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2026090801.html
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