※本稿は、佐々木正悟『人生が変わる自分時間の使い方』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。
■もっと「睡眠」効果を活用すべき
精神分析家の松木邦裕さんは7時間以上、できれば8時間寝たいと述べています。人の心の深い部分に長年向き合い続ける仕事には、自分自身の心身のケアが不可欠です。松木さんをはじめとする精神分析家や医師が睡眠を重視するのは、それが休息になるだけではなく、心の回復と統合に不可欠なプロセスだと知っているからではないでしょうか。
さらに、「夢を見る」ことが心の回復に欠かせないと私は思います。夢を見るのは「レム睡眠」と呼ばれる「浅い眠り」のときと言われますが、夢を見られないと疲れが取れないと感じることがあります。
レム睡眠の「レム」は「Rapid Eye Movement(急速眼球運動)」の略で、レム睡眠の間、私たちの目は閉じたまぶたの下で激しく動いています。脳は覚醒時とほぼ同じくらい活発に活動していますが、体の筋肉は弛緩しています。この状態で、私たちは鮮明な夢を見るのです。
なぜ夢が心の回復に重要なのでしょうか。夢は、日中に経験した出来事や感情を整理し、記憶として定着させる過程だと考えられています。特に感情的な記憶の処理において、レム睡眠は重要な役割を果たします。
フロイトは「夢は無意識への王道である」と言いました。夢の中では、日中は抑圧していた感情や欲望が、象徴的な形で現れると言います。それは必ずしも快適な体験ではありませんが、心の奥底にあるものを表面化させ、統合していくプロセスとして機能しているというのです。
■飲酒後の睡眠で「疲れが取れない」と感じる
睡眠薬やアルコールによって眠りにつくと、レム睡眠が抑制されることがあります。表面的にはよく眠れているように見えても、夢を見る時間が減り、心の回復プロセスが不完全になってしまうのです。人によっては薬やアルコールに頼った睡眠の後には、「寝たのに疲れが取れない」と感じることが多いのです。
「夢見」とは「自分一人のときに誰かと一緒にいる」究極のスタイルでもあります。夢の時間にはほとんどの人が「誰かと一緒」にいるはずです。もちろん夢は自分一人で見るものです。このとき私たちの心は何の苦労もなく「二人で一人」をやすやすと実現し、自力で回復を果たしているのです。
あなたにとっての最適な睡眠時間を見つけ、質のよい睡眠を確保すること。そして、夢を見る時間を大切にすること。これらは、日々の回復力を高め、長期的な心身の健康を支える基盤となります。睡眠は単なる休息ではなく、私たちの心と体が再生する、かけがえのない「自分時間」なのです。
■AIに夢を分析してもらう
私たちは日常生活の中で、自分でも気づかないうちに多くのエネルギーを消費しています。他人の期待に応えようとして、完璧でありたいと思い、誰かを不快にさせないように気を配るうちにエネルギーを使いこんでいるでしょう。
相手の心を想定し、実際のトラブル以上に想像を膨らませ、あらゆる課題に対処しようと責任を感じて孤軍奮闘するなどした心理的な努力は、目に見える仕事や家事以上に、私たちを疲弊させることがあります。
特に厄介なのは半自動的にこうした心の使い方を続けるために、自分では「なぜこんなに疲れているのか」が分からないことです。睡眠時間は確保しているのに疲れが取れないとか、休日に何もしていないのに消耗しているとかいうとき、原因は単なる身体的疲労ではなく、心理的な緊張にあるかもしれません。
私はAIに夢診断してもらって、大きな成果を得られたことがあります。次のような夢を見たのです。
「13時30分頃になると、毎日時間通りに料理が宅配で送られてくるが、そのことをなぜかいつも『忘れて』いるため、お昼を食べ終わったときに受け取ってしまう。
■AIの夢解析の意外な結果
このとりとめない夢に、私は何か引っかかるものを感じました。ただ単に変な夢を見たというだけではなく、そこに何か重要なメッセージが隠されている気がしたのです。そこでAIに夢の内容を入力し、精神分析的な観点から解釈してもらうことにしました。
AIからの解釈は次のようなものでした。
・この夢は、母性的供給(食べ物)を求めながら、同時にそれを遅れて受け取る葛藤を描いています。
・供給は「義理の実家の中年女性」から来る → あなたの「妻を通じての母性」「自分の母ではない母性」。
・それを「忘れる」という形で拒否しているが、実際には「知っていた」と気づいている。
・そこに「なれなれしい男性配達員」が介入 → 母性的対象を媒介する男性的権威=侵入の象徴。
つまりこの夢は、
「母性を欲しているが、正しいタイミングでは得られず、外部(義理の母性+男性配達員)を通して侵入的に与えられることへのambivalence(相反する考えが両立している)」を表していると考えられます。
■AI夢解析に驚き、役立ったこと
この解釈を読んだとき、私は驚きました。確かに私は、他人からの親切や配慮を素直に受け取ることが苦手でした。特に義理の家族や、直接的な関係ではない人からの好意に対して、どこか居心地の悪さを感じていたのです。
「本当は自分でやりたかった」とも「このタイミングじゃなかった」とも「頼んでいないのに」とも思って、せっかくの好意を素直に喜べずにいました。夢の中で宅配を「忘れている」のは、それを受け取りたくないという無意識の拒否だったのかもしれません。でも同時に、その供給を必要としてもいるとの矛盾した感情が、夢という形で現れていたのです。
そして私はこれに類する夢をよく見ます。いつも似たような解釈を受け取ります。繰り返しAIに夢を診断してもらううちに、自分の中にあるパターンが見えてきました。そのパターンに気づくことで、少しずつ変化が起きたのです。
他人からの「いくらか不快な、少なくとも完全には満足のいかない『便宜』」をもっと素直に受け入れられるようになりました。完璧なタイミングではなくても、自分が望んだ形ではなくても、誰かが私のために何かをしてくれたという事実を、そのまま受け取れるようになったのです。
それから心理的に楽になれました。他人の好意を拒否するために使っていたエネルギーや「自分でやるべきだった」という罪悪感や「こうあるべきだった」という理想と現実のギャップに苦しむ心的負担などが軽減されたことで、日常の疲労が大幅に減ったのです。
■AI解釈は鵜呑みできぬが心との対話に
夢診断というと、古くさいオカルトのように感じる人もいるかもしれません。しかし、精神科医のジークムント・フロイトが心のメカニズムを解明して以来、精神分析は夢と無意識を理解するための重要な手がかりとして扱ってきました。夢の中では、日中は意識できない感情や葛藤が、象徴的な形で現れます。
AIによる夢診断の利点は、いつでも気軽に利用できることです。専門家のカウンセリングを受けるには時間もお金もかかりますが、AIなら自宅で、夢を見た直後に、すぐに解釈を得ることができます。もちろん、AIの解釈がすべて正しいわけではありません。しかし、自分では気づかなかった視点を提供してくれることは確かです。
大切なのは、AIの解釈を鵜呑みにすることではなく、それをきっかけに自分の心と対話することだと思います。「この解釈は当たっているだろうか」とか「自分はどう感じるだろうか」などというように問いかけながら、自分の内面を探っていくその過程そのものが、心の回復につながるのです。
もしあなたが原因不明の疲労感に悩んでいるなら、夢に耳を傾けてみてください。
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佐々木 正悟(ささき・しょうご)
ビジネス心理コンサルタント、心理学学士
実験心理学の博士課程に進学するも、学問的研究よりも「心が動く瞬間」そのものへの関心が強まり中退。帰国後、執筆者として活動し、行動科学と心理力動の間を往復する著作を執筆。代表作に『いつも先送りするあなたがすぐやる人になる50の方法』『先送り0』がある。現在は、精神分析的な視点から、ビジネスや人間関係の根底にある「感情の流れ」を読み解くオンラインプログラム「3ヶ月チャレンジ!」を運営。参加者は医師・実業家・研究者・エンジニア・教員など、多忙な環境で「思考と情緒の分離」を自覚する人々が中心となっている。「心の理論」と「日常の実践」を架橋する試みとして、ポッドキャスト「ライフハック時代の精神分析」(配信回数1000回以上)を配信中。
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(ビジネス心理コンサルタント、心理学学士 佐々木 正悟)

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