■増え続ける「屋根の点検商法」
梅雨や台風の季節に増加するのが、屋根工事の点検商法による被害です。
点検商法とは、親切な工事業者を装って無料で点検を持ちかけ、点検後に「屋根が飛んで通行人に当たり、大変なことになるかもしれないです」などと不安をあおり、その場で工事の契約を結ばせる手口のことです。
悪質な業者の場合、「屋根の点検中にわざと屋根を壊す」「台風で被害が出た地域へ行き、不必要な屋根リフォーム工事を迫る」といったケースもあり、注意が必要です。
国民生活センターや全国の消費生活センターに寄せられた相談件数は年々増加しています。2024年度の相談件数は、2022年度の約2.4倍にあたる1万9215件でした。
■悪徳業者が人の信用を勝ち取る手口
悪徳業者は消費者を信用させるために巧妙な手口を使います。たとえば、工事している家の近所を狙い、「近所の工事現場からお宅の屋根が壊れているのが見えました。知り合いの業者に点検してもらったほうがいいと思います。ですが、もし誰もいなければ代わりに点検しましょうか?」と持ちかけて信用させるのです。
そこで業者を屋根に上らせてしまった時点で、主導権は相手に移ります。「屋根にヒビが入っていたので、テープで補修しておきました」などと言われると、費用を支払わないといけない……と思うかもしれません。
また、急な訪問だけでなく、電話をかけてから訪問するパターンも増えています。一度は電話越しに話しているため、急に来た場合よりも気を許してしまうのです。
点検商法はいくつもの手口があり、ますます巧妙化しています。屋根に関する急な訪問営業や電話が来た際には、相手の話に乗らず、警戒して対応しましょう。
■屋根が壊れてもすぐに雨漏りしない理由
屋根点検の悪徳業者は、屋根に関する知識の差を利用して騙そうとします。しかし逆に言えば、屋根の知識を身につけておけば、悪徳業者が来ても焦る必要はありません。「今すぐ工事をしないと、大変なことになりますよ」と不安を煽られても、冷静に対処できるようになるはずです。今日から使える、点検商法に騙されないための知識をいくつか紹介しましょう。
まず屋根の耐久性についてです。屋根は表面の屋根材が欠損しても、すぐに雨漏りする構造になっていません。
屋根は「層」構造になっており、表面の屋根材の下には「ルーフィング」と呼ばれる防水シートが敷かれています。
新築工事で屋根の施工を進める際、表面の屋根材よりも先にルーフィングだけを張り、その状態のまま工事を進める現場が少なくありません。ルーフィングさえ張っておけば、表面の屋根材がまだない状態で工事期間中に雨が降ったとき、完全とはいかないまでも、ある程度の雨をしのげるからです。実際、梅雨どきに長期間にわたって雨が降り続いても、ルーフィングだけで乗り越えている現場は珍しくありません。
よって、もし屋根の表面が欠けたとしても、修理を検討する時間はあるはずです。たとえ本当に修理しなければならない状況でも、決して慌てる必要はありません。まずは複数の業者から意見を聞く、相見積もりを取るなどして、冷静に対応しましょう。
■悪徳業者を一発撃退するフレーズ
点検商法の営業担当者は、作業服を着た若い男性が多いようです。若者がひたむきに、親切そうに話を持ちかけてくる様子に「話を切りにくい」「断りにくい」と感じる方は多いかもしれません。一見すると正直そうな好青年であれば、なおさらでしょう。
しかし「屋根がずれていますよ」といった売り言葉から点検商法だと分かったら、相手に遠慮してはいけません。「いま忙しいので」などと曖昧にすると、手を変え品を変えて話を続けようとします。
そこで相手のペースにのまれないための、簡単な“撃退フレーズ”があります。訪問業者が屋根の点検商法だとわかったら、毅然とした態度で、こう言ってみてください。
「お世話になっている工務店に確認します」
悪徳訪問業者は、営業先の背後に建築の専門家や既存の取引先がいることを嫌がります。嘘でも構わないので、「お世話になっている工務店がありますので、そちらに確認しますね」と伝えましょう。
きっぱり言っても申し訳なさを感じる必要はありません。訪問業者は断られることに慣れています。どんなに相手がしつこくても「点検をさせない」「その場で契約しない」ことが大切です。
■いま増加中の「高額契約を誘う手口」
屋根の訪問販売に対する注意喚起の報道が増えたからか、悪徳訪問販売の手口に変化が生まれています。そのひとつが、小さな工事を入口にして、最終的に高額な屋根工事や外装工事につなげる、というものです。
具体的な手口はこうです。最初に小さな工事をして接点をつくり、「親切で、困ったときにすぐに来てくれる業者」という印象を与えます。
そして最終的に「屋根が大変なことになっています」と、高額な工事の提案を持ちかけてくるのです。
さらに、次のようなトークを畳みかけるケースも見られます。
「屋根工事も外壁塗装も足場を組む必要があります。そのたびに足場工事の料金がかかりますから、一度にリフォームしたほうがお得ですよ」
そう言って割安感をアピールしながら、長期ローンを組むような高額契約を迫るわけです。この場合、最初の工事が少額でも、屋根全体のリフォームや外壁塗装、太陽光発電や蓄電池の設置、足場の工事などを組み合わせ、総額で1000万円近い契約になることもあります。
また、消費者心理につけ込んだ「火災保険を使えば自己負担なく修理できますよ」というトークにも要注意です。
物価高騰のなか「少しでも節約したい」という気持ちを利用した営業トークですが、保険は必ずしも使えるわけではなく、期待していた工事ができないこともあります。火災保険が適用されるのは自然災害による損害に限られ、経年劣化は対象外だからです。自治体や消費生活センターも、屋根工事の保険金利用をうたう勧誘について注意を促しています。
■「弱者」を狙う悪徳業者
こうした悪徳業者から特に狙われやすいのは、インターネットやニュースなどで最新情報に触れる機会が少ない高齢者です。
以前、埼玉県富士見市で、認知症の高齢姉妹が16社のリフォーム業者と契約し、繰り返し不要な工事を施され、3年間で5000万円以上の高額な工事代金を支払わされていたという事件がありました(注1)。
調査した建築士によると「床下の換気扇が20~30個も付けられていた。通常であれば、3個あれば十分。他の工事も不必要なものがほとんどで、市場価格の10倍以上の値段で行われており、悪質である」と話しています。
姉妹を狙った悪徳業者のなかには、11日間で5回、計673万円分の「シロアリ駆除」や「床下調湿」などの契約を交わした業者もありました。
姉妹は4000万円あった貯金を使い果たし、4社の信販会社を通じて、工事費700万円分のローン契約を交わしたといいます。その後、ローンの支払いが滞り、信販会社が姉妹の自宅を競売にかけましたが、富士見市によって競売は中止されました。
「どうしていいかわからない」と心配になった場合は、決して1人で悩まず、公的機関や家族、親しい友人など、信頼できる相手に相談しましょう。
注1:国土交通省「悪質リフォーム対策検討委員会」内、第1回悪質リフォーム対策検討委員会資料(7月20日開催)、資料5
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前川 祐介(まえかわ・ゆうすけ)
テイガク代表取締役社長
1980年、大阪府堺市生まれ。「金属屋根・金属外壁のリフォーム工事会社テイガク」Webメディア運営責任者。父が創業した建築板金工事会社・テイガクに入社し、金属屋根・金属外壁リフォームの現場と実務に深く携わってきた。創業25年、1000棟を超える施工実績から培った知見をもとに、これからの時代に求められる屋根・外壁リフォームの最適解を追求。著書に『いちばんよくわかる 屋根の教科書』(クロスメディア・パブリッシング)がある。
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(テイガク代表取締役社長 前川 祐介)

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