仕事効率を上げるには、どんなメールを心掛けるといいか。営業コンサルタントの黒田昭彦さんは「メールの文章は短く、箇条書きのように端的が良いか、丁寧な言葉遣いにすべきかは相手先による。
『自分が伝えたいこと』ではなく、『相手がどう受け取るか』に意識を向けることが大切だ」という――。
※本稿は、黒田昭彦『15分スケジュール すぐに成果を出す人の時間術』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■余白のない納期が自分を追い詰める
仕事を受ける際には納期を決めますが、ここでよくやってしまうのが、余白のないスケジュールで約束してしまうことです。
2日でできることであれば、2日後で約束してしまうことが多いかも知れませんが、仕事を引き受けた後に緊急の要件が入ってきたり、予想以上に時間がかかってしまうことはよくあります。
さらにいえば、いつから取り掛かれるのか現状のスケジュールの混み具合も確認しておかなければ、後でしまったと後悔することになってしまいます。
もちろん、もっと早くできるのに余裕のある納期で返事をするのは、何となく心苦しい気持ちになるかもしれません。ただ、予定通りに進んだら早く出すわけですからそこまで気に病む必要はありません。
依頼者には、提出前の期待値で喜ばせるのではなく、提出後の結果で喜んでもらえばいいのです。
ちょっとしたテクニックでいえば「いつまでに、できますか?」の問いには、逆に「いつまでに提出すると大丈夫ですか?」「その日までにというのは、会議か何かご入用のタイミングがあるのですか?」とマストの〆切なのか、単なる希望なのかも確認しておきましょう。
そうすれば、できるだけ3日後までに提出しますが、念のため4日後を〆切日としてくださいとするなどして、少し余裕をもって仕事をすることが可能となります。わざわざ、〆切を早くして、自分の首を自ら絞める必要はありません。
■仕事が速い人の納期には種も仕掛けもある
次に、優秀な人はなぜ納期よりも早く提出できるのかを紐解いてみたいと思います。

これは実は種も仕掛けもある手品なのです。優秀な人に頼むとすごい早さで仕上げるように見えますが、実はすべての仕事が早いわけではありません。
約束した〆切よりは早い。そして、ある特定の重要度が高い仕事を高速で仕上げて評価と信頼を得ているのです。
受けた仕事を今ある仕事より優先して、真っ先に取りかかれば、「もう、できたの!?」となります。
つまり、優秀な人がしている高速スピードの秘密は重要度によって優先順位を変えることで、早く仕事をしているように見せているのです。
しかし、これは営業の現場では当たり前のことです。たとえば、年間1億円の利益があり、定期的に仕事のオファーがある顧客と、年に1回しか仕事がない、10万円の利益の顧客ではどちらを優先すべきかは誰の目にも明らかです。
また、新規開拓で受注を狙っている企業からの依頼ならば、何をおいても真っ先に対応する。そして、評価と信頼を得る。そのような優先順位の入れ替えをできる人は弾力的に行っています。
優秀な人はもちろん仕事が早い部分もありますが、同じ人間なのですから2倍速で仕事ができるわけではありません。

早くできそうでも納期は多めにもらって、提出を早めにして喜んでもらいましょう。後は優先順位を調整して重要案件は先にするというスパイスを効かせて、仕事の早い人になりましょう。
早くできそうでも、納期は多めにもらう!
■「幸甚です」は一般的に使うべき言葉か
メールの文章は短くしようとか、箇条書きでもOKなどと言われたりもしますが、簡易で良いのか、丁寧にすべきか、言葉遣いも含めてなかなか難しく、迷ってしまうことも多いのではないでしょうか。
私も若手の頃ですが、「了解しました」と返信して、取引先の方から「偉そうに言うな!」と怒られたことがあります。
これは、私の配慮が足りなかったのですが、この取引先の業界は非常に厳格で、「承知しました」でも微妙で、「承知致しました」が一般的な言葉遣いだったのです。
私はこの取引先を担当させていただいたことで、拝受(受け取るの謙譲語)や、幸甚(幸いのさらにフォーマルな言い方)という言葉を覚えました。
メールの宛先に関しても、もちろん「役職」や「様」をつけます。私も業者の立場でしたが、その取引先から来るメールの宛名には必ず、様か殿がついていました。
また、こんなこともありました。若いチームメンバーたちが取引先の大手広告代理店の担当者を、「幸甚さん」と呼んでいたのです。メール文の最後がいつも、「○○していただければ幸甚です」なので幸甚さんなのですが、私が「それ、普通の言葉だよ。業歴の長い企業では使う所も多いよ」というと、チームメンバーはみんな驚いていました。

確かに当時、私がいた会社では「幸甚」という言葉は一般的ではなかったので、彼らにしてみれば意味が分からなかったのかもしれません。ですが、企業や業界が違えば、普通に使う言葉です。
■慎重に相手にあわせて言葉を選ぶ
郷に入っては郷に従えということわざがあります。他郷へ行った際にはその土地の風習や習慣に従うのがよいという意味ですが、業界や企業にはそれぞれ習慣や作法のようなものがあります。
たとえば、鉄鋼業、建設業、製造業、電力会社など、危険な作業を伴う現場では「ご安全に」という言葉が挨拶として広く一般的に使われています。
要は、メールの文章は短く、箇条書きのように端的が良いか、丁寧な言葉遣いにすべきかは相手先によるということです。
「自分が伝えたいこと」ではなく、「相手がどう受け取るか」に意識を向けることが大切なのです。
メールをすべて簡単に略式ですませることは、時短と効率化には少しそぐわないのだと思っていた方が安全です。
余計な摩擦が起こっては、それに対処する無駄な時間が増えてしまいますし、最悪の場合は私のように相手の怒りを買ってしまうかもしれません。
信頼のあるやりとりこそが、最も効率のよい仕事につながるということを忘れずに、最初は一番丁寧な形式で、その後は相手がよく使う言葉遣いで相手に合わせていきましょう。
これは、メールだけではなく商談の時の言葉遣いや資料の文面なども同じです。
役職でお呼びするのか、さん付けなのかも自社の文化で接すると思わぬ反感を買うかもしれません。

慎重に相手にあわせて言葉を選んでいきましょう。
メールは、相手がどう受け取るかを考える!
■割り込み案件は即自分宛にメールする
業務の切り替えコストは高くつくので、なるべく防止したほうがいいです。
しかし、業務中は、頻繁に色々な連絡や依頼が入ってきます。別に今すぐ片付ける必要はないのかもしれませんが、気になってしまうことも確かです。また、気持ちがそちらに少しでも向いてしまえば、集中は乱れてしまいます。
せっかく、脳に負担をかけないようにスケジュールを組み、段取りを立てて業務に集中しようとしているのに何とかならないものかとも思ってしまいます。
では、業務中に来る様々な連絡や依頼に上手に折り合いをつけて、集中するためにはどうすればいいのでしょうか。
脳に負担をかけないように、そのような割り込み案件は、今すぐ対応しなければならないトラブル対応でもない限りは、自分宛にメールを入れて一旦忘れるようにします。
たとえば、電話や口頭で依頼されたこと、ふと思いついたり思い出したことなどは、その場で自分宛にメールで送っておきます。
タイトルは簡潔に「○○対応」「△△資料作成メモ」などあとで思い出すことができればOKです。
そうしておけば、対応漏れを防ぎつつ、脳内のメモリーからその情報を消すことができます。
■脳の負担が激減する「外部記憶化」
重要なのは「考え続けない」ことです。

タスクを頭の中に置いたままだと、「忘れないようにしよう」と脳がずっと気にかけて、無意識のうちに疲弊してしまいます。
しかし、一旦メールしてしまえば、あとで必ず見返せるという安心感が生まれて、脳の負担はグッと減ります。
これは「外部記憶化」と呼ばれる考え方に通じるもので、業務効率化の上級テクニックです。
たとえば、普段使っている手帳も予定を記憶するためのもので、頭の中で覚えていなくても手帳を見れば正確な予定が分かります。このような媒体を外部記憶装置と呼びます。
ただ、メモや手帳、ノートは書いた時点で満足してしまって、見返すことを忘れがちです。
また、メモは失くしてしまう危険性もありますが、メールは未読分がすぐに分かります。
自分からのメールに注意を払うようにしておけば、忘れてしまうというリスクはかなり軽減されます。
■確認タイムを決めると業務リズムが整う
なお、この自分宛メールは、1日の中で「確認タイム」を決めておくとより効果的です。たとえば昼休み前や夕方の業務整理のタイミングで、自分宛のメールをまとめてチェックして、必要に応じてTODOリストなどに移します。
こうすれば、対応の抜け漏れも防止できて、1日の業務リズムも整いやすくなります。
すぐ対応する必要はないが、忘れてはいけない。
そんな割り込み案件は、頭に置いておくのではなく自分宛にメールを入れることで、一旦忘れて脳の負担を軽くしましょう。
そうすれば、集中した状態は守られて、仕事の質もスピードも落ちることはありません。
割り込み案件は、自分宛にメールを入れる。

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黒田 昭彦(くろだ・あきひこ)

営業コンサルタント、営業改善 代表取締役

1971年生まれ大阪府堺市出身、甲南大学卒。マーケティング会社にて企画営業として23年間多数の企業の営業支援に携わる。会社員時代のある晩、チームメンバーが「明日は徹夜をしても業務が終わらない!」と泣きじゃくり始めて手が付けられない状態になった時に、業務を分解して15分単位で予定に落とし込む方法を実践。短時間で業務を前に進める手応えを得たことから、再現性のある手法として体系化した。2019年、営業コンサルタントとして独立。現在は15分スケジュール、週間スケジュールを活用した営業の生産性向上と販売促進などを支援している。

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(営業コンサルタント、営業改善 代表取締役 黒田 昭彦)
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