転職面接で「あなたならA社(他社)の方が向いていますよ」と言われた場合、どのように切り返したらいいのか。キャリアカウンセラーの中谷充宏さんは「これは本当にA社を勧めているわけではない。
面接官の意図を冷静に読み取る必要がある」という――。(第3回/全3回)
※本稿は、中谷充宏『《AI対応版》20代~30代前半のための転職「面接」受かる答え方』(秀和システム新社)の一部を再編集したものです。
■前職の職場での人間関係で、不平・不満に思ったことはありませんか?
面接官が知りたいのはココ!

「他責傾向」から問題社員化するリスクのある人かを見極めたい
「他責傾向」をチェックする質問になります。
無事、採用選考を突破して入社しても、こうした不平・不満が溜まりに溜まって爆発する、もしくは独り耐え忍び問題行動に発展してしまう。面接官はこうした苦い経験をしているため、早い段階で見極めたい。そのための質問ということになります。
若手なので、先輩・上司から納得できないことを言われたことがあったとしても、取り上げるほどのものでないなら、「いえ、特にありません。皆と仲良くやっていました」と模範解答をしておくことをお勧めします。
この手の質問は、本音や真実を聞き出して自社に合うかを判断するのが目的です。そのやり取りの中で、「会社の方針がズレていた」「上司の指示が明確ではなかった」「コロナ禍真っ只中だったので市場が悪すぎた。責任を私一人に押し付けられたのは不満」等と発言すると、冷静に分析しているつもりでも「他責傾向あり」と見られて即座に不採用ということもあり得ます。
ただ、このまま質問しても模範回答しか返ってこないのが一般的です。

そのため面接官が「職場に必ずムカつく人とかいますよね? 実は私も前職でこういった人がいて……」と誘導してきたりします。
こうなると、「確かに、前職でもそういった人がいたな」と、子細すぎてわざわざ言わなくても良い件なのに、つい話してしまう危険があります。たとえば、「ありました。前職の上司が細かい人で、逐一報告を求められました。仕事は結果ですし、報告すれば仕事をしたことになるわけではないのに、報告作業が仕事の大半を占める時もあり、上司には不満でした」と回答したとしましょう。このままで終わると、よくある話で共感できるとなるのか、他責傾向があると見られるのかは面接官次第ということになります。
もしこうした不平・不満を伝えてしまったら、その後に、「とはいうものの、退社した今、冷静に当時を振り返ると、まだ若手で周りほど活躍もできていなかったので、その点を気遣って上司は私のためにマイクロマネジメントをせざるを得なかったと分析しています。報告の都度アドバイスもいただけていたし、次の期は目標にも届いたので、当時は感情的になった時もありましたが、今では感謝しかありません」と、ポジティブ方向でまとめておくことをお勧めします。
■前職でこれといった実績を上げてこなかったように感じますが?
面接官が知りたいのはココ!

「ないけど頑張ります」は不要

小さくても良い。丁寧に詳細を
「お話を聞く限りでは、前職でこれといった実績を上げてこなかったように感じますが?」という指摘です。面接官は、「厳しい指摘に対してどう論理的に説明できるか?」や「これまでの自分の仕事をどう評価しているか?」という、ストレス耐性と客観性をチェックしようとしています。
そのため、「はい、確かにありません」と凹んで後が続かない、もしくは「いや、前職ではこういった状況だったので、私でなくても周りに誇れるような実績を上げるのは困難でした」といった言い訳がましい話は無用です。

20代半ばくらいまでなら、「確かに今はないけど、御社で頑張って実績を残してみせます」といった初々しい回答もありでしょう。
一方で、それ以降の年齢ならば、このやり方は通用しません。
たとえば30代ならそれなりにキャリアを積んできたはずですから、子細でも残した実績の一つや二つは必ずあるはずです。応募書類にはつまびらかには書けなかった、その背景や具体的な取り組み、残した実績を丁寧に解説すれば良いのです。
そもそも大谷翔平選手のような超エース級を求めているならば、これという実績のない人は面接に呼ばれていないはずです。また営業でなければ、定量的な表現も難しい。だからこそ、丁寧に詳細を語るべきなのです。
AIは次の案を出してきました。
○OK!

「ご指摘の通り、プロジェクトリーダーとして数億円の利益を上げたといった、華々しい実績は乏しいかもしれません。
しかし、私は『組織の基盤を安定させること』に注力してまいりました。例えば前職では、経理においてミスを前年比5%削減し、周囲が本来の業務に集中できる環境を整えました。
こうした『当たり前を継続する力』や『細部への徹底』こそが、御社の経理職においても安定した品質を提供し、長期的には大きな利益につながると確信しております」

↑「5%」の信憑性は置いておいて、派手な成果ではなくても、定量的な表現を用いるやり方は「あり」でしょう。

また回答案のような「組織の基盤の安定」のほか、「業務効率の改善」や「ミスゼロの維持」、「きめ細やかなチームのサポート」といった、定量的には表現が難しいけれども、自身がいたからこそ維持できた価値を伝えるのも「あり」です。
■あなたならA社の方が向いていると思いますよ
面接官が知りたいのはココ!

A社を貶めて「だからA社は向いていない」はNG

「A社も良いが、それ以上に御社なんだ」という入社意欲を語ってほしい
「他社からの内定あり」をPRしたりすると、こうした深掘りを受けます。
もちろん、ここはA社を勧めているわけではなく、「当社入社への想いを改めて強く語ってほしい」という主旨の質問です。応募者の目線から、A社と応募企業との差異を分析して、応募企業の優位性や自分の志向とマッチしていることなどを語るのが非常に効果的な伝え方になります。
たとえば、「A社も良い会社だと思いますが、私が働きたいのは御社です。A社はこの業界では老舗企業で、40歳になって初めて一人前という考えの下、じっくり人を育てていく人事教育制度があることを、面接時に伺いました。一方で新興企業である御社では、先日の『仕事は自分で創り出せ』という社長様のお話の通り、若手に様々なチャンスが巡ってくる点に私は惹かれているのです」
というように、対抗会社を貶めず、その良さを認めつつ、その上で応募企業の魅力、自分の方向性などを交えて話すようにしてください。
例:32歳女性、大卒。今まで2社での勤務経験あり。今回は3社目の転職で異業種・同職種の会社への応募。
×NG!

「確かにA社の方が大手で上場企業ですし、正直、どうしようか迷っています」
↑迷うのではなく、きちんと応募企業が優位であると伝えないといけません。
○OK!

「貴重なアドバイスありがとうございます。
確かにA社の方が私にマッチしている点もあるかもしれません。
しかし、私は御社で働きたいからこそ、今も転職活動を続けていて、この面接の場に臨んでいます。A社は大企業で業績も安定していて、非常に良い会社だと思っています。ただ、A社だと規模感の違いから、今まで勤めた中小企業で養ったスキルがうまく機能しないと分析しています。一方で少数精鋭の御社であれば、私のスキルが充分に活かせると考えています。また、個人主義と成果主義に重点を置くA社よりも、チームワークが売りの御社で働きたい想いもあって、私にとっては御社がベストと判断しています」

↑対抗企業との差異をきちんと比較分析しながら、対抗企業を貶めることなく、応募企業の方で働きたい想いをちゃんと伝えることができています。

----------

中谷 充宏(なかや・みつひろ)

キャリアカウンセラー(キャリアコンサルタント)、社会保険労務士、行政書士

同志社大学法学部卒。NTT(日本電信電話株式会社)などを経て2004年にキャリアカウンセラーとして独立。マンツーマンで依頼者の転職を支援する転職のパーソナルコーチを務め、米国MBAホルダーや代表取締役などのエグゼクティブ層から、転職回数が多い等のハンデがある人まで幅広い転職支援を実施している。また、社会保険労務士として人事採用コンサルティングも行い、人事部長として企業人事を一任されるケースも多数。著書に『《AI対応版》30代後半~40代のための転職「面接」受かる答え方』、『20代~30代前半のための転職「書類」受かる書き方』(秀和システム新社)など多数。

社会人向け転職支援

----------

(キャリアカウンセラー(キャリアコンサルタント)、社会保険労務士、行政書士 中谷 充宏)
編集部おすすめ