※本稿は、長尾義弘『老後不安は「思い込み」が9割』(青春新書インテリジェンス)の一部を再編集したものです。
■「病気・介護・お金」対策だけでは不十分
「ひとり暮らしの老後で困ることって、やっぱり病気とか介護じゃないの? あとお金でしょ?」たぶん、多くの人がそう思うはずです。もちろん、その通りです。病気やケガ、介護の問題、そしてお金。これは老後の3大テーマと言ってもいいでしょう。ひとり暮らしとなると、なおさら不安になります。でも、実際に困るのは、それだけではありません。
もっと日常的で、もっと地味な問題が、じわじわ効いてきます。たとえば、入院するときの保証人。これが意外とハードルになります。介護施設に入るときも同じです。
重いものが持てない。天候が悪い日は外に出られない。毎日のゴミ出しがきつい、という声もよく聞きます。
介護サービスを使えば全部解決、というわけでもありません。制度ではカバーしきれない“すき間”が、意外と多いのです。さらに、認知症を発症した場合。判断能力が低下すると、契約や財産管理が難しくなります。そのときには後見人が必要になります。
そして、あまり考えたくはありませんが、亡くなったあとの手続き、いわゆる「死後事務」の問題もあります。誰が役所の手続きをするのか、家の片付けはどうするのか。
■身元保証人はいますか?
でも、ここで言いたいのは「大変だ、怖いぞ」という話ではありません。何も対策をしなければ、生活の質が落ちてしまうおそれがある、ということです。逆に言えば、きちんと準備をしておけばいいのです。この本は、不安をあおるための本ではありません。
豊かで楽しい老後を目指すための本です。問題を直視するのは、ネガティブだからではなく、安心するためです。保証人のことも、後見制度のことも、支援サービスのことも、前もって知っておけば選択肢が広がります。準備ができていれば、必要以上に怖がることはありません。
ひとり暮らしでも、自分らしく、安心して暮らすことは十分に可能です。そして最期のときに、「いろいろあったけど、いい人生だったな」と思えたら、それがいちばんの成功ではないでしょうか。
ここからは、ひとり暮らしの老後を、もう少し現実的に考えてみましょう。いちばん困るのが「身元保証」です。たとえば、ある日突然、転んで動けなくなった。あるいは病気で倒れて救急搬送された。そんなとき、緊急入院になることがあります。入院するとき、ほぼ必ず求められるのが身元保証人や緊急連絡先です。
■さまざまな場面で求められる「保証人」
命に関わる緊急事態なら受け入れてもらえますが、緊急性が低い場合は、保証人がいないことで受け入れを渋られるケースもあります。病院側としても不安なのです。手術の同意書は誰がサインするのか。本人が意思表示できなくなったら、治療方針は誰が決めるのか。
たとえ本人に数千万円の預金があっても、本人が動けなければ、そのお金をすぐ使えるわけではありません。さらに、入院生活は意外と細かいことで困ります。パジャマや下着、スマホの充電器を家に取りに帰れない。入院が長引けば、携帯電話や公共料金の支払いも気になります。信頼できる人がいれば頼めますが、誰もいなければ途方に暮れてしまいます。
賃貸住宅を借りるときも、基本的には保証人が必要です。最近は家賃保証会社を使えるのでハードルは下がりましたが、高齢のひとり暮らしだと、孤独死のリスクを理由に入居を断られるケースもあります。
介護施設に入る場合も同じです。契約時には本人以外の署名や緊急連絡先が求められます。体調が悪化して入院となれば、施設の業務外になるため、代わりに対応してくれる人が必要になります。
■頼れる親戚、友人がいるかがポイント
つまり、ひとり暮らしでも「完全にひとり」では成り立たないのです。未婚で親戚付き合いもほとんどない、という人もいるでしょう。その場合、頼れる友人がいるかどうかが大きなポイントになります。ただ、みんながみんな、都合よく頼れる人を持っているわけではありません。
そのあたりは、公的サービスで全部カバーできるのでしょうか。ここがまた、微妙なところです。たとえば退院のとき。退院手続きそのものもそうですが、自宅に戻ってからが大変です。ケガならギブスがついていて動けないかもしれない。
病気なら安静が必要かもしれない。すぐに元通りの生活に戻れるとは限りません。食事の準備がつらい、買い物に行けない、掃除ができない。
このときに介護が必要なら、公的介護保険を利用することになります。入院中に申請することも可能です。私の母も、脳梗塞で倒れたとき、入院中に地域包括支援センターへ連絡し、介護認定の手続きを進めました。
退院後に困らないよう、自宅をバリアフリー化し、すぐにヘルパーさんが入れる体制を整えました。入院は突然やってきます。だからこそ、退院後の生活まで見越して考えておく必要があります。
公的サービスを活用すれば、多くの問題は解決できます。ただし、万能ではありません。訪問介護も、とてもありがたいサービスです。日常生活に支障があるときには、本当に助かります。ただし、何でもお願いできるわけではありません。
■使える制度を理解することが不安解消のコツ
たとえば、ペットの世話は対象外です。家族同然でも、制度上は別扱いです。蛍光灯や電球の交換も、原則として介護保険の対象外です(一部自治体で例外はあります)。
電球が替えられないからといって、暗い部屋で過ごすのはつらいですよね。生活の質は確実に下がります。入院中は病院の医療ソーシャルワーカーが対応してくれ、退院後はケアマネージャーが介護サービスのプランを立ててくれます。
お金の管理はケアマネージャーの仕事ではないので、成年後見制度を利用すれば後見人がつきます。施設に入れば、今度は施設のスタッフがお世話してくれます。それぞれ専門分野があり、担当者も変わります。一貫してずっと同じ人が見てくれるわけではありません。
制度には利用できる枠(=範囲)があります。その枠を知ったうえで、どう補うかを考えることが大切です。ひとり暮らしの老後は、不安だらけに見えるかもしれません。でも、仕組みを知り、準備をし、使える制度を理解しておけば、現実的に乗り越えられることばかりです。
大事なのは、「なんとかなるだろう」と放っておかないこと。公的なサービスをある程度、理解しておくことで、突然そんな状況になったときでも、比較的冷静に対応することができます。そして、そのことがよい結果に結びつきやすくなります。
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長尾 義弘(ながお・よしひろ)
NEO企画代表、ファイナンシャルプランナー、AFP
徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)、『とっくに50代 老後のお金どう作ればいいですか?』(青春出版社)、監修書には年度版シリーズ『NEW よい保険・悪い保険』(徳間書店)など多数。
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(NEO企画代表、ファイナンシャルプランナー、AFP 長尾 義弘)

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