高齢者の認知症やフレイルを予防するには何が有効か。介護業界で30年従事してきたライフさぽーと代表の藤原清明さんは「一緒にいるだけで幸せホルモンが分泌され、心身に良い影響を与えてくれる存在がいる」という――。

※本稿は、藤原清明『「介護未満」の親の支え方』(青春新書プレイブックス)の一部を再編集したものです。
■愛犬家は認知症のリスクが40%低い
「アニマルセラピー(動物介在療法)」は、介護の現場でも注目されています。研究によると、ペットと触れ合い、ペットからなつかれて愛情を感じると、オキシトシン(別名・幸せホルモン/安心ホルモン)が分泌されるのだとか。その結果、心身のリラックス・精神安定だけでなく、血圧の安定にも良い影響を与えます。また、子と離れて暮らす年老いた親の孤独も癒されますね。
ペットの世話で自然と体を動かすだけでなく、朝昼晩のルーティンができるのもよい点です。そして、日々ペットの健康をチェックし、心配ならば動物病院を予約、通院するなど、ペットがいることによって観察→判断→行動を率先してするようになります。
そのほか、愛犬を介して散歩友だちができる、動物病院で愛猫家仲間と出会えるなど、地域での交流も広がるでしょう。こうしたペットがもたらす効能は、「犬を飼っている人は飼わない人に比べ、認知症発症リスクが40%ダウン」という研究結果にもまとめられています(東京都健康長寿医療センター)。
■散歩が大変な人は室内で飼える猫がおススメ
介護のプロとしては、足腰が元気なうちは小型犬がおススメ。散歩するのが大変になった高齢者は、猫や魚、小鳥など、室内飼育できる生き物がよいでしょう。ただし、ペットは生き物。
これから飼い始める方は、「ペットの購入費や今後必要な経費はまかなえるか」「親が万一の際の対応ができるか」など、きちんと設計してから飼育をスタートしましょう。
「万一」の備えとしては、ペット信託という方法も。すでに飼育中なら、ペットと共に入所できる高齢者施設を調べておきましょう。もし、「親だけではペットの世話が大変」「ペットが死んだとき親がショックを受けそうで怖い」など不安材料があるなら、生き物以外の選択肢もあります。
なついたり甘えたり、コミュニケーションがとれる柔らか素材のペットロボットなども。犬や猫の毛にアレルギーのある親にもおススメです。
■麻雀やガーデニングで得られる効果
「健康麻雀」をご存じですか? スローガンは「賭けない・飲まない・吸わない」。頭と指先のよい運動になり、卓を囲んで対話も楽しめるので、認知症予防効果アリ。高齢者の娯楽として人気を博しています。麻雀以外にも、将棋や囲碁など頭を使うゲーム。ゴルフや卓球、ボウリングなどのスポーツ。
編物、手芸、木工や日曜大工やガーデニング。
お菓子やパン作りなどなど。これまで親が続けてきた趣味や楽しみは、健康長寿を実現するためにも、ぜひ続けてもらいましょう。スポーツであれモノづくりであれ、あらゆる趣味は、脳を使って考え、指先や体を動かし、何か生み出す、または成果が出るなど、健康麻雀と同じく認知症対策に。
また趣味を持っていると、同好の士との触れ合いができ、他者と会話もはずみますね。さらに、そうした趣味の活動によって張り合いのある日々を過ごせれば、自然と食欲もわき、よく食べられるようにもなるでしょう。
■趣味がない人は自治体のHPを確認しよう
このように趣味を続ければ、高齢者が健康で生き生きと過ごすための三原則「運動・栄養・交流(社会参加)」をクリアすることができるのです。
そして、趣味はたくさん持っておくに限ります。たとえば、お父さんはゴルフが大好きだけど、冬は寒くてコースには行けないし、打ちっぱなしもつらい。その間は、室内でできるボウリングをスポーツの中心にしよう。お母さんの趣味のガーデニングは、真夏の熱中症が心配、夏は室内でレース編みやパッチワークをしたらどうかしら?……など。
どんな状況でも、何かしら楽しめるといいですね。ジムや教室に通うのもいいし、仲間で同好会を作るのもいいでしょう。
また、各自治体では、高齢者の趣味のサークルや発表の場を用意しています。ホームページや広報などで、チェックしてみてくださいね。
■若い頃にやりたかったことに挑戦すると…
「若いときに、ちゃんと勉強しておけばよかった」「子どもの頃、お金がないからと通わせてもらえなかった習い事……本当は行きたかったのになあ」。そんなつぶやきを親から聞いたことはありませんか。たとえば、女の子があこがれるバレエ。
シニア教室が盛況で、未経験の70代の方が生き生きと楽しんでいるのだとか。若いときに習得したかったピアノを習う、高校生の部活以来で再び絵筆をとる、古いギターを引っ張り出して再挑戦などなど、アクティブに学び直しされている高齢者をよく見かけるようになりました。高齢者の学び直し(リカレント教育)は、大いにチャレンジすべきです。
「あのときはできなかった」の後悔を残したまま、老化で体の機能が追い付かなくなってしまっては元も子もありません。
■無料・安価で参加できる講座もある
思い立ったが吉日で、「じゃあ、そういう教室に行こうよ、見つけてきてあげる!」と、後押ししてあげてください。また専門的に学びたいのであれば、シニア入学制度が用意された大学もあります。
それ以外にも、各地域でさまざまな高齢者大学(シニア大学)も。
「何か教えてもらうと、お金がかかるから」と二の足を踏むのなら、無料もしくは安価な参加費で楽しめる自治体の講座に出かけるのもいいですね。各自治体の高齢者向けの講座は多種多様。お勉強系なら、講師を招いての古典講座や語学学習なども。
健康サポートの介護予防プログラムもあれば、シニアのためのデジタル講座では、スマホ操作やオンラインの行政手続きを指導するなど、暮らしに役立つ教室も多数です。こうした学びを通じて地域のお友だちも増え、生きがいを得たり、暮らしの張りになったり……きっと良い連鎖が生まれますよ。
■お小遣いの範囲であればパチンコも許容する
私がデイサービスでお世話したおじいさんは、午前だけの利用者でした。耳が遠く、背中も少し曲がっている状態です。ある日、お帰りになる際、なんだか楽しそうなので、耳元で「何かいいことがありましたか?」とお聞きすると、「いやあ、これから週に1回のお楽しみで、パチンコに行くんだよ!」。
そう言って、ニコニコしながら、送迎後、自宅前のバス停へと向かって行かれました。「高齢者がギャンブル⁉」と、眉をひそめないでくださいね。ご自身のお小遣いの範囲で、健康を害さない程度の時間や頻度での公営ギャンブルは、認めてあげてもいいのではないでしょうか。
もちろん、朝から並んで開店から閉店までパチンコ三昧(ざんまい)、生活費をつぎ込んでも足らず借金まで……なんてことになったら、立派なギャンブル依存症です。
老若男女問わず、医療の手で救わなくてはなりません。
■楽しむことは笑顔を引き出す効果もある
しかし、節度を持って楽しむ分には、「大人の趣味」の範疇(はんちゅう)です。それに、高齢者の閉じこもりはフレイル(※)につながる大問題。楽しみのために外出するきっかけにもなると思えば、悪くありません。そして、たとえばパチンコなら、台を選んだり、打ち方を工夫したり、玉が出て喜んだりと、脳と手先の運動に加え、笑顔を引き出す効果もあります。
※フレイル:加齢で心身の機能が衰え、要介護の手前になった「虚弱」な状態。放置すると危険だが、食事の改善や適度な運動によって元の健康に戻すことが可能。
もちろん、負けて悲しむ場面もあるでしょうが……。あたたかく見守ってあげましょう。なかには、「ギャンブルはちょっと。でもゲームなら」と、ゲームセンターで遊ぶ高齢者も見かけます。コインゲームがお好きな方が多いようです。

スマホユーザーの方なら、無料で楽しめるオンラインゲームで、頭と指先の活性化にいそしむのもいいですね。

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藤原 清明(ふじわら・きよあき)

合同会社ライフさぽーと代表

1977年京都府生まれ。京都社会福祉専門学校卒。介護業界歴30年。介護福祉士としてデイサービスやヘルパー、特養などで15年間勤務し、1000人以上の高齢者の介護に携わる。2013年に独立し、兵庫県豊岡市と大阪府豊中市に自立支援型のデイサービスをメインに介護事業所4施設5事業所を経営。毎月約350人の高齢者にサービスを提供している。

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(合同会社ライフさぽーと代表 藤原 清明)
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