マウンティングする人は何を考えているのか。伝える力【話す・書く】研究所所長の山口拓朗さんは「相手の話を聞いているつもりで、実はマウンティングしてしまっていることがある。
無意識に行われがちなマウンティングの例を紹介しよう」という――。
※本稿は、山口拓朗『聞く力は最高の知性である 1を聞いて100を知る技術』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■無意識のマウンティング
相手の話を「聞いているつもり」で、実はマウンティングしてしまっていませんか?
マウンティングの背景にあるのは、相手より優位に立とうとする無意識の欲求です。この欲求が強すぎると、当然、相手からの信頼を得にくくなります。以下は無意識に行われがちなマウンティング例です。
・「それよりスゴい」とアピールする

例:「1週間で契約5件? 俺の最高は1週間で7件だよ」

→相手のポジティブな感情をつぶし、主役の座から引きずり下ろそうとします
・否定から入る

例:「でも、そんなやり方じゃ長くは続かないよ」

→頭ごなしに否定し、相手にダメージを与えます。このタイプは、返事が「でも」「だって」「いや」から始まることが少なくありません
・認めない

例:「まあ、A店は立地がいいからね。うまくいかないほうがおかしいよ」

→相手の成功や功績を認めません。「偶然」「ラッキー」「たまたま」と決めつけることで自分の優位性を保とうとします
・「たいした話ではない」扱いをする

例:「ああ、それね。けっこう前に流行ったよね」

→相手の旬や熱量を強引に陳腐化・オワコン化させ、気持ちを萎えさせます
■知ったかぶり、手柄を横取り…
・求められていないアドバイスをする

例:(別に朝早く起きたい、と思っていない相手に)「それ、早起きするための仕組みをつくったほうがいいよ」

→助言する側に回ることで、無意識に相手より上の立場を取ろうとします
・不安に陥れる

例:「そのままいくと、寂しい老後になるよ」

→相手をなんとも言えない「嫌な気持ち」にさせ、優位に立とうとします
・共感するふりをして、実はジャッジしている

例:「大変だったね。でも、それってあなたにも原因はあるよね」

→一見親身に見えますが、評価や断罪のニュアンスを混ぜて、相手を悪役に仕立て上げます
・「したり顔」で話す

例:「それはアートの文脈がわかっていないからだよ」

→「レベルが低い」「教養・常識がない」と感じさせて、相手の自信を削ぎます
・「よくある話」で流す

例:「ああ、そういうことか。まあ、よくある話ではあるね」

→真剣な気持ちを踏みにじり、相手をがっかりと残念な気持ちにさせます
・手柄を横取りする

例:「あれは、もともと俺が出したアイデアだからね」

→人の成果や成功に自分を絡め、優位性を保とうとします
・知ったかぶりをする

例:(本当はよく知らないのに)「ああ、知ってる、知ってる」

→知っているふりをすることで相手と対等、あるいは上の立場に立とうとします
■必死さは周囲にバレている
なぜ人はマウントを取ろうとするのか、それは自己肯定感が低いからです。
内側にある不安や劣等感を隠すために、外側で優位な位置を取ろうとする。「弱い犬ほどよく吠える」という言葉どおり、自分が「弱い」と思われないために、あの手この手で相手より上に立とうとするのです。
しかし、その必死さは、周囲には透けて見えています。こうしたふるまいが自身の信頼性を下げていることに、本人はなかなか気づきません。周りだけが気づいており、気がついたら「裸の王様」になっていることもあります。だからこそ、「今、自分は優位に立とうとしていないか?」と、常に自分を観察し続けることが大切です。
■意外と多い「質問にちゃんと答えない」
「どのくらいで納品されますか?」
この質問に対し、「えーっと、ちょうどいま資材が入りにくくなってきていまして工場の稼動が落ちてしまっています。それと、工場から出荷前の検品システムが変更となった関係で、以前よりも出荷までに時間がかかっており~」のように返答する人がいます。残念ながら、このような答え方では、人の信頼は得られません。なぜなら、質問に答えていないからです。
この質問の場合、まずは「3週間ほどいただいています」とはっきり答える必要があります。どうしても、その背景や原因について伝えたいなら、相手の質問に答えてから。
大事なのは「結論→理由」の順番です。
質問にちゃんと答えないと、「ごまかそうとしている」「答えたくない何かがある」「裏があるのかも」と思われかねません。あるいは「質問の内容を理解できない人」と思われるか。いずれにしても信頼構築とは真逆の行為です。そもそも、質問の意図を理解できないのは、相手の言葉に真剣に耳を傾けていないせいかもしれません。
■質問に質問で返すのもNG
どうしても正確な情報を伝えられないようなら、「納期については、現状、はっきりお伝えすることができません。最短で3週間、長い場合だと2カ月ほどいただくこともあります」のように、可能な限り、相手が判断できる材料を提示しましょう。不確実なときほど、あいまいにせず、幅を示す。その誠実さが信頼につながります。
なお、質問に対して質問で返してしまうのも、できれば控えましょう。たとえば「色は何色ありますか?」という質問に対し「ちなみに、どんな色が好みでしょうか?」と返してしまうケースです。まずは「黒、メタリック、シルバー、赤の4色があります」と答えるのが誠実な対応です。

質問の意味がどうしてもわからず、その意図を確認する場合を除いて、不用意な「質問返し」は控えましょう。問いで返す前に、答えられることは答える。この基本を外さないことです。
■「知ったかぶり」は損をする
「こんなことも知らないのかと思われたらカッコ悪い」「こんなことで質問するなんて、恥ずかしい」。そんな気持ちから、つい知ったかぶりをしてしまうことはありませんか? しかし、一番カッコ悪いのは、「わからないことを、わかったふりでやり過ごす姿勢」のほうです。
本当に信頼される人は、自分を偽らず、わからないことを素直に認めることができます。「ここは理解が追いついていません」「もう少し詳しく教えていただけますか」と言える勇気を持っています。その謙虚さと潔さが、相手に誠実さとして伝わり、「この人となら安心してやりとりできる」という印象を与えるのです。
ある企業で働く50代の社員。新たに導入された営業支援ツールの使い方がわからず困っていました。マニュアルを読み、自分なりに試してはみたものの、どうしてもうまくいかない。悩んだ末に思い切って、年下の課長に声をかけました。
「この操作がうまくいかなくて。ちょっと教えてもらえますか?」。すると、課長は笑顔で「もちろんです。わかりやすく説明しますね」と快く応じました。数分のやりとりで問題は解決し、2人の間には、それまでにない親近感と信頼が生まれました。年齢や立場の垣根を越えたつながりは、「素直に聞く勇気」から始まったのです。
もちろん、自分で一度も調べずに、最初から他人に頼る姿勢は、信頼を損なう恐れがあります。一方で、自分なりに調べ、試し、考えたうえでの質問であれば、それはむしろ学習意欲や成長意欲の表れとして、肯定的に受け止められます。
信頼とは、「完璧な人」に集まるものではありません。むしろ、自分の未熟さや限界を受け入れながらも、そこから逃げずに前を向く姿勢に集まります。「わからない」を認めることは、決して弱さではありません。自分を飾らない強さであり、素の自分で他者とつながろうとする誠実さの表れなのです。


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山口 拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長

出版社で編集者・記者を務めたのちライター&インタビュアーとして独立。27年間で3800件以上の取材・執筆歴がある。現在は執筆や講演、研修を通じて言語化やアウトプットの分野で実践的なノウハウを提供。著書に『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』(日本実業出版社)など。中国、台湾、韓国など海外でも20冊以上が翻訳されている。

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(伝える力【話す・書く】研究所所長 山口 拓朗)
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