特別国会がなんだかんだ騒ぎになりつつも閉幕を迎えました。
その間、高市早苗政権の支持率は各社大幅な下落に転じてしまいました。
「あーあ」という感じですが、各項目を見ているとどういう有権者がどんな理由で高市政権を見限り始めているのかは割とわかりやすいので解説してみたいと思います。
なお、本稿につきましては所属先の情報法制研究所の見解ではなく、筆者個人の考えであることを最初に述べておきます。
7月27日、衆院予算委員会の集中審議で、総理大臣・高市早苗さんはある質問に窮する場面を見せました。中道改革連合の幹事長・階猛さんが、報道各社の世論調査で内閣支持率が下がり続けている点について、その原因をどう分析しているか問うたのです。首相の答えはこうでした。
「一つひとつの世論調査の結果について、下落している原因というものを私自身が分析することは困難でございます」
そのうえで「原因に関してはわかりません」とまで言い切りました。そうですか。
■日経・読売の「世論調査のカラクリ」
各種調査の政策に関する設問は国民の気持ちとして参考にしている、とも付け加えましたが、要するに、自分の内閣の人気がなぜピークアウトして見放されつつあるのか、本人にも見当がついていないということです。この答弁には野党側からも「反省する気がないのではないか」といった批判が相次ぎましたが、私はそこまで意地悪くとらえてはいません。むしろ、政権の中枢にいる当人ほど、支持率という数字の裏側にある構造が見えにくくなるものです。であれば、外から手がかりを示すのも、報道に携わる者の仕事だろうと思います。
総理が「わからない」とおっしゃるなら、いくつか手がかりを示したいと思います。
まず断っておきたいのは、報じられている「急落」の数字そのものを、額面どおりに受け取ってよいとは限らないという点です。政治学者の菅原琢さんが自身のニュースレターで指摘しておられる通り、日本経済新聞や読売新聞が示す下落幅は、実態よりもかなり誇張されている可能性があります。
これらの調査では「重ね聞き」という手法が使われており、最初の質問で態度を明確にしなかった回答者に対し、あらためて「どちらかといえば支持か不支持か」を尋ね直し、その結果を最終的な支持率に上乗せしているのです。菅原さんが公開した比較グラフによれば、この重ね聞きをする前の生の数字を朝日新聞の推移と重ねると、両者はほぼ同じ軌跡を描いていました。
■それでも支持基盤は揺らいでいる
一方で、6月調査では、この重ね聞きによる上積み幅がふだんより大きくなっており、発表値だけを見ると支持率が高止まりしているように見えていたのです。なぜ前回「お気持ち」支持がこれほど高かったのかは不明ですが、その反動が7月の下落幅を実態以上に大きく見せている、というのが菅原さんの分析です。
読売新聞の下落幅が大きく見えるのも、同様に前回調査の支持率が重ね聞きによって押し上げられていたことによる可能性が高いと指摘されています。重ね聞きは、下落局面ではより劇的な下げ幅を演出してしまう手法であります。
とはいえ、これは「実際には下がっていない」という話ではありません。重ね聞きを行わない朝日新聞、毎日新聞、時事通信の調査でも、下落そのものは明確に確認できます。時事通信は49.0%で発足後初めて5割を切り、毎日新聞は41%まで急落して不支持率が支持率を上回る逆転現象まで起きました。朝日新聞も53%と、初めて50%台に落ち込んでいます。
■国民からの反発を招いたワケ
では、何が起きているのか。表面的に語られているのは、7月17日に成立した改正皇室典範や、国旗損壊処罰法、日本維新の会が求める副首都構想をめぐる強引な国会運営です。
改正皇室典範は、女性・女系天皇を認めず、旧宮家の男系男子だけを養子として皇族に迎える内容でしたが、朝日新聞の調査では「国民の理解が得られている」と答えた人はわずか24%にとどまり、「得られていない」が60%にのぼっています。副首都構想をめぐっては、より野党の反発が強い衆院議員定数の削減はあきらめる一方、副首都構想は成立させるという折衷案で維新との連立関係を維持しようとした結果、副首都法はわずか2票差での成立となりました。衆議院で圧倒的多数を持つ与党が、ここまで薄氷を踏んだこと自体が異例でした。
加えて、首相の秘書が自民党総裁選や衆院選で他候補への中傷動画の作成に関わったとされる問題や、いわゆる「サナエトークン」をめぐる問題への説明も、十分な納得を得られていません。JNNの調査では、中傷動画問題への首相の対応について「納得できない」と答えた人が51%にのぼりました。
■「高市さんは好きだが、仕事はできねえよな」
しかし、朝日新聞の世論調査を丁寧に読むと、興味深い事実が見えてきます。内閣を支持しない理由として「首相が高市さんだから」と答えた人は、発足当初から一貫して3~4%にとどまっており、首相個人への嫌悪感が広がっているわけではないのです。割と愛されていて、良かったな高市早苗。
で、逆に急激に伸びたのは「政策の面」を不支持理由に挙げる人で、発足当初の5%から7月には18%へと跳ね上がりました。
これは「高市さん『個人の』人気」というよりは、高市早苗政権の「政策への信頼」そのものの崩壊だと読むべきでしょう。そして、「高市早苗さんだから応援した」層は、特に自由民主党支持のなかでも保守的な言説を含むイデオロギーを好み、政策が嫌で支持しなくなった層は「生活や消費税減税など、約束された政策が実現されていない」ことで自民党ごと高市不支持に回っている(自民党の政党支持率は5%から8%も下落)ことになります。
つまり、高市さんは好きだが仕事はできねえよなと感じた人から高市早苗政権を支持しなくなり、どちらでもなかった人が高市政権を不支持するようになった、という状況です。
この傾向は女性や無党派層でより鮮明です。女性の支持率は6月の57%から7月は46%へ急落し、不支持率が29%から40%に上昇して差を縮めました。無党派層の支持率も、今年1月まで6割前後あったものが7月は36%まで落ち込み、不支持率42%に逆転されています。
■政策不信の核心は「物価」である
他方、自民支持層の内閣支持率は7月も87%を維持しています。その自民支持層が2割近くも飛んだことを考えると、高市さんの政策が良くて自民支持に回った人は、高市政権と自民党に裏切られた感覚になっていることでしょう。
つまり支持基盤そのものが崩れているのではなく、政権発足以来、高市さんへの支持を押し上げてきた女性・無党派層から、急速に見放されつつあるという構図です。
ちなみに、この無党派層からの支持が前回の解散総選挙で高市政権に316議席とかいう大勝利の議席数を与える原動力になりました。なんとなくみんな空気でサナ活ブームを起こしたものが、現在一気に剥げ落ちて逆噴射し始めた、というのが実態ではないかと思われます。
で、その政策不信の核心にあるのが、物価です。朝日の調査で、物価高への対応を「評価しない」と答えた人は57%にのぼりました。政府が示す統計だけを表だけ見れば、物価高はむしろ落ち着いて見えます。6月の全国消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除くコアCPIが前年比1.6%、生鮮食品・エネルギーを除くコアコアCPIも1.7%にとどまっているからです。
ところが、その裏で6月の国内企業物価指数は前年比7.1%という2023年3月以来の高い伸びを記録しています。原油高と円安が、石油・石炭製品(前年比22.8%)などを通じて、企業間取引の価格をじわじわと押し上げているのです。輸出物価は円ベースで前年比20.7%、輸入物価も同29.7%という大きな伸びを示しており、円安と資源高の両輪が価格転嫁圧力を強めています。
■生活者の実感と政府発表の「埋まらぬ溝」
企業物価は消費者物価の川上にあたる指標であり、この7%超の伸びは、いずれ食料品や日用品を中心に、川下の消費者物価にも波及していくとみられています。
しかも、いまのコアCPIの低さ自体、電気・ガス代補助金による人為的な押し下げの結果にすぎません。ニッセイ基礎研究所の試算では、こうした特殊要因を除いた実質的な物価上昇率は、2026年4月時点で前年比2.8%と、公表値の1.4%を大きく上回っています。ていうか、全然違うじゃねえか。
政府が誇示する数字と生活者の実感のあいだには、補助金という「化粧」の分だけ溝があるのです。
そして見過ごせないのが、この物価高の一部が、ほかならぬ高市政権自身の発信によって増幅されているという点です。
■市場からの信用が地に落ちた
6月30日に示された「骨太の方針」の原案には、「強い経済」の実現に向けて日本銀行の「適切な金融政策運営が行われることも非常に重要である」との記述が盛り込まれました。さらに日銀に対して「日銀法第4条及び政府・日銀の共同声明の趣旨に沿って政府と緊密に連携」するよう求める文言もありました。
市場はこれを、政権が利上げを牽制し、日銀の独立性に介入する動きと受け止め、長期金利は一時2.9%台と約30年ぶりの水準まで急騰、円安がさらに進みました。いわゆる「骨太ショック」です。
政府は7月、日銀の独立性を明記し、「安定的な物価上昇の実現に資する」金融政策運営という表現に修正することで火消しを図りましたが、この間の混乱はすでに輸入物価や円相場に影を落としています。円は1ドル163円台まで下落し、実に39年半ぶりの水準となりました。財務相・片山さつきさんは「必要なら断固たる措置」をとると述べていますが、実際の為替介入には至っていません。
マーケットでは割と公然と片山さつきさんが二枚舌、嘘つき呼ばわりされており、市場関係者からの信頼が地に落ちているあたりは非常に気になります。常識的に考えて、このままいくとお盆前後にあると予想される改造人事で片山さつきさんは交代させられてしまうかもしれません。
■高市首相の答弁はあまりに他人事
皮肉なことに、階猛さんから同じ質疑の中でこの点を問われた高市さんは、「金融の調整は日銀がやるべきことだ。
非常に残念な事態ですが、この軌道修正自体が、市場と生活者双方に、政権の物価対応への不安を残しているのではないでしょうか。自らの政策方針が長期金利を押し上げ、円安を通じて輸入物価にはね返り、それが支持率を押し下げている一因になっているとすれば、「原因がわからない」という答弁は、いささか他人事に過ぎるように聞こえます。
もちろん、有権者はそのすべてが細かい答弁の内容を見て判断しているとは思いません。ですが、消費税減税といい、給付金といい、公約に掲げていたはずの国民生活に資する施策が一向に進まないことに対して、期待感の剥落で支持率低下となって跳ね返ってきているのは間違いのないところです。
■数字だけ見れば賃金は上がっているが…
賃上げについても、政府はよく「5.26%」という2026年春闘の数字を持ち出します。トヨタ自動車をはじめとする大手製造業では満額回答が相次ぎ、最低賃金も2025年10月に全国加重平均で1121円となり、前年比6.3%という過去最高の上昇率を記録しました。数字だけを見れば、賃金は着実に上がっているように見えます。
しかし連合自身が、価格転嫁の有無によって賃上げ額に1500円ほどの差が生じていると認めているとおり、原材料高を価格に転嫁できる大企業と、それができない中小企業のあいだには大きな溝が残ります。企業間でインフレによって7%を超えるコスト増が生じたとき、その負担は、販売価格への転嫁、企業の利益圧縮、人件費の抑制のいずれかに流れ込みます。
転嫁できる企業は賃上げの原資を確保できますが、転嫁できない企業は自社の利益と人件費でコストを吸収するしかありません。実質賃金が2022年以来マイナス基調を続けているのは、この構造の裏返しです。
■国民民主党と共通する根深い問題
整理すると、支持率下落の理由は、皇室典範や国旗損壊罪といった永田町で目立つ争点そのものというより、その奥にある三つの経済的なひずみにあります。
公表されている物価上昇率と、補助金を除いた実質的な物価上昇率との乖離。川上の企業物価高騰と円安という、今後さらに強まりかねない圧力。そして賃上げの果実が大企業に偏り、中小・非正規層に届いていないという分配の偏り。これらはいずれも、生活者が日々の暮らしのなかで肌で感じている変化であり、統計の見かけとは別に、着実に不満として蓄積されてきたものです。
この構図は、高市政権に固有のものでもありません。「手取りを増やす」と訴えて2月の衆院選で28議席へ躍進した国民民主党の支持率も、7月には2%を切るところまで落ち込んでいます。物価高という同じ課題を抱えるかぎり、どの政党であっても支持を積み上げ続けることは難しい。それだけ根深い構造だということです。
■高市ブームの反動で「これから起きること」
高市さんに申し上げたいのは、原因は決して「わからない」ものではないということです。
世論調査の数字の演出に注意を払いつつ、政策の中身と、自らの発信が市場と物価にどう跳ね返っているかを直視すること。それこそが、支持率という結果を動かす、最も確実な手がかりのはずです。数字の上での物価高が落ち着いて見えても、生活者の財布の中身はそう単純には動きません。8月上旬に迫る食料品の消費税減税の判断は、その最初の試金石になるでしょう。「わからない」で済ませられる時間は、もう長くは残されていません。
このあと何が起きるかと言えば、ブームの反動的な高市さんに対する「諦め」や「飽き」になってくるでしょう。いわば「高市さんは好きだけど、政権は仕事しないよな」と国民が気づいたとき、働いて働いて働いて参るはずだった高市さんは、たいして政権もマネジメントできない無能な人気者という扱いにされかねない瀬戸際にいるのです。
困ったものだなあ、というのが正直なところです。
----------
山本 一郎(やまもと・いちろう)
情報法制研究所 事務局次長・上席研究員
1973年、東京都生まれ。96年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。東京大学政策ビジョン研究センター(現・未来ビジョン研究センター)客員研究員を経て、一般財団法人情報法制研究所 事務局次長・上席研究員。著書に『読書で賢く生きる。』(ベスト新書、共著)、『ニッポンの個人情報』(翔泳社、共著)などがある。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。
----------
(情報法制研究所 事務局次長・上席研究員 山本 一郎)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
