疲れにくい体をつくるにはどうしたらいいか。産業医の岩見謙太朗さんは「タンパク質を意識して摂ることが、疲れにくく回復しやすい体づくりには大切だ。
特に午後3時の休憩で、摂ってほしい食べ物がある」という――。
※本稿は、岩見 謙太朗『ハーバード、ペンシルベニア、スタンフォード… 科学的に認められた 疲労回復大全』(実務教育出版)の一部を再編集したものです。
■脂質過多になりやすい「高タンパク食」
高タンパク食は、運動能力や姿勢の維持、代謝、体温、血糖値の安定といった疲れにくく、回復しやすい体づくりの「土台」そのものです。
しかし、現代の食生活では、必要量のタンパク質を摂取することが意外と難しくなっています。肉や魚を増やそうと思えば脂質も増えがちで、外食やファストフードに頼ればカロリー過多になりやすいのです。
成人が1日に必要とするタンパク質は、約50~65g。一見簡単に達成できそうですが、3回の食事で実現するのは意外と大変です。
私自身日々の食事をアプリで管理してタンパク質の摂取量を記録していますが、3食だけでは必要量に届かない日が多く、「意識して食べないと不足しやすい栄養素」であることを痛感しています。
また、推奨量自体は満たしていても、「質の不足」が起きているケースも多々あります。タンパク質は、アミノ酸が鎖状につながってできています。「タンパク質不足=アミノ酸不足」なのです。
■「質」も意識しよう
特に不足しやすいのは、筋肉の合成を強力に促すBCAA(分岐鎖アミノ酸)と呼ばれる、バリン、ロイシン、イソロイシンの3種類のアミノ酸群です。
肉や魚、卵、乳製品、大豆製品などに多く含まれており、疲労回復にも関与すると報告されています。
さらに重要なのは、BCAAが「脳の疲労」にも影響する点です。
スウェーデンのKarolinska Institutetの研究では、BCAAの摂取が中枢性疲労を軽減する可能性が示されています。運動や長時間労働で感じる“頭がぼんやりする疲れ”は、脳内の神経伝達物質のバランス変化が関与しており、BCAAがその調整に関わると考えられています。
つまり、タンパク質は筋肉だけでなく、脳のパフォーマンス維持にも関与しているのです。
■タンパク質は「こまめに摂る」が正解
タンパク質が量と質の両方において不足しているのが現代日本人の特徴ですが、タンパク質の吸収のポイントを知らなければ、ただタンパク質を摂っても意味がありません。
タンパク質は、一度に大量に摂っても効率よく使われません。一度の摂取で体が有効に使えるのは20~30g程度で、それ以上はエネルギーとして消費されたり、脂肪として蓄えられたりします。
そこでおすすめしたいのが、「朝・昼・夜の3食に分散させ、間食でもこまめに摂る」方法です。特に昼食から夕食までの時間はエネルギーやアミノ酸が不足しやすく、筋肉の分解が進みやすい時間帯。このタイミングで補うことで、筋肉の維持や疲労回復の効率を高められることがわかっています。
■「午後3時のプロテイン休憩」のすすめ
その中でもおすすめなのが、「午後3時のプロテイン休憩」です。
それにより、次のような効果が期待できます。
・筋肉の分解を防ぐ(長時間の空腹を回避)

・疲労回復を促す(BCAAが回復スイッチを入れる)

・集中力の維持(血糖値の乱高下を防ぐ)

・夕食のドカ食い防止(体脂肪増加を抑制)
特に昼食から夕食までの長い時間は、エネルギーやアミノ酸も不足しやすく、筋肉の分解が進みやすい時間帯です。この時間帯にタンパク源を補うことで、筋肉の維持や疲労回復の効率を高められることが研究でもわかっています。
■便利なプロテインバーも活用しよう
オフィスでプロテインドリンクが作りづらいという人には、プロテインバーがおすすめです。私は明治の「ザバス(ZABAS)」シリーズを愛飲しています。チョコ味はまるでアイスココアのように美味しく、食べやすいのでおすすめです。「美味しいと感じるものを選ぶ」ことは、習慣化においてもとても重要です。
「3時のプロテイン休憩」は、忙しい人でも始めやすく、疲れにくい体づくりのための大きな一歩になります。明日からでも、ぜひ生活に取り入れてみてください。会社で行えば、「あの人は健康に気をつけている」と評価されやすくなる効果も得られて一石二鳥です。
■大事なのは「毎食20g」とる設計
プロテインは便利ですが、疲れにくい体をつくる上で本当に大切なのは、「1日のどこかでまとめて摂る」ことではなく、毎食こまめにタンパク質を摂ることです。
患者さんのお話を聞いていると、朝はパンとコーヒー、昼は麺類、夜だけ肉や魚という人が非常に多いです。
これでは、日中に体と脳を支える材料が不足します。
タンパク質は、筋肉だけでなく、神経伝達物質、免疫細胞、血液、皮膚、髪など、体のあらゆる修復材料になります。つまり不足すると、「筋肉が落ちる」だけでなく、疲れが抜けない、風邪をひきやすい、気分が安定しないといった形で現れるのです。
目安は、1食あたりタンパク質20g。たとえば、卵2個で約12g、納豆1パックで約7g、サラダチキンで約20g、焼き魚1切れで約18~20gです。朝に卵と納豆、昼に鶏肉や魚、夜に豆腐や豚しゃぶを入れるだけでも、タンパク質の摂取量を満たすことができます。

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岩見 謙太朗(いわみ・けんたろう)

医師・産業医

労働衛生コンサルタント、株式会社いわみ産業医事務所 代表取締役。東京生まれ。北海道大学医学部卒。史上最年少で労働衛生コンサルタント資格を取得。日立グループ専属産業医を務める。その後、株式会社いわみ産業医事務所(https://iwamisangyoui-office.com)を設立。
神奈川県を中心に、中小製造業など計20社以上の産業医を担当している。少子高齢化や人手不足が進む日本において、働く世代のメンタルヘルス不調の予防、労働災害防止、組織の生産性向上に取り組む。また、若手産業医の育成および労働衛生コンサルタント資格取得支援を目的に一般社団法人プライムエッジ(産業医600人の勉強会)を設立。代表理事として教育事業を展開している。著書に『ゼロから始める産業医の教科書』(中外医学社)、『ハーバード、ペンシルベニア、スタンフォード… 科学的に認められた 疲労回復大全』(実務教育出版)がある。


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(医師・産業医 岩見 謙太朗)
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