現在開催中の国際大会「ネーションズリーグ」で同大会の男子史上初となる開幕13連勝を達成したバレー日本代表。しかし彼らは2年前のパリ五輪では準決勝に進めず7位に終わった。
日本バレーボール協会副会長の金川裕一氏は「スポーツの世界ではメンタルの強さがものをいう。それはビジネスの世界にも通じることだ」という――。
※本稿は、金川裕一『一流の人望力 人の心をつかむ人がいつもやっていること』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
■大事な場面で普段のプレーができない理由
どんな世界でも、最後に勝つのは「はじめから特別な才能を持っていた人」ではなく、「当たり前のことを当たり前にやれる人」です。逆に言えば、「当たり前のことを当たり前にやれる人」こそが特別な才能を身につけられる、といえるかもしれません。
私は、日本バレーボール協会の副会長として、また早稲田大学バレーボール部のOBとして、若い選手たちと接する機会が多く、現役の学生部員からの悩み相談も受けます。彼らが抱える課題は何か。技術的なことよりも、「なぜ大事な場面でいつもどおりのプレーができないのか」など、メンタル的なものが多いです。
実際、スポーツの世界では、メンタルの強さがものをいいます。
たとえば、2024年のパリオリンピック。バレーボール男子の準々決勝で、日本は、イタリアとフルセットの激闘の末に敗れました。1976年のモントリオール大会以来の、48年ぶりの準決勝進出を果たせませんでした。
しかも、2セット先取して勝てそうだったのに、最終的にかなわなかったのです。
理由は何か。「勝てる」と思った瞬間に、それまでできていたプレーが急にできなくなったからだと思います。気持ちが先走って、平常心が崩れた。そうなると、人は普段どおりの動きができなくなるのです。
私が学生部員たちに伝えるのは、「どんなときも、当たり前のことを、いつもどおりにできる状態にしておくように」ということです。練習ではできるのに本番で崩れるのは結局、「当たり前にできる精度」が甘いから。当たり前のプレーを徹底し、無意識でも正しくできるレベルまで仕上げておく。それが、本当のトップ選手の条件です。
■サッカー日本代表の「壁」とは
7、8年前ですが、サッカー日本代表の監督を務めたこともある岡田武史さんと食事をしていたとき、「細かい技術が日本代表の壁だ」と話してくれました。
ピンポイントでメンバーの足元にボールをパスしたり、受け取ったボールをワンタッチでゴールに入れられるようにコントロールすること。そういう細かな技術が世界に届かない限りは勝てない、と。

要するに神様は細部に宿るのです。小さなことの積み重ねこそが大きな結果につながる。日々の「基礎」や「準備」を絶対に軽く見ないことが大切です。
これはスポーツだけではなく、仕事にも通じます。会社で任せたくなるのは、“地味なことをきちんとやれる人”です。
■落合博満が引退する選手に言った一言
最近は、コスパやタイパといった言葉が重視されますが、本当に成果を出している人たちは、見えないところで努力しています。
イチローも大谷翔平選手も、誰よりも地道なことをやり続けています。
私の同級生のひとりがプロ野球選手になって最後は中日ドラゴンズにいて30歳で引退を決めました。そのときの先輩で現役選手だった落合博満さんに次のように言われたそうです。
「俺は現役を続け、おまえは引退していく。俺とおまえの違いは、バットを振った数だ」と。才能じゃなく、積み重ねの差。
それがプロの世界の現実です。
どんな人も、いきなり社長にはなれないし、いきなり好成績を上げる営業マンにもなれません。努力して、失敗して、でも、また工夫して、またチャレンジしての繰り返し。それによって、細かい「当たり前」のベースがちゃんとできるようになる。
「当たり前のことを、誰よりも当たり前にやる」。これができる人が、結局は一歩ずつでも確実に、上に行けます。
■ビジネスパーソン「5つの当たり前」
では、ビジネスにおける基本中の基本、当たり前とは何か。できているようで意外にできていない「当たり前」を5つあげます。
①メールやチャットなどの返信を「早く」「簡潔」にする
「承知いたしました」「確認しました」「ありがとうございます」など、ひと言で済むものほど忘れがちです。遅くとも24時間以内の返信を心がけましょう。
②適切なタイミングで報告・連絡・相談(ホウレンソウ)をする
進捗の報告がなかったり、問題が大きくなってから相談されたりすると、上司やチームは困ります。
③時間を守る、約束を守る
会議や待ち合わせ、アポイントには遅れないようにします。
オンライン会議はちょうどではなく、1~2分前にはログインをします。締め切りなど、約束したことは必ず守ります。守れなくなりそうなときは、早めに上司に相談します。
■信頼感が「連れてきてくれるもの」
④資料を準備する。「丁寧に」「読みやすく」仕上げる
会議や打ち合わせで必要だと思われる場合、事前に準備します。資料は、誤字脱字をなくし、余白を持たせて読みやすくし、要点だけをまとめます。
⑤挨拶やお礼を欠かさない
社外の人はもちろん、社内の人にも、「おはようございます」「こんにちは」と元気に挨拶をします。何かをしてもらったときは、ささいなことほど、「ありがとうございます」と伝えます。
この5つは、ビジネスパーソンの基本であり、やって「当たり前」のことです。当たり前のことを丁寧にやっている人は、「信頼」を勝ち取ることができます。信頼は、才能や実績と同じくらい、そして確実に「次のチャンス」を連れてきてくれるのです。
さて、あなたはいくつ「当たり前」にできていますか。


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金川 裕一(かながわ・ゆういち)

日本バレーボール協会副会長/エル・ティー・エス会長

1959年京都府生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、横河電機製作所(現・横河電機)入社。1996年、社内ベンチャー制度で横河マルチメディア(現・キューアンドエー)を設立し、代表取締役社長に就任。同社を売上200億円規模に成長させる。2016年、横河レンタ・リース代表取締役社長に就任。約10年にわたり低迷していた同社を、社員数を増やすことなく4年間で業績2倍へと導いた。大企業、中小企業、ベンチャー企業など多様な規模の経営に参画してきた経験を持つ。現在は株式会社エル・ティー・エスで会長を務めるほか、複数社の役員・顧問を兼務する。学生時代は早稲田大学体育会バレーボール部主将として活躍し、卒業後は横河電機バレーボール部監督、早稲田大学バレーボール部監督として選手育成にも携わった。現在は日本バレーボール協会副会長、早稲田大学バレーボール部OB会会長。

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(日本バレーボール協会副会長/エル・ティー・エス会長 金川 裕一)
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