※本稿は、越川慎司『世界の一流は「平日」の夜に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■欧米人が平日の夜に入れている具体的な予定
多くの日本人は、平日の夜に特段の予定を入れない傾向にあります。弊社の2024年の調査では、平日の夜に仕事以外の定期的な予定を入れているビジネスパーソンは、全体の19%にとどまっていました。
これに対して、欧米のビジネスパーソンは、平日の夜に具体的な予定をあらかじめ組み込んでいます。
彼らは、火曜日は語学学校、水曜日はジム、木曜日は友人と食事といった具合に、自身のスケジュールを確定させています。
日本人が平日の夜に予定を入れられない主な理由は、日々の業務の終了時刻を予測しにくい点にあります。
例えば、18時に確実に退社できるという確信が持てない状況では、夜のジムや習い事に申し込むことは困難です。
万が一残業が発生した際に、予約をキャンセルしなければならないという不安が、新たな予定を入れることに対する強い抑止力として働いています。
前出の調査では、平日の夜に予定を入れない理由として、67%の人が「残業になるかもしれないから」と回答し、これが最も多い結果となりました。
次に多かった理由は54%の人が挙げた、「疲れていて、出かける気になれないから」という回答です。
さらに38%の人は「そもそも、平日の夜は家で過ごすものだと思っている」と答えており、個人の心理や意識も予定を阻む要因となっています。
■週に一度でも予定を先に入れてみる効果
こうした現状は、人々の理想とは大きくかけ離れています。
内閣府が令和5年度に実施した「国民生活に関する世論調査」では、今後の生活で特に力を入れたい分野として「レジャー・余暇生活」を挙げた人は32.2%にのぼりました。
この数値は「自己啓発・能力向上」を挙げた13.8%を大きく上回っています。
多くの日本人が、自身の余暇をより充実させたいと望む一方で、現実には平日の夜に具体的な予定を立てる意向を持っていないという実態があります。
理想とする過ごし方と現実の過ごし方の間に、明確な乖離が生じているといわざるを得ません。
この状況を変えるには、まずは週に一度でいいので、強制的に予定を入れてみてください。内容はジムでも語学クラスでも、あるいは友人との食事でも構いません。
予定を先に入れると、その日の退社時間が自動的に「先に決まる」ことになります。
退社時間が決まることで、ようやく自分の時間を主体的に生み出すことができるようになります。
■「自分時間」へ頭を切り替えるための“儀式”
世界の一流と呼ばれる人々は、早めに会社を離れたあと、「仕事時間」から「自分時間」へと切り替えるためにある“儀式”を設けています。
弊社が2025年から26年にかけて、欧米やアジアのグローバル企業のエグゼクティブを対象に実施した調査では、全体の81%が「職場でも自宅でもない、定期的に通う場所がある」と回答しました。
彼らはサードプレイスと呼ばれる場所に足繁く通い、日々のルーティンに取り入れています。
こうした場所が必要とされるのは、そこが「思考のモードを切り替えるための重要な拠点」として機能するからです。
私がマイクロソフトに勤務していた頃も、優秀な同僚たちの多くは特定のコーヒーショップの常連でした。
彼らは週に3回ほど、退社してから帰宅するまでの間に決まったカフェへ立ち寄り、30分から1時間程度の時間を過ごすことを習慣にしていました。
彼らはそこで仕事の続きをすることも、何かの勉強に励むこともありません。ただその場所に身を置き、コーヒーを飲んでいるだけです。
それだけで、仕事に従事していた脳が、別の状態へと切り替わるのだ、と彼らは口にしていました。
周囲からの評価や果たすべき義務から物理的・精神的に距離を置く時間は、自分自身を回復させるために不可欠な役割を果たしています。
■バフェットが週12時間没頭しているゲーム
日本においてサードプレイスで自分だけの時間を持つ習慣が定着しにくい背景には、日本人が抱く特有の「罪悪感」が存在します。
多くの日本人は、仕事と無関係な活動に時間を費やすことに対して、自分自身を責めてしまう傾向があります。
弊社が2024年に国内のビジネスパーソンを対象に実施した調査では、平日の夜に仕事や家族と関係のない自分だけの場所や時間を確保できていると回答した人は、わずか23%にとどまりました。
こうした状況は国際的な統計にも表れており、OECDの「Better Life Index」によれば、日本人が1日のうち余暇や食事・睡眠などの身体的ケアに充てる時間は14.1時間となっています。
この数値はOECD加盟国の平均である15時間を下回っており、労働時間と生活時間の配分を示す指標においても、日本は加盟国の中で下位に位置しています。
「投資の神様」と称されるウォーレン・バフェットは、夜の時間にブリッジというトランプゲームに興じています。
バフェットは毎週約12時間をこのゲームに費やしており、夜間にはビル・ゲイツら仲間とオンラインでの対戦を楽しんでいます。
その没頭ぶりは、「美女が横切っても気づかないほど集中する」という彼のジョークにも表れています。
投資活動とは完全に切り離された「別の頭を使う時間」です。
■近所の場所がサードプレイスになる3つの儀式
2009年にアマゾンが買収した靴・アパレル通販サイト、ザッポスの元CEOであるトニー・シェイは、さらに特徴的なサードプレイスを選びました。
彼は2015年頃、ラスベガスの中心部にエアストリームの移動住宅30台からなるトレーラーパーク共同体を構築。自らもそこで社員や友人と共に生活していました。
夜には住民同士で焚き火を囲んだり、即興ライブを開催したりする場に身を置いたといいます。
これにより、日常におけるセレンディピティやランダム性を最大化することを意図していました。
グーグル共同創業者のセルゲイ・ブリンは、仕事終わりに空中ブランコのレッスンクラスへ通うほど、曲芸の習得に情熱を注いでいました。
サーカス芸に近い特殊な運動によって心身をリフレッシュさせることが、自身の創造性につながると述べています。
サードプレイスは、洒落た空間である必要はありません。
「仕事との関わりが薄いこと」、「日常的に通えること」、「他者からの評価から距離を置けること」の3つの条件を満たしていれば、近所の図書館や駅前のコーヒーショップも立派なサードプレイスになります。
■生活が豊かになる退社後3分間の黄金習慣
一方で、気持ちを切り替えるために、必ずしも特定の場所へ足を運ぶ必要はありません。
私がマイクロソフトに在籍していた頃は、会社を出た後の最初の3分間を、意識して「ゆっくり歩く」時間にあてていました。
これは、私が尊敬していた当時の役員が実践していた習慣です。彼はあえてオフィスから離れた場所に自家用車を停め、そこまで時間をかけて歩くことで、心の切り替えを行っていました。
早歩きをやめて周囲の景色を眺め、深呼吸を繰り返すだけです。
導入した当初は効果に半信半疑でしたが、2週間ほど継続した頃に明確な変化が現れました。
3分間が経過する頃には、頭を占領していた仕事の思考が自然と薄れていくのを感じたのです。
身体の動きを意図的に遅くすれば、それに連動するように思考のペースも落ち着いていきます。
私はこの習慣を生活に取り入れたことで、帰宅後に自分自身の時間をしっかりと確保できるようになり、以前よりも生活がずっと豊かになりました。
読者の皆さんも、明日からは仕事を早めに切り上げてみてください。
そして自宅に到着する前に、仕事と自分自身を切り離し、心身をリラックスさせる習慣を取り入れることをお勧めします。
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越川 慎司(こしかわ・しんじ)
クロスリバー代表
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。
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(クロスリバー代表 越川 慎司)

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