■福岡県議会の闇過ぎる「政治とカネ」の構造
福岡県議会の正副議長ポストをめぐり、就任と引き換えに現金が渡っていた――。その疑惑の渦中で、中尾正幸副議長が7月24日、議員を辞職した。
現金の支払先として名指しされ、本人のものとされる音声データまで示された末の辞職だった。会見で中尾氏は、県政の混乱を招いた責任に触れる一方、金銭の授受については「絶対にない」と否定した。県民への詫びは口にしたものの、疑惑が晴れたわけではない。今後は第三者委員会を設置するのか、解明が進まなければ県議会の解散論も浮上しかねない。
告発された金額は総額で2000万円超。しかも一度きりではなく、議長・副議長が代わるたびに繰り返されてきた“慣例”だとする証言まで飛び出している。永田町を揺るがせた「政治とカネ」の、いわば福岡県版だ。
なぜ福岡県議会に、これほどのカネの構造が生まれたのか。
■議長就任なら1000万円、副議長なら500万円
発端は、一人の元議長の告発だった。2000万円を超える現金を要求され支払ったと暴露したのは、現在は無所属の吉松源昭氏である。カネを要求された日時、理由、場所、受け取った議員名を具体的に示したこともあり、福岡県のみならず全国に大きな衝撃を与えた。
受取人として名前が挙がった前述の中尾氏、松本國寛自民党福岡県連会長、原口剣生元県連会長らは授受を否定。だが、リスクを承知でカネを用意したと明かす吉松氏の言葉には真実味があるとの印象が勝り、マスコミによる自民党県議団幹部への追及は今も続いている。
カネには“相場”もあったという。「議長就任なら1000万円、副議長なら500万円」。複数の議員がそう証言している。実際、吉松氏と同時期に副議長を務めた江藤秀之県議は「副議長就任の際に500万円いると言われ、慣例だと思って手渡した」と会見で発言した。江藤氏に続き、他会派で副議長を経験した議員までもが、カネを払ったと記者たちに漏らし始めている。
彼らが本当に払ったかどうか、ここで断定はできない。だが、仮に払ったとすれば、なぜ唯々諾々と、要求されるがままに応じてしまったのか。そこには、自民党本部や国会議員にすら時に逆らう「自民党福岡県連(以下、福岡県連)」の存在があった。
■地震発生直後に政治資金パーティーを開く
かつて自民党本部の指示に反旗を翻す地方組織があった。「東京都連」、「大阪府連」、そして「福岡県連」だ。東京は小池百合子都知事の誕生で、大阪は日本維新の会の台頭で、ともに弱体化した。しかし福岡県連だけは、その力を維持してきた。
2023年には福岡9区の支部長問題で、県連推薦の大家敏志参院議員を支部長に据えるよう自民党本部に迫り、県議らが本部へ押し掛けている。
ここで「福岡県連」と「自民党県議団」の違いについて整理しておきたい。今後、文中にも頻出するので、ぜひ押さえておいてもらいたい。
「福岡県連」とは福岡県の自民党組織全体を指す。国会議員や県議、市議などが加盟する、福岡県自民党の“表の司令塔”である。
福岡県選出の国会議員は、特に麻生太郎氏(福岡8区)と武田良太氏(福岡11区)の考えが異なりまとまらないため、国会議員の候補者選定は実質、自民党県議団が握っている。
県議団はいわば“議会の現場部隊”ではあるが、県連の人事などにも強い影響を及ぼす。つまり、自民党本部に逆らうこともある福岡県連を実質的に支配しているのが県議団なのだ。
通常、県連会長は国会議員が務めるが、福岡では県議が長年務めている。こんな県は他にない。
今回、吉松氏にカネを要求したとされるのは、この県議団の幹部たちだった。
■自民党県議が守る”鉄の掟”
なぜ福岡県連、県議団はこれほどまでに強いのか。それは、県議団の結束力にある。
かつて福岡には、実力派の国会議員が多数存在した。麻生太郎氏、古賀誠氏、山崎拓氏といった面々だ。
こうした大物たちの横車に振り回されないため、県議たちは会派としての結束を固めていった。だが、その結束は諸刃の剣でもあった。異なる方針で動いた者は徹底的に干すという、そんな「内部規律」が生まれたのである。実際、何人かの有力県議は県議団の方針に従わず、やがて姿を消した。
その規律が近年、標的にしたのが、当選11期を誇る超ベテラン、小倉北区選出の中村明彦県議だ。
中村氏は2023年の北九州市長選で、自民党福岡県連推薦の候補に敵対する武内和久・現北九州市長を推した。9区の支部長問題でも、麻生太郎氏の意向を受け、県連が欠格とした三原朝利衆院議員を陰から支援したのが中村氏だった。
これを県議団は、党推薦以外の候補を応援した「反党行為」とした。北九州市長選の直後、中村氏は松尾統章県議団会長と中尾県議団幹事長(ともに肩書は当時)の査問を受けた。しかし中村氏は「妻は動いたが自分は動いていない」と反党行為を否定した。
吉松氏は松尾氏から「(県議団に逆らう)中村と手を切る最後のチャンスだ」、「中村を慕えば、福岡県連の幹部への道もないぞ」という主旨の言葉をかけられ、諭されたという。
■告発のウラにあった追放劇
しかし、吉松氏は「中村さんについていく」と県議団に背を向けた。これにより、福岡県連幹部への道は事実上閉ざされた。「もう一度反党行為があれば除名する」との言葉も、2人に言い渡されたという。
2024年の衆院選で、吉松氏は自民公認の宮内秀樹衆院議員に対抗し、福岡4区から無所属で立候補、党籍を離れた。一方、中村氏は2025年4月まで県議団に残っていた。だが、この中村氏に松尾会長と中尾幹事長は、会派・自民党県議団に登録しないと通告する。実質上の追放である。
結束を信条とする県議団にとっては当然の措置だったのかもしれない。しかし中村氏はこれに激怒した。
中村氏は追放されるとすぐ、先に無所属となっていた吉松氏と「自由と繁栄の会」という会派を結成した。おそらくこの時から、県議団の不正追及を吉松氏とともに始めたとみられる。前述の江藤氏や高島宗一郎福岡市長など、カネにまつわる暴露をしたのは、いずれも中村氏と関係の深い人物ばかりだ。
■告発の目的は「ドン」を倒すためか
地元記者はこのように話す。
「中村さんは海外視察に30年も参加していません。ただ吉松さんはハワイに県議幹部と同行したこともあり、その実態を熟知しています。海外視察問題で県連への非難が集中し、機が熟した時に『正副議長就任時の金銭授受』を、常態化した慣例のように印象づけて追及する。これが見事にはまりました。永田町でさんざん叩かれた“政治とカネ”の福岡県版です。作戦だとすれば、たいしたものです」
もっとも、今回、中村氏自身は声を上げてはいない。後見人を自負する高島市長の選挙は別として、武内市長の選挙でも、先述した9区の支部長を巡り大家氏と三原氏が争った時も、表立った動きは見せなかった。今回もマスコミが取材を試みたが、拒まれたようだ。
それでも、暴露した吉松氏と江藤氏が中村氏に近いことから、中村氏が裏で絵を描いたのではないか、と県政関係者の中で囁かれている。彼らによれば、その動機は藏内勇夫県議への激しい対抗心だという。藏内県議は「県議会のドン」の異名をとる人物だ。中村氏は、自らの追放に藏内氏の意向が働いたと見ているという。
吉松氏と江藤氏が突如、カネの話を暴露したのはなぜか。中村氏の関与は不明ながら、狙いはおそらく藏内氏を倒すことではないか。今の自民党県議団を作り上げてきたのは、ほかならぬ藏内氏だ。県議団の悪しき慣習をぶち壊すことは、藏内氏を潰すことと同義である。
金銭授受疑惑や海外視察問題の騒動の背後にいる「県議会のドン」藏内氏とは何者か。後編では藏内氏がなぜ県議会で力を得たのかについて迫る。
----------
勢野 進(せの・すすむ)
ノンフィクションライター
ブックライターなどを経て、現在は各地の政治団体等を取材している。
----------
(ノンフィクションライター 勢野 進)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
