認知症にはどう向き合うといいか。医師の和田秀樹さんは「『幸せホルモン』と呼ばれるセロトニンが減少すると、イライラや不安に陥る頻度が増え、認知症への恐怖が強くなっていく。
セロトニンの材料のトリプトファンという必須アミノ酸は、体外の食品から摂ることができる」という――。
※本稿は、和田秀樹『認知症でもひとり暮らし』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■認知症への恐怖を確実に減らす方法
認知症を確実に防ぐことはできませんが、認知症への恐怖は、確実に減らすことができます。ごく簡単です。脳内のセロトニンを増やせばいいのです。
セロトニンとは、脳内にある神経伝達物質の一つで、別名「幸せホルモン」と呼ばれているものです。近年、健康番組や、ネットニュースなどで話題に上ることもあるので、耳にされたこともあるかと思います。
セロトニンが分泌されると、緊張した状態が和らいで、明るく前向きな気分になります。また、興奮物質であるノルアドレナリン、快感や欲求を司るドーパミンといった神経伝達物質の過剰分泌を抑制する働きもあるため、感情のコントロールにも深く関係しているものなのです。
ただし、残念なことに、年齢を重ねるにつれ、セロトニンは減少して行くことが分かっています。セロトニンが減少すると、結果としてイライラや不安に陥る頻度が増えるので、どうしても、あらゆることへの恐怖が強くなってきてしまいます。
「認知症になるくらいなら死んだほうがマシ!」などという過激な考えをお持ちのかたたちは、セロトニン不足で必要以上に認知症を恐れているのでしょう。

このセロトニンは、日常のちょっとしたことで増やすことができます。心身の安定やリラックスのためにも、生活にとり入れてみるといいでしょう。助けになること請け合いです。
■これを食べると不安な気分も楽になる
セロトニンの材料は、トリプトファンという必須アミノ酸なのですが、この必須アミノ酸というのは、自分の体の中でつくることができないので、体外から十分に摂る必要があります。
トリプトファンは、タンパク質に多く含まれています。とりわけたくさん含まれているのが、かずのこ、卵白、鰹節、大豆製品、乳製品(無脂肪のものは除く)、レバー、ナッツ類などです。
これらの食品を摂ることで、不安な気分も楽になります。また、イライラもしにくくなることでしょう。トリプトファンの多い食品を摂ることは賢明なことだと思います。
【コレステロールを怖がりすぎるな】
さまざまな調査では、血中のコレステロール値が高い人のほうが、不安を感じにくいことが分かっています。その理由としては、コレステロールがセロトニンを脳内へと運ぶ働きをしているからだろうと考えられています。
また、コレステロールは男性ホルモン、女性ホルモンの材料になり、老化を遅らせる働きがあるほか、免疫細胞の細胞膜の材料でもあります。

コレステロールが多すぎると、動脈硬化を引き起こすリスクが高まるといい、医者はすぐに薬を出すのですが、それは考えものです。欧米のように、心臓病が死因のトップの国々はともかくとして、日本のように、ガンで死ぬ人が心筋梗塞で死ぬ人の10倍以上いる国では、むしろ、コレステロール値は高いほうが望ましいといえるからです。
セロトニンとともに、コレステロールも一緒に増やしたいなら、肉や乳製品が効果的です。
■最も効果的にセロトニンを増加させる方法
【太陽の光を浴びる】
セロトニンを増やすうえで、もう一つ大切なのが、太陽の光です。食べ物からだと、血中のセロトニン濃度は上がるのですが、脳内のセロトニンが直接増えるわけではありません。脳内のセロトニンを増やすためには、日光が欠かせないのです。
網膜に日光のような強い光が当たると、脳内のセロトニン神経が活性化され、分泌されます。人は、日光を浴びる時間が十分でないと、セロトニン不足を起こしやすくなるのです。
ある程度以上、トリプトファンを摂っている人であれば、日光を浴びるのはもっとも効果的な脳内のセロトニン増加法といえます。
セロトニンは夜になると、脳内でメラトニンという睡眠物質に変わるため、睡眠の状態もよくなります。日光を浴びるのは午前中が効果的です。
【のんびり歩く程度の散歩をする】
適度な運動をしましょう。
特にリズミカルな運動が、セロトニンの分泌を促すとされています。ウォーキングやジョギングが望ましいといわれていますが、私は、のんびり歩く散歩程度で十分だと考えています。散歩は、比較的歩くリズムが一定になりやすく、セロトニンの分泌を促すに足る動きです。
街の景色や変化を楽しみながら歩く散歩は、視覚刺激がセロトニンの分泌を高めてくれるうえに、脳の前頭葉の刺激にもなるので、おすすめです。何より、無理なく続けられるのがメリットでしょう。まずは3000歩ぐらいを目指して、楽しみながら歩かれたらいいと思います。
■落ち込む感情は逆効果
【映画や読書で感情を動かす】
セロトニンの活性化には、感情を大きく動かすこともいいとされています。
ただし、落ち込む感情は逆効果です。
話のネタが豊富な人との会話を楽しんだり、ドラマティックな映画を観たり、展開が激しいストーリーの本を読むというのは有効です。テレビの情報番組は不安を煽る情報ばかりなのでダメです。観ないほうがましです。
DVDを借りてきて映画を観たり、ネットフリックスやアマゾンプライムビデオなどで評判のいい作品を選んで観るといいと思います。

これらは、かなり効果があるので、駆使して下さい。そして、十分な睡眠をとり、ストレスをためないようにすることも大切です。
何度でもいいますが、認知症は、恐れるようなものではありません。どうせ、いつかはみんなボケます。それを少しでも遅らせ、歳をとったら飄々と生きていればいいだけなのです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)

精神科医

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。立命館大学生命科学部特任教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。
高齢者専門の精神科医として、40年にわたり高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。

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(精神科医 和田 秀樹)
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