■体力がある人でも、暑さ対策は必須
暑い日が続いていますが、みなさん、いかがお過ごしでしょうか。
今年、気象庁が「酷暑日」(最高気温が40度以上の日)という名称を発表しましたが、7月の時点で5日連続で「酷暑日」が観測されたそうです。
暑さ対策は全世界的に、さまざまな分野で行われており、たとえば、7月に閉幕したFIFAワールドカップ2026では、熱中症リスクを軽減するため、「ハイドレーションブレーク」と呼ばれる給水タイムが設けられました。また、全国高等学校野球選手権大会では、数年前から「クーリングタイム」(給水タイム)が設けられています。普段から激しい練習をこなし、体力に自信のある選手たちでさえ、暑さと戦うのは簡単ではないのです。
上記の例からわかるように、暑い時期には小まめな水分補給が欠かせません。屋内だからといって油断せずに、エアコン等を使って部屋の温度を下げ、屋外に出るときには、帽子や日傘を着用するとよいでしょう。私はファンのついた作業着や持ち運びのできる小型の扇風機も活用しています。
参考:厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料サイト」
■コンビニで買うなら「冷やし中華」
ここで「栄養学」の視点から用心していただきたいことを1つお伝えすると、夏場は暑さで体力を消耗したり、冷房と外気温の差で自律神経が乱れがちです。食欲がなくなってしまうことも少なくありません。私たちの身体は毎日摂取する「食べ物」からつくられており、活力増進にはバランスのよい食事が欠かせないことを考えると、食欲がなくなり、栄養に偏りが出てしまいがちな夏は要注意な季節といえるのです。
そして、9月に入っても暑さは続きます。食欲が落ちたまま栄養の偏りが続けば、体力の低下につながります。
とはいえ、暑い夏に食欲を維持しながら、毎食ごとにバランスのよい食事をとるのは簡単ではないでしょう。そこで本記事では、気軽に試していただけるように「コンビニでも買える」という観点から、暑い夏を乗り切るための栄養素を考えてみたいと思います。
率直に申し上げると、コンビニで売られている食品は、栄養バランスがあまり考えられていないものもあります。私たち消費者側がおいしさばかりを基準に選んでしまえば、栄養に偏りが出てしまいます。
コンビニで売っているお弁当類の中で、私がおすすめするのは、「冷やし中華」です。さっぱりしていて、暑い夏にぴったりです。栄養の観点からいっても、麺類ですから当然「炭水化物」は摂取できますし、きゅうりやハムなどさまざまな具があります。コンビニ食の中でもとりわけバランスがとれています。
■バランスのよい食事である
前回もプレジデントオンラインの記事でご紹介しましたが、女子栄養大学の創立者で、私の母である香川綾が考案した、バランスのよい食事をとる際の指標となる「四群点数法」に当てはめてみましょう。
第1群:卵(錦糸卵やゆで卵)
第2群:魚(ツナ、カニカマ)、肉(鶏肉、チャーシュー、ハム)
第3群:野菜(トマト、もやし、紅しょうが、きゅうり)
第4群:麺
第1群の卵、第2群の魚や肉には「たんぱく質」が含まれています。
さすがに毎日毎食、「冷やし中華」では偏りが出てしまいますが、食欲があまりないときや忙しくて時間がないときにはおすすめです。コンビニで手軽に入手できて便利ですよね。
ここでは、栄養学的な視点から「冷やし中華」と一緒に食べるとさらによい食材をいくつかご紹介しましょう。
■「チャーシュー」「卵」の追加がおすすめ
まずご紹介するのは、トッピング類です。
冷やし中華がバランスのよいメニューであることはお伝えしたとおりですが、コンビニで気軽に購入できるもの、かつ相性を考えると、「チャーシュー」や「卵」を追加するとよいでしょう。
すでに、冷やし中華には、肉と卵が載っていることが多いのですが、肉や卵に含まれる「たんぱく質」は筋肉のもととなる栄養素です。とくに食が細くなった高齢の方だと不足しているケースがありますのでしっかりと摂取することをおすすめします。
また、卵にはビタミンとミネラルもかなりそろっています。不足しがちなビタミン、暑い夏に失われがちなミネラルも摂れるので、おすすめです。
次にご紹介したいのは、トッピングではなく、副菜です。
■サラダが良いが、野菜ジュースも活用していい
サラダと一口に言っても、さまざまな種類のサラダがあります。ご自身の好みや栄養状態を考えたうえで選んでみてください。
たとえば、もし、緑黄色野菜が不足しているなら、「キャロットラペ」のような「にんじん」がたくさん使われているものを選ぶといいでしょうし、豆や雑穀が入っているサラダを選べば野菜以外の食材の食物繊維を摂取することが可能になります。フルーツが入っているサラダであれば、果物のビタミンを補うことができます。
ここまで「食べ物」をいくつかご紹介しましたが、「飲み物」からも摂ることができます。さきほど、日本人には野菜に含まれる栄養素が不足しているとお伝えしましたが、厚生労働省が推進する「健康日本21」(第三次)で設定されている1日の野菜の摂取目標は「350g」です。これを達成するには、緑黄色野菜を両手1杯、その他の野菜を両手2杯分摂取する必要があります。忙しいみなさんにとって難易度が高いのではないでしょうか。
もちろん野菜そのものを食べるのが基本です。
■栄養の摂取は“朝・昼・晩でバランスよくわけて”
ここまでの文章をお読みになって、「冷やし中華を昼に食べよう」と思っていらっしゃる人も多いのではないでしょうか。最後に、「いつ食べるか」についてもお伝えしておきましょう。もちろん、昼に食べても何の問題もありませんが、実は私は夕食に冷やし中華を食べることが少なくありません。
栄養素というのは、一度に多く摂ることは避けたほうがいいのです。とくにたんぱく質は一度に多く摂っても十分に活用できません。高齢者にとって大切なのは、朝・昼・晩に均等に栄養を摂ることです。
図表1をご覧ください。これは、たんぱく質を朝・昼・晩にわけて摂った場合と、夕食に偏って摂った場合を比較した研究結果です。同じ量を摂っていても、朝・昼・晩で均等に分けたほうが筋肉合成が高いことがわかります。
若い人は夕食に「冷やし中華」では物足りないかもしれません。ですが、特に私のような高齢者は、栄養素の吸収、利用のスピードが落ちていますから、夜にたくさん栄養素、とくに「たんぱく質」を摂取しても、十分に活用できないのです。
仮に、夜にたくさん食べて、十分な量のたんぱく質をとっているつもりでも、朝と昼の摂取量が少ないと、筋肉等が衰えてしまって、「フレイル」(心身の活力が低下した状態)になってしまうことがあります。ですので、年を重ねれば重ねるほど、栄養は一度にとるのではなく、1日でバランスよく摂取することを意識していただければと思います。
それでは、みなさん、暑い日はまだまだ続きますが、しっかりと栄養をとって、元気に過ごしていきましょう。
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香川 靖雄(かがわ・やすお)
日本栄養大学副学長
1932年、東京都生まれ。東京大学医学部医学科卒業、聖路加国際病院、東京大学医学部助手、信州大学医学部教授、米国コーネル大学客員教授、自治医科大学教授、女子栄養大学大学院教授を経て、現在、自治医科大学名誉教授、日本栄養大学副学長。専門は生化学・分子生物学・人体栄養学。著書に『92歳、栄養学者。ただの長生きではありません!』『科学が証明する新・朝食のすすめ』『香川靖雄教授のやさしい栄養学』(以上、女子栄養大学出版部)、『老化と生活習慣』『生活習慣病を防ぐ』(以上、岩波書店)などがある。
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(日本栄養大学副学長 香川 靖雄 構成=池口祥司)

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