小谷野税理士法人は、東京を拠点に中小企業を支援する、中堅の総合系税理士法人です。公認会計士・税理士など30名を含むおよそ80名の体制で、税務顧問にとどまらず、事業承継やM&Aまでをワンストップで担っています。


近年、私たち中小企業支援チームのもとには「個人の先生から、税理士法人へ乗り換えたい」という相談が増えています。本ストーリーでは、その声に一件ずつ向き合うなかで、担当者が言語化していった「個人税理士と税理士法人の違い」と、自社に合う選び方を紹介します。

成長した企業から増えはじめた「乗り換えたい」という相談

「先生には、ずっとお世話になってきました。でも、この先のことを考えると――」。電話口で言葉に詰まった経営者の声を、今でも覚えている。創業以来、個人の税理士に支えられてきた会社が、事業の拡大とともに相談先の見直しを迫られていた。私たちのもとには、こうした“感謝と迷いが同居した相談”が、年々増えている。

近年、税理士業界では事務所の法人化が進み、個人で開業する税理士と、組織として運営する税理士法人の双方が、選択肢として並ぶようになった。どちらを選ぶかは、もはや「どちらが格上か」という話ではなく、自社のフェーズに合うのはどちらか、という問いに変わってきている。

会社の規模が大きくなり、税務や会計の相談先を見直したい――そう考えたとき、多くの経営者がまず迷うのが「個人で開業している税理士に頼むか、税理士法人に頼むか」という選択である。前提として、個人税理士は税理士本人1人で開業・運営できるのに対し、税理士法人は税理士法により社員(税理士)を2人以上置くことが義務づけられた法人組織だ。この構造の違いが、後で述べる継続性や専門性の差につながっている。

私たちのもとに寄せられる「乗り換えたい」という相談には、共通する背景があった。
多くは、事業が次のフェーズに進み、税務処理の中身が変わってきたタイミングで持ち込まれる。創業期は個人の先生で十分だったのに、事業承継や補助金、複数拠点の管理といった論点が同時に出てきて、「今の体制で大丈夫だろうか」と不安を抱く――そんな経営者の声が、年々増えていた。

相談に来られる経営者の多くは、個人の先生への不満を口にするわけではない。むしろ「今までよくしてもらった。でも、これからのことを考えると不安がある」という、感謝と不安が入り混じった複雑な気持ちを抱えていた。だからこそ私たちは、安易に乗り換えを勧めるのではなく、まず違いを正しく整理することから始めようと考えた。

「知人の紹介だから」で選んだ先に表面化する、フェーズの壁

なぜ、成長フェーズで相談先の見直しが必要になるのか。私たちは、乗り換えを検討する経営者へのヒアリングを重ねるなかで、その理由を整理していった。

多くの経営者は、最初の税理士を「知人の紹介だから」「料金が手頃だから」といった理由で選んでいた。それ自体は自然なことだが、選んだ理由が言語化されないまま契約が続くと、事業が次のフェーズに進んだときに、対応領域や継続性の面で課題が表面化しやすい。とくに、相談したい論点が一つから複数へと増えたとき、その差は一気に大きくなる。

私たちが向き合ってきたのは、まさにその“フェーズの壁”だった。個人税理士には、柔軟な対応や意思決定の速さ、代表者本人と直接やりとりできる安心感、そして法人より抑えやすい費用水準といった、確かな強みがある。
一方で、複数領域の同時対応や、5年後・10年後も変わらず伴走してもらえる継続性という点では、組織として動く税理士法人に分がある。どちらが優れているという話ではない。問題は、その違いを言語化しないまま選んでしまうことにあった。

個人税理士の強みを、私たちは現場で何度も実感してきた。組織としての意思決定プロセスを経ないぶん、イレギュラーな相談や急ぎの案件でも迅速に方針を出せる。担当者が代表者本人で固定されるため、毎回事情を説明し直す負担もなく、数字の確認にとどまらない経営の壁打ち相手にもなりやすい。運営コストが軽いぶん、顧問料を抑えやすい傾向もある。これらは、立ち上げ期や、経営者と密に相談したい段階の企業にとって、確かな価値になる。

個人税理士の良さを痛感した場面もある。ある小規模の顧問先では、急な資金繰りの相談に対して、個人の先生がその日のうちに方針を返していた。組織で動くと、どうしても確認の一段階が挟まる。スピードと距離の近さは、数字には表れない確かな価値だ。
私たちは、その良さを正しく認めたうえで、違いを語りたいと考えてきた。

ただし、料金の安さだけで判断すると、後になって対応領域や継続性の面で想定外の課題が生じることもある。費用は「何を担保した結果の金額か」という観点とセットで見る必要がある。とくに継続性――その税理士の年齢や健康、引退の時期が、5年後・10年後の伴走に直結するという論点は、依頼前に率直に確認しておきたいところだ。

事業承継・M&A・補助金が同時に来た企業の、乗り換えという決断

違いが最も鮮明になったのは、ある成長企業からの相談だった。長く個人の先生に支えられてきた会社で、創業期から二人三脚でやってきた信頼関係があった。ところが事業の拡大に伴い、事業承継の検討、M&Aの打診、そして大型の補助金申請が、ほぼ同じ時期に重なってしまった。

個人の先生は誠実に対応されていたが、複数の専門領域を一人で同時にカバーするのは、現実的に難しかった。経営者は「先生を替えたいわけではない。でも、今の課題に追いつける体制が必要だ」と悩んでいた。これは個人税理士の弱点というより、1名または少人数という体制の限界が、企業の成長によって表面化した場面だった。最終的にその企業は税理士法人への乗り換えを決断したが、移行の過程にも、いくつもの実務的な山があった。

ひとつは、会計データと申告書類の引き継ぎだ。
使っている会計ソフトによって難易度は変わり、データをCSV形式などで出力できるか、勘定科目の体系をそのまま引き継げるかが論点になる。過去の申告書類(一般に直前3期分が一つの目安)をどの範囲で受け取れるかも、事前に確認が要る。もうひとつは、契約上のスケジュール調整。決算期との関係や、旧契約に定められた解約予告期間を見落とすと、想定したタイミングで切り替えられなかったり、費用が二重に発生したりする。私たちは現契約の終了条件から逆算して、移行のスケジュールを組み立てた。

移行作業は、想像以上に神経を使うものだった。旧事務所が使っていた会計ソフトは独自の勘定科目体系で運用されており、そのまま新環境へ移すと過去との比較ができなくなる。私たちは旧データをCSVで書き出し、科目を一つずつ突き合わせて対応表をつくった。過去3期分の申告書類も、どの様式で受け取れるかを旧事務所に確認しながら、抜け漏れがないように引き継いだ。経営者には極力負担をかけず、裏側で地道に整える――この期間の丁寧さが、移行後の信頼を左右する。

もっとも、税理士法人なら万能というわけではない。組織で動くぶん、顧問料は個人より高めになりやすく、代表者本人と日常的にやりとりする機会は限られる。
税務・労務・補助金と担当が分かれ、窓口が複数になることもある。私たちはこの企業の移行にあたって、全体を取りまとめる窓口担当を一人立て、複数の専門家が関わっても経営者の連絡先は一本化されるようにした。専門性の高さと、窓口の分かりやすさを両立させる――それが、組織型を選んでもらううえで欠かせない設計だと考えている。

逆の判断をした企業もある。売上は伸びていたが、業務は定型的で、相談の中心は日々の記帳と月次の確認だった。その経営者には「今は無理に法人へ移る必要はないのでは」と率直に伝えた。乗り換えありきではない。課題の質が変わったかどうかで判断する――その姿勢こそ、私たちが手放したくない軸だ。

この経験から、私たちは違いを5つの軸で整理した。担当者の交代があっても組織としてナレッジが引き継がれる「継続性」。業種別・課題別のチームを持てる「組織力」。複数領域に対応できる「専門性」。
運営コストを反映した「コスト」。代表者と直接やりとりできる速さといった「柔軟性」。継続性・組織力・専門性の3軸では税理士法人に、コストと柔軟性の2軸では個人税理士に分がある。組織で継続性をカバーするという発想は、個人税理士のデメリットを否定するものではなく、企業のフェーズに応じて選び替えるための物差しなのだと、私たちはこの一件から学んだ。

どちらが優れているかではなく、自社のフェーズで使い分ける

個人税理士と税理士法人は、どちらかが一方的に優れているわけではない。事業規模が小さく、税務処理も定型的で、経営者と税理士本人が密に相談したい段階なら、柔軟性とコスト面で個人税理士が合いやすい。一方、事業承継やM&A、補助金といった複数の経営課題が見えてきた段階や、長期的な継続性と情報管理の体制を重視する段階に入ったなら、組織力と継続性で税理士法人が合いやすい。

判断の出発点は、現在の事業規模だけでなく、3年後・5年後にどんな課題に直面しそうかを見通すことだ。私たちはこれからも、「乗り換えたい」という声の奥にある不安に向き合い、その企業のフェーズに本当に合う選択を一緒に考えていきたい。気になる候補があれば、無料相談の場で現状の課題を率直に伝え、相性を確認することをおすすめする。

あの乗り換えを決断した企業は、その後、事業承継の検討と補助金申請を並行して進めている。窓口を一本化したことで、経営者が複数の専門家に同じ説明を繰り返す手間もなくなった。「これで、次の代に渡す準備に集中できます」。その言葉を聞いたとき、違いを言語化してきた意味を、あらためて実感した。

よく「売上いくらで法人に切り替えるべきか」と聞かれるが、一律の基準はない。判断材料になるのは売上規模よりも、取引数の多さや経営課題の複雑さだ。事業承継やM&A、補助金といった、個人では同時対応が難しい論点が見えてきたかどうかが、実務的な目安になる。課題が顕在化してから慌てて探すより、見通しが立った段階で準備を始めるほうが、引き継ぎに余裕を持てるはずだ。

当法人(小谷野税理士法人)の体制

ここでは、当法人(小谷野税理士法人)の体制を簡潔に紹介する。

小谷野税理士法人

中堅の総合系税理士法人。公認会計士・税理士等資格者30名を含む、おおよそ80名の体制で、うち2名が国税OB(国税出身者)である。品質マネジメントのISO9001を2001年に取得して約25年、情報セキュリティのISO27001を2011年に取得して約15年、いずれも継続している。事業承継・相続・M&A・DD(デューデリジェンス)・バリュエーション(企業価値評価)・組織再編をワンストップで扱う体制を持ち、2005年以降の業種別・規模別のコンサルティング実績の一部を公式サイトのコンサルティング実績ページで開示している。専門家の層の厚さ、継続性の仕組み、第三者認証という、税理士法人のメリットとして挙げた要素を当法人の体制として整えている。

参考:小谷野税理士法人(サービス紹介公式サイト
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