中国で生まれ育った彼は、17歳で音楽を学ぶためイギリスへ渡る。
2025年、長年ソングライターとして培ってきた経験をもとに、自身のアーティストプロジェクト「S.H.-17」を始動。このプロジェクト名には、音楽人生の原点となった17歳当時の自分への思いが込められており、「アイデンティティ」や「居場所」をテーマにした作品を発表している。プロジェクト第1弾シングル「Where Is My Home」では、日本のシンガーソングライター・岡嶋かな多が共作として参加した。続く今年1月には新曲「Thursday」をリリース。韓国の大手芸能事務所・レコードレーベルであるYG Entertainmentの制作チームと共に制作された本作は、K-POPとブリットポップを融合させたサウンドで、新しい世代の恋愛観を描いている。
現在はイギリスを拠点としながらアジア各国で活動するShao Hao。今後の重要な活動拠点のひとつとして日本にも目を向け、日本語楽曲やライブ活動の準備を進めている。今回、日本メディア初となるインタビューでは、これまでの歩みと音楽に込めた想いについて語ってもらった。
愛、人とのつながり、そして「居場所」について
Photo by Takashi Kamei
ー音楽を始めたきっかけを教えてください。
7歳の頃、母がピアノ教室に通わせてくれたことが始まりでした。
ー中国で生まれ育ち、その後イギリスへ移住されました。そうした多文化的なバックグラウンドは、あなたの音楽やアイデンティティにどのような影響を与えていますか?
とても興味深いことだと思っています。アジアのポップスとイギリスのポップミュージックを融合させているアーティストはまだ多くないので、僕はリスナーに対して独自のものを届けられていると感じています。その組み合わせこそが、自分自身のアイデンティティなんです。すべて自然な流れでした。
ーあなたにとって「ホーム(居場所)」とは何ですか?
子どもの頃からずっと、「自分の居場所はどこなんだろう?」と考えていました。僕はさまざまな場所で暮らしてきました。中国で生まれ、その後イギリスへ移住しました。そして最近では家族が日本に家を購入したので、この3年間は一年の半分ほどを日本で過ごしています。そんな経験をしてきたからこそ、「ホーム」という言葉は地理的な場所ではなくなりました。僕にとってホームとは、愛する人たちであり、自分が属していると感じられるコミュニティのことなんです。だからこそ「Where Is My Home」という曲を書きました。もし自分の居場所がないように感じたり、どこにも属していないように感じたりしている人がいたとしても、愛してくれる人たちの中にホームは存在するということを伝えたかったんです。ホームとは場所ではなく、「つながり」や「帰属意識」そのものなんです。
ー初めて日本を訪れたのはいつですか?
かなり前ですね。高校卒業後だったので、おそらく2009年、19歳頃だったと思います。家族と一緒に東京と北海道を訪れました。すべてが本当に美しくて、「また来たい」「もっと日本文化を知りたい」と思ったことを覚えています。僕は子どもの頃から日本のアニメをたくさん見て育ちましたし、J-POPを含む日本文化からも大きな影響を受けてきました。とても大切な思い出です。
ー影響を受けた日本のアニメやアーティストは?
中国に住んでいた頃からJ-POPをたくさん聴いていました。宇多田ヒカルさん、浜崎あゆみさん、YUIさん、コブクロさんには本当に大きな影響を受けています。昔から日本のシンガーソングライターが大好きなんです。アニメや漫画では、『ONE PIECE』や『NARUTO』が大好きでした。ティーンエイジャーの頃によく読んだり観たりしていました。日本文化は今の自分を形作る上でとても大きな存在です。
ーソングライティングの原点は何ですか?
一番古い記憶は、ピアノでメロディを弾きながら何かを作って遊んでいたことですね。音楽大学に入ってからはクラスメイトと共作を始め、自分にとって初めて本格的なデモ曲を書きました。僕の場合、ソングライティングは常に感情から始まります。僕は基本的にトップライナーなので、自分の感情を表現する手段がメロディなんです。感情はソングライティングにおいてとても大きな要素ですし、それこそが僕自身の表現方法なんです。
ーこれまで最も影響を受けたアーティストやジャンルは?
たくさんのイギリス人アーティストから影響を受けましたが、特にAdeleですね。彼女のストーリーテリングと、その伝わる力には本当に影響を受けました。個人的な物語を人に共有することで、とても大きな力が生まれるんです。Stevie Wonderも大きな存在です。ハーモニーやソウルフルな表現に影響を受けました。Coldplayの感情表現やステージパフォーマンスも大好きですし、Frank OceanのソングライティングやR&Bスタイルにも大きな影響を受けています。アジアでは、幼い頃から孫燕姿(Stefanie Sun)を聴いて育ちました。
最も影響を受けたアーティストと、アーティスト活動への転機
ーこれまで最も影響を受けたアーティストやジャンルは何ですか?
たくさんのイギリス人アーティストから影響を受けましたが、特にAdeleには大きな影響を受けています。彼女のストーリーテリングの力、そしてそれが人に与えるインパクトにとても感銘を受けました。自分の深く個人的な物語を他者と共有することで、音楽はとても大きな力を持つものになると思うんです。Stevie Wonderも、彼のハーモニーやソウルフルな表現によって大きな影響を与えてくれた存在です。また、Coldplayの感情表現や圧倒的なステージパフォーマンスも大好きですし、Frank OceanのソングライティングやR&Bスタイルにも影響を受けています。アジアのアーティストでは、子どもの頃から孫燕姿(Stefanie Sun)の音楽を聴いて育ちました。彼女は幼い頃からずっと憧れの存在でした。
ー素晴らしいですね! 実際にお会いしたこともあるんですか?
はい! 僕の曲が彼女のワールドツアーのテーマソングになったことがきっかけで、コンサートに招待していただきました。初めて会った時は本当に緊張していましたが、彼女はとても親切で気さくな方でした。良い意味で、まったくスーパースターらしくなかったんです。たくさん励ましの言葉もかけてくれて、「自分も彼女のような人になりたい」とさらに強く思うようになりました。
Photo by Taka S
ーソングライターではなく、自身の名義でアーティスト活動を始めようと思ったきっかけは?
間違いなくAdeleの存在です。彼女が自分自身の物語を、とても正直に、そしてありのままに語っている姿に大きな影響を受けました。僕自身も、自分らしくありながら、自分のストーリーを誰かに届けられる人になりたいと思ったんです。世の中には、自分の居場所がないと感じている人や、周囲と違うことに悩み、自信を持てない人がたくさんいると思います。僕はそうした弱さや葛藤、経験を音楽を通して共有したい。そして同時に、人を励ましたいんです。「大切なのは、自分らしくいること」そのことを伝え続けたいと思っています。
ーアーティストとして活動することと、ソングライターとして活動することの違いは何ですか?
まったく違います。ソングライターとしての人生はもっと気楽でした。裏方として音楽を書き、物語を紡ぐことだけに集中できましたから。でもアーティストになると責任が増えます。自分を見てくれる人、憧れてくれる人も増えるので、自分の発言や行動、どう生きるかまで含めてすべてが重要になってきます。
ーアーティスト活動はいつ頃から始めたのでしょうか?
本格的に始めたのは昨年です。最初はイギリスで学校ツアーを回ることからスタートしました。僕の曲の多くは、過去の自分へ宛てた手紙のようなものなんです。若かった頃の自分を励まし、さまざまなトラウマを乗り越えられるようにという思いを込めています。最初はバーやレストラン、オープンマイクイベントなど、さまざまな場所で演奏していました。そんな時、学校ツアーを企画している友人と話す機会があったんです。そのツアーでは演奏だけでなく、生徒たちとの対話も行われていました。音楽に込めたメッセージを伝える講演のようなもので、メンタルヘルス、多様性、アイデンティティといったテーマも扱っていました。その話を聞いた時、「これこそ、自分が音楽でやりたいことだ」と感じたんです。単に演奏するだけではなく、意味のあるメッセージを届け、若い世代を勇気づけること。それが僕のやりたい音楽活動なんです。
Thursday ― 新しい時代の愛のかたち
ー新曲「Thursday」というタイトルにはどんな意味が込められているのでしょうか?
今の若い世代の間では、「Thursday is the new Friday(木曜日は新しい金曜日だ)」という言葉がよく使われています。僕にとってThursdayは、新しい世代の恋愛観や、新しい愛の形を象徴しています。もっとオープンで、遊び心があって、正直な愛。そんな考え方です。だからこそ、この曲を書きました。「これもひとつの愛の表現なんだ」と自然に感じられるような楽曲にしたかったんです。今の社会には本当にさまざまな人がいて、さまざまな関係性があります。この曲では、その多様性そのものを祝福したいと思いました。性別や背景に関係なく、愛は愛です。そして僕たちは、そうした新しい愛の形を受け入れていくべきだと思っています。
ーなぜレコーディングをソウルで行ったのですか?
YG Entertainmentの素晴らしい制作チームと出会い、一緒に曲作りを始めたことがきっかけです。彼らの才能に本当に驚かされて、「K-POPとブリットポップを融合させたら面白いものが作れるんじゃないか」と思いました。この曲は韓国チームとの共作だったので、レコーディングもソウルで行うことにしました。現地で制作することで、彼らから直接的なアドバイスや方向性をもらうことができましたし、K-POPカルチャーの中に身を置き、そのエネルギーを楽曲に取り込むこともできました。
ーコラボレーションの中で印象的だった出来事はありますか?
ソウル滞在中にはK-POPのパフォーマンスレッスンまで受けました。プロデューサーがK-POPアーティストのシン・ジユンさんを紹介してくれて、彼女からダンスやパフォーマンスについて教えてもらったんです。もちろん、K-POPアイドルのようなレベルだとは思っていません。あれは何年もの厳しいトレーニングが必要ですから。だから『Thursday』のMVでは、一緒に考えた振り付けを少し取り入れました。僕にとっては、K-POPのパフォーマンス文化を体験しながら、自分のスタイルに取り入れられる要素を探すことが目的でした。その過程でK-POPカルチャーについて本当に多くのことを学ぶことができました。
ーHarry Evansとはどのように出会ったのでしょうか?
MVのキャスティングを進める中で、さまざまなアイデアを検討していました。俳優を起用するべきか、バンド演奏を中心にするべきか。そんな話をしていたんです。でも「Thursday」のテーマは、新しい愛の形と新しい世代の恋愛観です。だからこそ、もっとオープンで、多様性を受け入れる作品にしたいと思いました。その結果、MV内に登場する架空の恋愛番組の司会者としてドラァグクイーンを起用し、多様性を表現することにしたんです。実はこの曲の日本語バージョンもすでにレコーディングを終えていて、近いうちにリリースできると思います。
ー日本の音楽業界で仕事をしてきた経験について教えてください。
日本、そして日本の音楽業界で仕事をする中で、本当に多くのことを学びました。以前関わっていたMandopopの業界とはかなり違います。僕は日本のソングライターの方々をとても尊敬しています。皆さん本当に努力家ですし、デモを作る時も、僕にはそれが単なるデモには聴こえないんです。すでにリリースできる完成曲のように聴こえる。その献身的な姿勢には、いつも本当に感銘を受けています。
ー岡嶋かな多さんとのコラボレーションは、どのように始まったのでしょうか?
かな多とは、約3年前に出会いました。台北で開催されたソングライティング・キャンプに参加した時、彼女が唯一の日本人ソングライターだったんです。それが最初の出会いでした。ちょうどその頃、僕の家族が東京に家を購入していて、僕が東京に戻った後も連絡を取り合うようになりました。そこから一緒に遊ぶようになり、やがてとても親しい友人になりました。音楽もたくさん一緒に作るようになりました。彼女は素晴らしい日本のプロデューサーもたくさん紹介してくれました。皆さんとてもフレンドリーで、日本でたくさんのソングライター仲間を作ることができました。僕はロンドンに自分の部屋があるので、彼女も何度か遊びに来てくれて、そこで一緒に曲を書いたこともあります。たとえば、バーチャルアーティストグループV.W.Pによる日本のアニメ『神椿市建設中。』のために書いた楽曲は、実は僕のロンドンの部屋で一緒に作ったものなんです。
Photo by Kentaro Murata
ーロンドンでは、あなたの音楽仲間を彼女に紹介したのですか?
はい。僕のイギリスの共作者には、Sam RyderやRudimental、また有名なイギリスのポップアーティストたちと仕事をしてきたソングライターもいます。彼らと一緒に何度かセッションを行い、そこで「Where Is My Home」が生まれました。とても楽しいセッションでした。かな多はJ-POPやK-POPの要素を持ち込んでくれて、僕のイギリスの仲間たちはブリットポップの要素を持ってきてくれた。その結果、とてもインターナショナルなサウンドになったんです。
ー現在の日本やアジアの音楽シーンをどのように見ていますか?
アジアの音楽シーンには、音の細部やメロディに大きな価値があると思います。アーティストのタイプも本当にさまざまです。アイドル性やビジュアルを重視する人もいれば、歌の表現に重きを置くシンガーソングライターもいます。アジアの音楽は急速に成長していて、欧米のリスナーにもどんどん受け入れられるようになっています。たとえば僕がイギリスで学校ツアーをすると、若い世代がJ-POPについて本当によく知っていることにいつも驚かされます。中には「Adoを知ってる? Adoが大好きなんだ!」と聞いてくる生徒もいました。もちろん、K-POPのこともよく知っています。アジアの音楽は、これからさらにグローバルになっていくと思います。
ー今後コラボレーションしたい、または共演したいアーティストはいますか?
アーティストとしては、宇多田ヒカルさんと一緒に歌うことがずっと夢です。もうひとつの夢は、山下達郎さんと仕事をすることです。彼は本当にレジェンドです。遠い夢のように聞こえるかもしれませんが、彼らは僕にとって本当に大好きな日本のアーティストであり、プロデューサーなんです。新しい世代の日本のアーティストでは、藤井風さんやYOASOBIも大好きです。いつかコラボレーションできる機会があればと思っています。藤井風さんの楽曲にも関わっているYaffleさんのようなプロデューサーとは、すでに何度かライティングセッションをさせていただいています。そうした素晴らしいクリエイターたちとつながれていることに、とても感謝しています。
ー2026年の目標を教えてください。
「S.H.-17」をグローバルなプロジェクトに育てていきたいです。現在制作しているEPでもあります。S.H.-17は、僕にとって17歳の自分へ戻るためのタイムトラベルのコードのようなものです。楽曲は、若かった頃の自分へ向けたメッセージで、「すべて大丈夫だよ」と伝える手紙のようなものです。イギリス、日本、そして世界中の国々で、より多くのリスナーに届けたいと思っています。そして、単なる数字ではなく、本物の感情やストーリーでつながる、強いファンコミュニティを作っていきたいです。個人的には、地に足をつけていたいと思っています。自分自身のメンタルヘルス、そしてリスナーの心の健康も大切にしながら、正直な音楽を書き続けたいです。これは僕にとって本当に大切なことです。僕の音楽が、人々の心を開くきっかけになればと思っています。新しい文化、新しい生き方、新しい愛の形を受け入れること。そして、少しでも誰かの癒しにつながることを願っています。
ーグローバルを目指す日本のアーティストへアドバイスをお願いします。
自分自身と、自分の音楽を信じることです。言語は壁ではありません。メロディそのものが感情を表現してくれるからです。ありのままの自分でいて、できる限り強いメロディを作ること。どんな言語の音楽であっても、そこに本物の感情があれば、人は必ずつながると思います。僕自身、17歳でイギリスに来た時、自分の居場所がないように感じていました。自分はよそ者だと感じていたんです。でも今は、多くの人の前でパフォーマンスし、自分の音楽を届けることができています。だから、かつての僕と同じように感じている人がいるなら、自分を信じて、自分自身の一番良い姿でいてほしいと思います。
ー最後に、日本のリスナーへメッセージをお願いします。
はい! 僕はまだ日本では新しい存在ですが、日本でたくさんの新しいつながりを作り、もっと多くの日本のファンや友人に出会えたらと思っています。ぜひ僕の音楽を楽しんで、そこに込めたメッセージを受け取ってもらえたら嬉しいです。僕の使命は、音楽を通して人々が自分自身を肯定できるようにすること、癒しを届けること、そして誰もが自分自身のベストな姿になれることを思い出してもらうことです。
<リリース情報>
Shao Hao
最新EP『S.H.-17』
2026年6月13日リリース
配信リンク:https://ffm.to/sh17
「Thursday」の日本語バージョンを含む本作は、アイデンティティや帰属意識、自己発見といったテーマを軸に制作された作品となっている。


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