2009年の『アメリカン・アイドル』出演から17年。ソロ活動と並行してクイーンのステージに立ち続けてきたアダム・ランバートが、自身の名を冠したニューアルバム『ADAM』を発表した。
初のセルフリリース作に込めた思い、音楽業界とクィア・アーティストを取り巻く環境の変化、クイーンから学んだ「抑えること」の力、そして過去のイメージを更新したいという願い。人生の新たな章を迎えた現在地を語った。

アダム・ランバートがオーディション番組『アメリカン・アイドル』で惜しくも優勝を逃したのは、2009年のこと。あれから17年が経った。

しかし、準優勝という結果は、その後の成功へと続く最初の一歩にすぎなかった。ソロアーティストとして「Ghost Town」などのヒット曲を生み出し、さまざまな音楽性に挑戦しながら、自らのスタイルを何度も更新してきた。

その一方で、2012年からはクイーン+アダム・ランバートとして、ブライアン・メイ、ロジャー・テイラーと世界各地をツアーしてきた。フレディ・マーキュリー亡き後のクイーンを支える存在として、その圧倒的な歌声でロック界のレジェンドたちとステージをともにしている。

そんな彼が今、新たな表情を見せる。7月10日にリリースされたアルバム『ADAM』は、現在のアダム・ランバートを映し出す作品だ。

Rolling Stone Germanyののインタビューで彼は、自身がどのように変化してきたのか、そしてその間に周囲の世界がどう変わったのかを語った。

『ADAM』には、どれほどアダム自身が込められているのか

新作に自身の名前を冠したからといって、過去のアルバムよりも今回の音楽が、これまで以上に”本当の自分”を表している、というわけではない。


ランバートによれば、『ADAM』というタイトルは、この作品を最も端的に表す方法だったという。つまり、2026年のアダム・ランバートを切り取ったスナップショットだ。

「僕がこれまで経験してきたこと、乗り越えてきたこと、そしてこれからどこへ向かいたいのか。そのすべてが入っている」

ただし、タイトルどおり、これまで以上に彼自身が深く関わった作品であることも確かだ。

『ADAM』は、ランバートが自身のレーベルから、自らの条件で発表する初めてのアルバムとなる。

「自分のものだという感覚がある。それがすごくエキサイティングなんだ」

だからこそ、自身の名前をタイトルにすることが自然に感じられた。

自ら音楽の主導権を握ったことで、大きな自由も手に入れた。

「最終的には、すべての決定を僕たち自身で下している。”僕たち”と言うのは、もちろん僕一人でやっているわけではないから。素晴らしい人たちをチームに迎えた」

アルバム制作は、あくまでチームによる共同作業だ。

なかでも大きな利点は、判断をすぐに実行へ移せることだった。


「大手レーベルの仕組みのなかにいると、障害物競走みたいになることがある。資金を出してもらうだけでも、『これにお金を出してもらえますか? こっちはどうですか?』と、いちいち確認しなくてはならない」

しかし今は、自分たちで予算を決め、自分たちで前へ進める。

「これだけかかる。じゃあ、やろう」と、その場で決断できる。

17年間で変わった音楽の作り方と届け方

ランバートがキャリアを歩んできた17年間で、音楽制作のプロセスも、音楽業界そのものも大きく変化した。
その変化を振り返ると、ときに懐かしさを感じることもあるという。

「当時は、まったく違う世界だった。良い面も悪い面もあったよ。昔のほうが良かったと言いたいわけじゃない。ただ、違っていたんだ」

現在はストリーミングによって、リスナーがより大きな力を持つようになった。

「ストリーミングなら、自分が見つけたいものを自分で探すことができる。自分だけのプレイリストも作れる。
何が人気になるのかを、社会全体で決めているようなものだよね」

その意味では、以前よりも自然な形でヒットが生まれるようになったと彼は感じている。

「何かがヒットしたとき、それは人々が本当に求めているものを、以前より正確に映しているように思えるんだ」

一方で、かつての音楽業界を恋しく思う瞬間もある。

「昔のレコード会社には、最優先で売り出すアーティストが10組くらいいた。会社はそのアーティストたちに、持っている力や人脈、資金のすべてを集中させていた」

「作品を世に広め、ラジオで流し、宣伝してくれる大きなマシンが背後にあったんだ」

現在は、人々の関心を引きつけること自体が、以前よりも難しくなった。

「何がうまくいくのか、分からない部分も多い」

特にストリーミングサービスのアルゴリズムは不透明だ。

「少し魔法の方程式みたいなものだよ」

アダム・ランバートが語る、過去の自分を更新するニューアルバム『ADAM』

Photo by Nick Knight

クィア・アーティストを取り巻く環境の変化

一方で、音楽業界がより開かれた場所になったことについて、ランバートは明確に前向きな変化だと捉えている。

キャリアを始めた当初、カミングアウトしたゲイのポップアーティストである彼を、一部の業界関係者が受け入れるのは簡単ではなかった。

特に、意思決定権を持つ年長の白人異性愛者の男性たちのなかには、ランバートという存在をどう扱えばよいのか理解できない人もいたという。

しかし現在は状況が変わった。

「音楽界におけるクィアの表象は明らかに増えた。クィア・アーティストが自分の音楽を広め、人に見つけてもらい、ファンベースを築ける可能性も以前より高くなっている」

過去のイメージを塗り替える

ランバートのファン層もまた、時代とともに変化し、広がり、再構築されてきた。

『アメリカン・アイドル』時代から応援し続けている熱心なファンがいる一方で、活動のさまざまな段階で彼を知った人たちもいる。


「僕はいろいろなサウンドやジャンルを試してきたから、最初から知っているわけではなく、後から僕を見つけた新しいファンにも出会ってきた。それもすごくうれしいことだよ」

「クイーンを通じて僕を知った人もいるだろうし、出演したテレビ番組で見つけてくれた人もいると思う。ファン層そのものが、変化し続けている。それは本当に素晴らしいことだと思う」

変化してきたのは、ファンだけではない。

ランバート自身もまた、この17年間で成長し、変わってきた。

ランバートは『ADAM』を通じて、過去に定着した自身のイメージを更新したいと考えている。

「オンラインでコメントを見たり、人と話したりしていると、僕について少し誤ったイメージを持たれているのかもしれないと感じることがある」

「そもそも、一度誰かへの印象が固まってしまうと、その人はずっとそういう人間だと思われてしまう。もう一度、別の印象を持ってもらうのは難しいこともあるんだ」

しかし、現在のアダム・ランバートが、17年前に『アメリカン・アイドル』へ出演していた頃と同じ人物であるはずはない。

「17年も経てば、誰だって変わるし、成長するし、進化する。17年前の僕を基準にして、今の僕を判断されるなんて、ばかげているよ」

「僕は今、まったく違う場所にいる。今の僕は、あの頃とは別の人間なんだ」

新作を聴いた人には、こう感じてもらいたいという。

「”こんな一面もあるんだ””今までとは違うエネルギーだ”と思ってもらえたらうれしい」

もちろん、決して変わらない部分もある。
彼は今も、自分が何者であるかを堂々と受け入れている。

「僕はただ、成長したんだ」

クイーンから学んだ「抑えること」の力

キャリア初期のランバートは、とにかく人々を驚かせたいという気持ちに満ちていた。

「最初の頃は、すごいと思われたくて必死だった。どの曲でも自分の持っているものを全部出したかったし、できる限り高い音を歌って、クレイジーで大げさなことをたくさんやりたかった」

「せっかく手にしたチャンスだったから、ものすごく興奮していたんだ。もちろん、その結果として楽しい音楽もたくさん生まれた」

だが、常にすべてを出し切る必要はない。

時には、少ないほうがより多くを伝えられる。そのことを、ランバートは長年の経験から学んだ。

「パフォーマンスや音楽において、”抑えること”の力を以前より理解できるようになった」

「すべてを一度に投げつけるより、少しだけ見せるほうが、かえって人を引きつけられることもあると思う」

その学びには、ほかのアーティストの音楽も影響している。

自分が誰かの音楽に惹かれるとき、必ずしも派手な表現ばかりを求めているわけではない。時には少し引くことが、作品に力を与える。

そして、世界各地の大舞台で得たライブ経験も、その考えを後押しした。

「この10年ほどクイーンとツアーをしてきて、彼らから本当に多くのことを学んだ。
大勢の観客を前にしたとき、何が効果的で、何をする必要がないのかが分かるようになったんだ」

新たな人生の章へ

『ADAM』は、ランバートが数々の変化を経験し、多くの学びを得たタイミングで生まれた。

25年間暮らしたロサンゼルスを離れ、ニューヨークへ移住。5年間続いた交際関係が終わり、現在は新たな人生の段階へと進んでいる。

「新しい章に入ったんだ」

その変化は、セルフリリース作『ADAM』の音にも表れている。ダークで重厚なインダストリアル・サウンドから、踊れるディスコ・トラック、さらには心の脆さをにじませるピアノ・バラードまで、これまで以上に幅広い表情がアルバム全体に刻まれた。

17年前のイメージに縛られず、今の自分をあらためて提示すること。『ADAM』は、ランバートが歩んできた変化の記録であると同時に、ここから始まる新たな章の幕開けでもある。

アダム・ランバートが語る、過去の自分を更新するニューアルバム『ADAM』

Adam Lambert(アダム・ランバート)
ニューアルバム『ADAM』
配信リンク:https://songwhip.com/adam-lambert/adam
レーベル:More is More LLC

TRACK LIST
1.  ”RAT CITY” ft Isaac Dunbar
2. ”NECKLACE”
3. ”EAT U ALIVE”
4. ”PORCELAIN” ft Lexie Liu
5. ”SANITY”
6. ”CLOUD 9”
7. ”AM I OK”
8. ”UNDER THE RHYTHM”
9. ”RAGE”
10. ”REAL LUV”
11. ”DONT STOP DRIVING”
12. ”DO YA SEE ME NOW”

Website:https://adamlambert.net/
X: https://x.com/adamlambert
YouTube:https://www.youtube.com/@AdamLambert/
Instagram:https://www.instagram.com/adamlambert
Facebook:https://www.facebook.com/AdamLambert/
TikTok:https://www.tiktok.com/@adamlambert

from Rolling Stone Germany
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