移動に欠かせない交通手段のひとつである電車。しかし、通勤や通学の時間帯は混雑するため、殺伐とした雰囲気がある。
車内では譲り合いの精神を持って、お互い気持ちよく過ごしたいものだ。
 今回は、電車内で配慮を欠いた行動にモヤモヤしたものの、最後には少しだけスカッとしたという2人のエピソードを紹介する。

後ろから突然背中を押されて…

「その荷物どかしてもらえます?」満員電車で“座席を占領する女...の画像はこちら >>
 都内に住んでいるサラリーマンの田中庄司さん(仮名・20代)は、朝の通勤ラッシュ時に思わぬ出来事に遭遇したという。電車が到着し、前の乗客が進み始めたため、田中さんも流れに沿って乗車しようとした。

「ホームにはたくさんの人が並んでいて、私の前にも10人くらい並んでいました。かなり混雑していましたが、いつも通り流れに沿って電車に乗ろうとしたのですが……」

 そのときだった。真後ろにいた乗客から、明らかに手で押されたという。

「突然、背中に強い衝撃を感じたんです。通勤ラッシュなので、普段から肩や肘がぶつかることはあります。でも、そのときは明らかに違いました」

 田中さんは、普段からリュックを前に抱えて乗車しており、背中には何も背負っていなかった。そのため、手のひらで押された感覚がはっきりとわかったそうだ。

 電車に乗ってから一瞬後ろを振り返ると、押してきた男性と目が合った。

「腹が立ちましたね。
押し返してやろうかと思いましたけど、満員電車だし、ここで揉めたら周りの人に迷惑がかかるので我慢しました」

 田中さんは「何か別の方法はないか」と考えていたという。

無言の抗議を続けた結果…

 そこで思いついたのは、“相手を見つめ続けること”だった。

「電車に乗った後、その男性と向き合ってひたすら目を見ていました」

 男性も最初は田中さんのほうを見返してきたが、すぐに目を逸らしたという。

「それでも私は、目を逸らしませんでした。そうしたらその男性は徐々に居心地が悪そうな表情になって、下を向いたままになりまして。私は『最後まで絶対に目を逸らさないぞ!』という気持ちでしたね」

 そのまま数駅が過ぎ、電車は目的の駅へ到着。すると、電車を降りる直前にその男性が「すみませんでした」と小さな声で言ったという。思わぬ謝罪に、田中さんは驚いたようだ。

「揉めることなく終わりましたし、少しだけ気持ちが晴れました。もちろん最初から押さなければ済む話ですが、男性なりに反省した様子は伝わってきたのでよかったです」

隣の席を占領する大きなバッグ

「その荷物どかしてもらえます?」満員電車で“座席を占領する女性”に注意した結果…気まずそうに謝罪するまで
※写真はイメージです(画像生成にAIを利用しています)
 帰宅途中の電車内で、気になる光景を目撃した鈴木直也さん(仮名・30代)。車内は混んでおり、座席はほぼ埋まっていた。立っている乗客も少なくなかったという。

 そんな中、鈴木さんは一か所だけ不自然に空いている席を見つけた。

「よく見たら、若い女性の隣に大きなバッグが置かれていたんです」

 バッグは座席の半分近くを占領しており、本来ならもう一人座れる状態だったようだ。
女性はすぐバッグをどかすだろうと思っていたのだが、電車が発車しても荷物を移動させることはなかった。

「周りには立ったままスマートフォンを見ている会社員や、疲れた表情の乗客もいました。誰かが座りたいと思っていても、その席だけ使えない状態にイライラしてきたんです」

声をかけると女性は気まずそうに…

 そこで、鈴木さんは女性の前に立ち、落ち着いた声で声をかけることに。「すみません。その荷物、どかしていただけますか?」と、優しい口調で伝えた。

「もちろん怒鳴ったわけでも、説教したわけでもありません。その女性は話しかけられたことに驚いた様子で、私を見上げた後、気まずそうな表情になり、すぐに『すみません』と小さな声で謝ってバッグを膝の上へ乗せました」

 鈴木さんは荷物を指しながら、お願いしただけだった。そして、近くにいた乗客が“その席”へ座ったという。

「女性は、その後も落ち着きがなくて、スマホを見ながらも周りを気にしている感じでしたね」

 女性は、次の駅で降車。最後まで恥ずかしそうな表情をしていたようだ。声をかける瞬間は緊張したものの、結果的には座席を必要としていた人に席を空けることができたことに満足したという。

「些細な出来事ですけど、勇気を出して注意して、その女性が恥ずかしそうにしていた様子を見て、少しスカッとしましたね」

 電車では個人のマナーが大いに問われる。
だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。自分の何気ない行動が周囲の迷惑になっていないか、あらためて意識する必要があるだろう。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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