出張や旅行などで利用する機会の多い新幹線。移動中は仕事をしたり、動画を楽しんだり、それぞれが思い思いの時間を過ごしている。
しかし、隣の乗客のマナーによって快適さが損なわれてしまうこともある。
 今回は、新幹線内で迷惑行為に遭遇したという2人のエピソードを紹介する。

隣の乗客が靴を脱ぎ、動画を大音量で…

「ぼくと一緒だね!」新幹線で“イヤホンをせずに”動画を見てい...の画像はこちら >>
 中村拓也さん(仮名・30)は昨年の夏、仕事の研修へ参加するため、東京から新大阪へ向かう新幹線に乗っていた。

「普通の指定席で、発車を待ちながらメールをチェックしていました」

 東京駅を出発してしばらくした頃、隣の席に40代ほどの男性が座った。スーツ姿で、一見するとごく普通の会社員に見えたという。

 しかし、新幹線が動き出して間もなく、その男性は突然靴を脱ぎ始めた。そして、脱いだ靴を足元へ置くと、あろうことか靴下まで脱ぎ、素足を前へ投げ出したのだ。

「視界の端で、男性が裸足になっていることも気になりました」という中村さん。しばらくすると“別の問題”も発生した。

「足のニオイも気になり始めました。正直かなり臭くて……。しかも、足の指をずっと動かしていたんです」

 中村さんは「そのうち靴を履くだろう」と自分に言い聞かせて我慢していたが、男性の迷惑行為はそれだけでは終わらなかった。スマートフォンを取り出したかと思うと、イヤホンも使わずに動画を再生し始めたという。


「その人のスマホから、効果音や笑い声が車内に響いていました」

 周囲の乗客も迷惑そうな表情を浮かべていたのだが、誰も注意しようとしなかった。

「私も迷いました。注意して、揉めたらイヤだと思ったんです」

 それでも、車内で動画の音が響いている状況に我慢の限界を感じていた。

勇気を出して声をかけると

 新幹線が、浜松駅付近を通過した頃だった。中村さんは意を決し、男性へ声をかけた。

「すみません。お足が少し……。あと、イヤホンをお使いいただけませんか?」

 男性は、驚いたような表情で顔を上げ周囲を見渡したという。何人かの乗客が、中村さんとその男性のほうを見ていたそうだ。

 その目線に気づいた男性は、何も言わずに靴を履きバッグからイヤホンを取り出した。すると男性は、少し照れくさそうな表情を浮かべながら、「すみませんでした」と謝った。中村さんは「まさか謝罪されるとは思わなかった」と振り返る。

「『すみませんでした』のひと言で、とても気持ちが楽になりました。
スカッとしたというより、ホッとした気持ちのほうが大きかったですね。勇気を出してよかったと思いました」

 その後、男性は静かに過ごし、車内の空気も元通りになったようだ。

新幹線の車内に響く“動画の音”

「ぼくと一緒だね!」新幹線で“イヤホンをせずに”動画を見ていた男性が真っ赤になった“子どもの無邪気な一言”
※写真はイメージです(moonrise - stock.adobe.com)
 佐藤圭介さん(仮名・20代)は、連休初日、東海道新幹線で移動していた。指定席はほぼ満席で、出張だったこともあり、目的地まで静かに過ごしたいと思っていたそうだ。

 しかし、発車してしばらくすると、通路側に座っていた40代ほどの男性がスマートフォンを取り出した。次の瞬間、車内へ動画の音が響き渡ったという。

「その男性は、イヤホンをしていなかったんです。まるで自宅にいるかのように動画を楽しんでいました。周囲の乗客も視線を送っていましたが、本人は気にする様子はなかったです。私も注意しようと思いましたけど、揉め事になるのがイヤだったので様子を見ることにしました」

 すると、思わぬ人物が状況を一変させたという。

子どもの無邪気な一言で…

 通路を挟んで斜め前の席に座っていた男の子が、顔を出したのだ。男の子が立ち上がると、男性のスマートフォン画面をじっと見つめた。

 そして、大きな声で「あ! おじさんも子ども向け動画好きなんだ! ぼくと一緒だね」と言ったという。


 すると一瞬、車内が静まり返った。どうやら、男性が見ていたのは、子どもたちにも人気のYouTuberの動画だったらしい。

「その男の子の一言によって、男性の顔が一気に赤くなったんです。男性は慌ててスマートフォンを伏せると、イヤホンを取り出して耳へ装着しました。その後は動画を見ることはなかったですね」

 スマートフォンをしまうと、そのまま目的地へ着くまで窓の外を眺めていたという。近くの席からは、小さな笑い声も聞こえてきたそうだ。

 その男性に注意した人もいなかったが、男の子の純粋な一言によって車内の空気が変わり、降車時、男の子と目が合った気がしたという佐藤さん。

「心の中で、『ナイス』と思いました(笑)。スカッとしましたね」

 新幹線は、多くの人が同じ空間を共有する。快適な移動時間を守るためにも、一人ひとりが周囲への配慮を忘れないようにしたい。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。
趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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