1980年代、日本中の子どもたちが両手を前に突き出し、キョンシーの真似をして飛び跳ねた。一大ブームの中心にいたのが、映画『幽幻道士』シリーズで美少女道士・テンテンを演じたシャドウ・リュウさんだ。

当時7歳。天真爛漫な笑顔で人気を博した彼女だが、裏では過酷な撮影スケジュールや学校でのいじめにも直面していた。その後、日本移住、芸能界からの離脱と復帰を経て、現在は意外な仕事に就いているという。47歳となったテンテンが語る、「キョンシー後」の人生とは。

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12歳で日本移住、仕事漬けに

――キョンシーシリーズが一旦終了した後、活動拠点を台湾から日本に移されたんですね。経緯を教えてください。

シャドウ・リュウ:当時、私と兄(兄も『幽幻道士』シリーズで活躍)のファンだった女性のご家族と私の父が意気投合して、「日本に来たらどう?」という話をされたんです。父は、日本でビジネスをしようと考えていたこともあって、移ることにしました。

――何歳の時ですか。

シャドウ・リュウ:中学に上がるタイミングだったので12歳ですかね。

――撮影が忙しすぎてほとんど小学校に行けなかったとのことでした。中学はどうでしたか。

シャドウ・リュウ:全然行けませんでしたね。
日本では「黒BUTAオールスターズ」というガールズグループでイベントやメディアの出演もしていましたし、司会業も入ってきて日本中を飛び回っていました。

――カラオケに行ったりプリクラを撮ったり、遊びたい盛りの時期ですよね。

シャドウ・リュウ:まったくできませんでしたね。仕事ばかりで学校にもあまり行けなくて、中学3年生の時に先生から、「出席日数が足りなくて卒業できないよ」と言われました。義務教育だからそんなことはないんですが、それだけ行けてなかったということですね。

学業専念と“大人の俳優”への挑戦

『幽幻道士』でテンテン役を演じた女性(47歳)の意外なセカンドキャリア。極貧時代に経験した出来事がきっかけに
幽幻道士でスイカ頭役を演じた実兄と
――中学を卒業すると台湾に戻り、芸能の仕事から退かれます。

シャドウ・リュウ:高校は卒業しておいた方がいいとは考えていたので、受験して学業に専念したんですよ。

――その後、高校を卒業して2000年に台湾芸能界に復帰、2003年には日本でも芸能活動を再開されました。7歳で「幽幻道士」のテンテン役に声がかかった時は「儲けるため」に受けたとのことでしたが、芸能から離れると、やはり演技の世界に戻りたいという気持ちが出てきたんでしょうか。

シャドウ・リュウ:そうですね。小さい頃は、家計のためでもありましたし、一生懸命やっていたんですが、大人に言われた通りに演技をするというだけでした。それが、大人になって「演技と向き合ってみたい」と思うようになりましたね。

――周囲から求められるものも変わりますよね。
かつてはテンテンとしてだったのが、大人の俳優として。


シャドウ・リュウ:台湾ではわりと自然に、その時の等身大で受け入れてもらえました。ですが、日本ではどうしてもテンテンのイメージが強すぎて、他の役も付きにくくて仕事が取りにくかったぜんね。

――それほど「幽幻道士」が大ヒットだったということですね。 “脱テンテン”のために何かしたことはありますか。

シャドウ・リュウ:テンテンの時代はリュウ・ツーイーという芸名で活動していたんですが、復帰後に本名のシャドウ・リュウにしました。

意外なセカンドキャリアを歩む

――インターネットなどでは、現在も日本と台湾両国で、芸能活動を続けていると出て来ますが、実際のところをお聞かせください。

シャドウ・リュウ:芸能のお仕事も、知り合いからの依頼があればやります。年に数回くらいですね。

――では、本業はほかにあるんですか。

シャドウ・リュウ:はい。8年前からある事務所で社会福祉などに関わる業務を担当していて、役職は主任です。


――意外なセカンドキャリアですね!

シャドウ・リュウ:幼少期、私はすごく貧しかったんですよ。ご飯を食べるのもままならなくて、親戚の家で食べさせてもらったり、近所の人も季節ごとに「服はある? 大丈夫?」と気にかけてくれたり、周囲の方からたくさんの善意をいただきました。

――そんな過去があったんですね。

シャドウ・リュウ:だから、自分に余裕ができてからは、私が善意を誰かに渡す番だと思っていたんです。私の下には父の再婚後にできた弟が1人と妹が2人いるんですが、日本の芸能界に復帰してからは、当時まだ幼かった弟たちのために、いただいた給料を全部送っていました。幼稚園から高校を卒業するまで、生活費と学費はほとんど私が出したんですよ。その後、妹が18歳になった時に自分の責任は果たしたと思って。同時に私は将来社会にどう貢献できるのかを考えるようになり、今の仕事に至ります。

――今後は何を目標にしていますか。

シャドウ・リュウ:自分に足りない部分が見えてきたこともあって、社会福祉士の資格を取る勉強をしています。まだ、必要な実習時間はかなり残っていますが。資格が取れたら、さらに活動の幅も広げたいですね。


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1980年代に日本中を席巻した美少女は、キラキラした笑顔の裏で学業と仕事を両立することの難しさに悩んでいた。そして今、かつて受けた恩を返そうとコツコツと努力を重ね、社会福祉という形で実を結び始めている。私たちは「あの頃に流行したテンテン」として過去を見てしまいがちだが、彼女は新しい人生を未来へ歩み始めている。

<取材・文/Mr.tsubaking>

【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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